野球の記録で話したい

Baseball Stats Lounge

松坂はシェフにやられた|MLB

2009522日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

NYMの監督ジェリー・マニエルは、松坂先発が決まった時点でシェフィールド4番を決めたのではないだろうか。5/13~16まで4試合連続でマルチヒットを打って打率を.250台に上げたものの、衰えが目立ち、前日は先発を外れていたシェフだが、とにかく日本人先発投手にはめっぽう強い。松坂との対戦も、この試合の前までで12打数6安打。

松坂は、相変わらずの大雑把なコントロールだったが、速球が速かったのと適度に荒れていたので、対戦数の少ないNYMの打者は攻めあぐねていた感じだった。

しかし、昨年までアリーグにいて松坂をカモにしていたシェフは違った。甘く入った初球を思い切って振りぬいて、グリーンモンスターの上まで運んだ。バットの先っぽだが、スイングの速さで持っていった感じ。爽快な一発だった。

NYMの面々は、比較的早打ちでもあったので、3回まではシェフの一発以外は無難に抑えていた松坂だが、二巡目につかまる。4回1死後ベルトランに二塁打を打たれてシェフ。歩かせるような状況ではないのだが、相変わらずフルスイングをするシェフィールドを過度に警戒して歩かせてしまった。この対戦、松坂は攻めていなかった。こうしてランナーがたまって大量失点をした。併殺崩れの不運はあったがこの回4点。いつもの松坂である。

対照的だったのがサンタナだ。何度も対戦しているBOSは毎回のように好機を作った。打てない投手ではない。しかしサンタナは状況がどうであれ基本的に動じない投手だ。セットからでも同じように球威のある球を、コマンドを利かしてずばずば投げ込んでくる。ランナーを背負っても攻めの姿勢は小揺るぎもしない。これが、MLBトップに君臨する投手の真価だと思った。

松坂の敗戦は残念だったが、シェフィールド、サンタナといいものを見せてもらった。それからリードはいい選手だなあと思った。

今季初登板と同じ5回で降りたが、松坂の状態ははるかに良くなっているように思った。あとは失っている自信を取り戻して、攻める姿勢を取り戻せばV字回復は可能ではないかと思う。

■後日談:これ、名勝負だと思うのだ。情念の男、日本人に異様な敵愾心をもつ男シェフィールドが、松坂の再起を阻んだのだ。

アブレイユまだ0本!|MLB

2009522日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

昨日、ようやくオルティーズに今季初本塁打が出た。昨日のMLB公式サイトではトップで報じられていた。数年前までのリーグ最強打者だっただけに、みんなで固唾をのんでいるような感じだった。

ところで、もう一人本塁打が出ずに悩んでいる大ものがいる。今季NYYからLAAに移籍したボビー・アブレイユである。昨年9/18に2本塁打を放って以来、40試合165打席にわたって一発が出ていない。この打者はクレバーさが売り物で、一発を狙わずに状況に応じたバッティングをすることで知られる。しかし、2005年のオールスターの本塁打競争を新記録で勝ち抜いたことでもわかるように、飛ばす力はトップクラスである。

今、両リーグ規定打席以内の0本塁打、1本塁打の打者を挙げてみる。

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アブレイユの本塁打率は松井秀とほぼ同じ。ハワードは8%、A-RODやプホルスは7%だからそれよりはかなり低いが、それにしても0本塁打は深刻である。他の多くの0本打者は短距離打者なだけに、その不発ぶりが際立つ。

アブレイユの打率は.300を超えているが、打点は物足りない。往々にしてこういうケースでは、1発が出ないとシーズンの深まりとともに打率も下降して、大不振に陥るパターンが多い。本来なら中軸を組むゲレーロも4/15以来出場していない。LAAは投手だけでなく打撃も半身不随状態なのだ。

今日は欠場したアブレイユだが、明日のSEA戦で何とか第一号を、と考えているのは間違いがない。

■後日談:アブレイユは、本塁打は松井の半分だったが100打点を挙げて地区優勝に貢献し、年俸をアップさせてさっさと契約した。体型に似ずスマートな男である。

アリーグ東地区の打線を見てみる|MLB

2009521日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

ペナントレースの1/4を消化して、アリーグ東地区ではまだTORが頑張っているものの下馬評通りBOSとNYYが追い付き始め、TBも態勢を整えつつある。特にこの地区は、打線の強力なチームが多い。最近のラインナップを比較してみた。

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アメリカではクリーンナップと言えば、単に4番打者のことを言う。日本のように3、4、5番をまとめて称する言葉はないが、それでもこの3人が中軸であるのは間違いがない。

各チームのクリーンナップトリオを比較して見えてくるのは、BOSのオルティーズとNYYの松井秀、ともにかつては「RBIイーター」と呼ばれた2人の打者の極端な打点の少なさである。2人ともにほぼフル出場してのこの数字だ。これが両チームの大きなお荷物になっているといえよう。早晩打線の組み替えがあろう。

TBは、現在は借金生活だが、打線を見る限り元気である。盗塁が非常に多い。今年は岩村も積極的に走っている。そして中軸が強力だ。TORは、やはり投手力のチームで、打線の迫力はない。

並べてみて気がついたのだが、5チームともに最も元気な打者を2番に据えている。そして7、8番に出塁率が高い打者がいるケースが多い。これは、下位打線から始まる回に好機を作るという考え方に基づいているのだろう。日本とは大きな違いがある。

ポサダの復帰とともに松井秀はベンチに座る日が多くなるだろう。契約最終年。同じ境遇のデーモンは火の出るような当たりを飛ばしている。怪我から復帰のA-RODもすでに5発も打っている。「やるだけのことをやっている」「自分の成績よりもチーム優先」という言葉は聞きあきた。「火事場の馬鹿力」を発揮するのは今だと思う。

■後日談:こうしてラインナップと基本STATSを見比べることで見えてくるものは多い。多用したい。

ケビン・メンチの責任論|NPB、MLB

2009520日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

阪神は、メンチに見切りをつけたようである。打率.148、打点2ではいたしかたない。1.8億円の年俸は無駄に使われたことになる。STATSを見てみよう。

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ケビン・メンチはちょうどイチローがMLBにデビューしたころ、屈指のプロスペクトの一人だった(MLB全体で56位、TEXで4位)。ハッスルプレーが特徴で高めの速い球を得意として、調子に乗ると手がつけられない。MLBへ昇格してからも右打者として唯一の7試合連続本塁打のMLB記録をもっている。でも、そこからがパッとしなかった。本来は中距離打者で、ツボにはまれば良い成績を上げるが、適応力が低いようで打てなくなると全く駄目になる。アリーグからナリーグに移籍した2006年以降、パワーも失われ自信も喪失したようだ。

阪神首脳は、このSTATSをどのように見ていたのだろうか。2006年以降、不振に陥ったことを知っていたのか。性格的には円満なものの、不器用な打者であることを認識していなかったのだろうか。昔のように、「大リーグで89本も打ってるのやから、日本やったらそこそこやるやろ」と獲得したのではないか。

とても間に合いそうにない打球を追ってフェンスにダイビングしたり、ハッスルプレーの片鱗は見ることができた。また、打席や守備位置でときどき困ったような表情を浮かべるのも、好人物をうかがわせた。長期低落傾向に歯止めをかけることは、NPBでもできなかった。本人も悩んでいたのだろう。

ちなみにケビン・メンチはレコードをもう1つもっている。それは「MLB史上で最も大きなサイズの帽子をかぶる男」というものだ。

■後日談:「実は俺、もう通用しねえんだ」とわかっていたかのような選手。黒澤映画「用心棒」の藤田進みたいな役どころ(わからないか!)。何か好きな選手です。

松坂のいない5月|MLB

【2009年5月17日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

今年のNHKBSのMLB放送は、どうもぱっとしない。何かテンションが低いような気がする。毎朝TVをつけてはいるが、いつの間にか気持ちが逸れていく。

なぜなのか、と考えて思い当たったのが松坂である。この男が4日ごとにマウンドに上がって、かなりいらいらさせながら、でも大抵は勝つというパターンに、私はかなり満足していたのだ。

一昔前、野茂英雄が同じような役割をしてくれた時期があった。そしてイチローが出るや、毎日の生活にリズムを与えてくれた。2年後には松井秀が加わって、そして松坂。ほぼ毎日見るイチローや松井秀が「ご飯」だとすると、週に1度の松坂は「おかず」みたいな感じだった。松井秀が脱落したが、岩村がそれに代わって、去年まではいい感じで楽しんでいた。たとえ放送がなくとも、MLB公式サイトでリアルタイムに見る習慣がついていた。

が、今年は違うのだ。代わりに上原と川上が出てきたじゃないか、といわれるかもしれないが、この二人は代役になってない。上原など、健気な投球を続けていて、それなりに応援できるのだが、やはり松坂の代わりにはならない。

なぜなのか、再び考えて思い当たったのは、BOSというチームである。バリテックという口うるさそうな“教育係”がいる。ビッグパピーという人間の魅力だけを寄せ集めて作ったようなおじさんがいる。わがままがユニフォームを着たようなマニーがいる。一徹そうな職人肌のユーキリスがいる。とにかくやる気が吹きこぼれているペドロイア、弟分のエルズベリーがいる。金の亡者みたいな悪役っぽいドリューがいる。とにかく役者がそろっていて、日本人の目から見れば彼らが松坂を取り巻いて見えたたのだ。ちょうど漱石の「ぼっちゃん」を取り巻く赤シャツ、野ダイコ、ヤマアラシのように。その雰囲気が心地よかったのだ。今年のBALやATLにも人材はいるが、キャラが立っていない。BOSはその点でもNYYと双璧だと思うのだ。

マニーが抜けて印象の薄いベイが入ったりしたが、BOSはまだ役者ぞろいである。彼らを従えた松坂のマウンドが本当に待たれる。

さて、ポータケットレッドソックスの松坂大輔は、先発投手として3回を投げた。STATSは以下のとおりである。(申し訳ありません、今日は出張中で自分のパソコンではないので表ができません)

     5/05    2.2回 2被安打 2四球 5三振 自責点0

    5/10    4.0回 4被安打 2四球 0三振 自責点0

    5/15    5.0回 3被安打 1四球 9三振 自責点2 ●

    通算 11.2回 9被安打 5四球 14三振 自責点3 防御率1.54 0勝1敗

 普通なら十分にMLBに復帰できる成績だ。しかし首脳陣はなかなか首を縦に振らない。入団して以来、松坂への点数はベケットやレスターよりも常に辛いが、今回もまだ様子を見るようである。

ポータケットレッドソックスの公式サイトのタイトルに、松坂の写真が載るようになったが、AAAで看板選手になっても仕方がない。一刻も早く上がってほしい。

先発陣で好調なのは41歳のウェークフィールドだけ、という現状を見れば、そうはいっても松坂の復帰は遠くない。6月にはJ-SPORTSでMLB中継が始まる。松坂の試合を島村アナで楽しむときがくるかと思うと、醒めかけた興趣が盛り上がる気がする。

■後日談:松坂の復帰は秋になった。疲労と調整不足が回復しなかったのである。

オルティーズの憂欝|MLB

【2009年5月16日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

今日のSEA対BOS戦は、イチローの2本塁打が出た試合だ。民主党の党首選中継で、放送が尻切れトンボになったために日本のファンには消化不良だったが、この試合はDオルティーズが欠場したことでも注目される。欠場は今月に入って2度目、5月は.163 3打点だからやむを得ないとも言えるが、その急激な凋落ぶりがそろそろ話題に上りだしている。

今期は34試合で本塁打なし、.208の15打点。もともと好不調の波があって2007年には4/22から7/13までフェンウエィパークでホームランが出なかった時期もあるが、それでもトータルすれば好成績を挙げていた。昨年もシーズンを通して不調だったが、今年の凋落はひどい。

以下は、フェンウェイパークでのオルティーズのSTATSである。単一球場でのSTATSを調べることで、オルティーズの打球の内容が見えてくると思う。良く知られているようにフェンウェイパークの左翼は95mしかなく、ここからセンターへ向けてグリーンモンスターという大きな壁が立っている。他球場であれば本塁打となる当たりの多くは二塁打となる。その部分をより正確に知るために、外野へ飛んだ大飛球(本塁打、二塁打、フェンス際まで飛んだ大飛球)を左中間、右中間に分けて見た。

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オルティーズと言えば、とにかくクラッチヒッターで、いいところで本塁打を打つ打者と言う印象が強いが、実は二塁打の多い中距離ヒッターである。また、引っ張る印象もあるが、左中間にも大きい当たりが打てる広角打者でもある。(オルティーズシフトはジアンビシフトほど成功していない)そして、四球を数多く選ぶことでも貢献度が高い。

2007年までのSTATSは、こうした「穴の少ない」好打者の実力を如実に物語っている。しかし2008年不振に転じた。目立つのは右中間への飛球が明確に減ったことだ。その傾向は2009年に入って如実なものになった。今年はアウトになった大飛球も含めて、左中間に7本が飛んでいるのに対し、右中間はわずかに1である。

つまり、オルティーズは引っ張れなくなっているのではないか。パワー不足かもしれない。速球に打ち負けているとも取ることができる。引っ張れなくなったことが、本塁打を生まなくなった原因なのは間違いないと思う。

今年はフライボールがゴロよりも格段に多いが、これはオルティーズの焦りを物語っているのだろう。四球が激減しているのは、彼が打席で余裕がないからだろうし、見方を変えれば投手がオルティーズを恐れなくなっているということでもあろう。負のスパイラルが回り出している。

 好打者が突然打てなくなるという現象は、投手が不振に陥るよりは少ないが、MLBでもNPBでも見られる。その多くは怪我や故障が原因だった。オルティーズも膝に古傷があるが、それが原因なのだろうか?だとすればDL入りすると思うのだが。(似たような状況に陥っている打者に阪神の今岡がいる。)

まだ33歳、イチローよりも2歳も若い彼に何が起きたのか?ファンの方には申し訳ないが、私は薬物使用をやめたとたん、突如大不振に陥ったジアンビの顔が浮かんでしまった。

そんな疑惑を払しょくするためにも、好漢の奮起を期待したいところだ。

■後日談:少しだけオルティーズは挽回したが、結局、この2年で最強打者の看板は下ろすことになってしまった。

阪神ファン、この難儀な“インフルエンザ”|NPB

【2009年5月15日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

大阪市の南部にある、私の通った私立高校では、阪神が勝った翌日は、授業中虎柄のパンツを見せて雄たけびを上げる奴がいた。教師にも拍手を強要する。授業を進めたいあまりにお義理に手をたたく先生もいたが、嬉しそうに拍手するのもいた。英語の授業で、何かの拍子に「rain,back」なんてフレーズがあると、「ラインバック!」と反応して立ち上がる奴もいた。学校からは何人か阪神に入団した選手もいて(活躍はしなかったが)、タイガースが身近だったのはいいが、それが日常生活に織り込まれていて、教室にはサンスポやデイリーが置かれてあった。

因果なことに、私は子供のころからの南海ファン、野村ファンだった。そのことをカミングアウトすると、多くのクラスメートは珍しい病気でも見るような顔つきをして、すぐに話題を変えるのが常だった。「歯牙にもかけない」とはこういうことだと思った。

大阪球場では、プレーの最中にグランドの動きとはまったく無関係に、突然スタンドが沸くことがあった。球場の「他球場の速報」コーナーで阪神が逆転したときである。これは日生球場でも、西宮球場でも同じだった様な気がする。要するに、関西人は阪神ファンであるのが「必須科目」であり、パリーグのチームを応援するのは「選択科目」。大阪球場に来ている数少ないファンの中には、甲子園の代償行為としてスタンドにいる人も多かったのではないかと思う。

掛布がすい星のごとく現れて、ファウルボールを追わない田淵(タブタ)のかわりに4番に座った頃から、阪神ファンのテンションは少しずつ上がっていったように思う。「掛布コール」は、のちの甲子園外野スタンドの“民族の祭典”の鏑矢ではないかと思う。掛布がまだ高校2年生の美しい少女と婚約した時は、クラス中が青くて生臭い興奮にそそけだったようになった。

 しかし、阪神は常に弱かったから、ファンは自虐的で、1%くらいの含羞を秘めていたと思う。この“純情”が蒸発したのは、1985年の優勝である。暴徒が某外食産業のマスコットを人身御供にしたのは記憶に新しいが、当時私が住んでいた大阪のベッドタウンの駅前でも、クルマに箱乗りし、クラッカーを鳴らす馬鹿どもが何人も出た。

この頃から、甲子園球場の外野席には試合そっちのけで幼稚園のお遊戯レベルのパフォーマンスに夢中になる一群が目立つようになった。特に現監督真弓の打席では、ミッキーさんの音楽に合わせて体をあっちこっち移動させる動きが、波のようだった。私はスコアブックをつけるから懐の許す限り内野席に座るようにしていたが、その席でも外野席のお遊戯に呼応する連中が出てきたのには驚いた。宇宙からの電波に操られているようだった。

 阪神タイガースはその後、長くて憂鬱な低迷期に入るが、阪神ファンの行状はエスカレートするばかりだった。応援団の中には、甲子園での特権を要求する連中も出てきた。「気楽そうに見えるか知らんが、こう見えても大変なんやで」としたり顔で言う応援団幹部もいた。大変ならやめておけばいいのに。

避妊具みたいな、いやらしいかたちに膨らむ風船を飛ばし始めたのもあの優勝のころからだと思うが、この小道具によって7回という終盤の佳境で野球そっちのけになるファンが激増した。緊迫感を増す試合の効果音として、膨らませすぎて割れる風船の爆発音が加わるようになった。「愚かしい」という言葉の用語例に使えばいいと思う。

こうした応援スタイルが人気を呼んだようで、甲子園球場は常に満員になるようになった。あるとき、仕事で滋賀県に行ったときに取引先の人が、「今日は5時でみんな上がって、甲子園で応援ですわ」と嬉しそうにメガホンを見せてくれた時、私は阪神のウィルスがパンデミック状態になったことを知った。今年に入って、近鉄奈良線と阪神線がつながったことで、古都奈良でも阪神のハッピを着た連中をしばしば目にするようになったが、他のウィルス同様、交通機関は最大の感染ルートになるのである。

 阪神は巨人を抜いて、日本一の観客動員を誇る球団となった。自前の選手を育てる傍らで、他球団、ことに広島から優秀な選手を買い入れるようになった。「ありゃ阪神タイカープじゃ」という赤ヘルの嘆きは、甲子園までは届かない。

関西の球団が次々と消滅して、関西人=阪神ファンという図式がいよいよ強固になった。阪神タイガースが御堂筋を優勝パレードすると報じられた時、「それは南海ホークスにしか許されぬ」と抗議した連中があったのだが、その声はあまりにも小さかった。パレードの当日、黒と黄で埋まった沿道に、緑の旗を振る一群があった。なかの一人はわざわざ香港からやってきていたが、そのささやかな活動はべた記事にしかならなかった。

今、阪神の野球中継を見ていて、とりわけ複雑な思いに駆られるのは、門田博光(病気療養中)、福本豊、佐々木恭介、有田修三など、パリーグの綺羅星のごとき名選手が、阪神ファンそのものという口ぶりで解説をするときである。確かにオリックスの解説では飯は食えない。帰るべき球団もないのだから、いたしかたないことではあるが。「よその家にもらわれた子」の哀れさを感じる。

 先日、ローマ法王がパレスチナを訪れた時に、ユダヤ教徒とイスラム教徒が法王の支持を得ようと綱引きのような騒ぎになった。その騒ぎの中で、あるかなきかのキリスト教徒は、法王の姿を拝むこともできず、小さくなって過ごしたようだ。なぜかそのキリスト教徒に、ちょっとだけ連帯感を抱く今日この頃である。

■後日談:野球観戦にかかわる意見の相違が、このあたりから顕在化していった。

スポ―ツ紙に未来はあるのか?|野球報道

【2009年5月14日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

ずいぶん昔のことだが、酒場でスポーツ新聞の記者に「掛布雅之の魅力とは何か?」と問いかけたことがある。記者氏はしばらく腕を組んだ挙句「わからん、考えたこともない」と言った。

彼は自分の会社にいるよりもはるかに多くの時間を甲子園や他のスタジアムで過ごしていて、掛布はじめ阪神の選手がどんな車に乗っているかとか、誰と誰が仲がいいとか、どんな女性と付き合っているか、などの身辺の情報は、ひょっとすると自分の家族以上によく知っていた。選手のプレーもいちばん良い場所から毎日眺めていたはずだが、その眼は、選手のプレーそのものではなく、別のところに向いていたのだ。

 

今のスポーツ誌も、似たような記者によって書かれているような気がする。今日のスポーツ新聞各社のトップの見出し

 ・スポーツニッポン(東京)「ただいま5連勝 マー君ってすごい!」

・デイリースポーツ「球児悲劇」

・スポーツ報知「草彅29日いいとも」(巨人は敗戦)

・中日スポーツ「克服しろ、浅尾」

・東京中日スポーツ「井端負傷退場!」

 各紙ともに総合スポーツ紙と名乗ってはいるが、どこかのチームの応援団の会報誌のようである。こんな見出しを365日考える方も大変だが、読む方だって大抵のことではない。新聞の中身もこの調子だ。勝てば有頂天になり、負ければ消沈するか、無理に良い所を見つけ針小棒大に取り上げる。「大本営発表」みたいな見出しもしばしばだ。さらに国語教育に挑戦しているのか、と言いたくなるようなダジャレや造語を連発する。素朴な疑問なのだが、そういう記事って読むほうも、書いてるほうも飽きないのだろうか。

要するに勝った日は「勝った勝った」と書き、負けた日は「負けた負けた」と書くだけで、スポーツ紙をどんなに読んでも、試合の微妙なニュアンスや流れは見えてこないのだ。勝敗や選手の成績は、STATSを見ればわかる。そのことについてわんわん書いてくれなくてもいい。それよりも数字では知ることのできないプレーの様子や、その背景、そしてその選手の能力や資質などを伝えてほしい。監督の戦略や思惑、両チームのタイムリーな戦力的な背景なども教えてほしい。そう思うのだ。

「ナンバー」という雑誌が創刊され、今も多くの読者に読まれているのは、スポーツ紙では知ることのできないいろいろな情報を知りたいと願う読者がいるからだと思う。

スポーツ紙の部数は、おそらく伸び悩んでいることだろう。情報メディアの多様化によって、試合の勝敗はリアルタイムで分かる。STATSだってネットですぐに入手できる。CS、BSで試合の放送も見ることができる。翌朝のスポーツ紙のやけくそみたいな元気な見出しは、かなり色あせていると思う。

もちろん、そんなスポーツ紙のカラーが好きな読者もたくさんいるだろうが、スポーツ紙の存在意義は以前よりはかなり薄れているのではないかと思う。紙面制作のために毎日費やされる莫大なエネルギーを、ほんの少し違う方向にむける時が来ていないだろうか。

ちなみに、私にとって掛布雅之とは「胸のすくような守備をする三塁手」だった。ゴロをグラブに収めるや、三塁側に1、2歩ぐっと体を預けて、その反動で矢のような球を一塁に送る。その送球はマウンドを通過したあたりでぐっと浮き上がっているように見えた。どこまでも伸びていきそうな、その直線を一塁手のミットが突如断ち切る。なんとも爽快な見ものだった。私にとって、掛布はそんな「守備の人」だったのだ。

■後日談:大それた話だが、このブログで野球ジャーナリズムに一石を投じたいと思っている。

ディマジオ家の終焉|MLB

【2009年5月9日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

きのうはマニー・ラミレスが薬物事件で50試合欠場、今日はA-ROD復帰第一打席の第一球をレフトへホームランと、相変わらず派手なニュースが飛び交うMLBである。個人的にはオルティーズの不調とラミレスの今回の事件に関連がないのか気になるところだが、今日はこれらのニュースに隠れて発信された地味なニュースにちなんで、好きなSTATSを紹介したい。

Dimaggio

5/4、元BOSの中堅手だったドミニク・ディマジオが死去した。92歳。現役時代は強肩好打の外野手として、不動の存在だった。丸いメガネがトレードマークで、オールスターにも7度選ばれている。何よりこの選手はディマジオ3兄弟の一人として知られた存在だった。

プレーを見てみたいかつての名選手を1人あげろと言われれば、私は即座にジョー・ディマジオを挙げる。56試合連続安打、不滅の記録の持ち主。アメリカ文学で彼ほど多くの作家に取り上げられた存在はない。STATSだけでなく、外野手としての資質、何よりプレーの美しさで、まさに別格の選手だったようだ。若い頃はゲーリッグと3,4番を組んでいた。成績でいえば同時代のテッド・ウィリアムスには劣るのだが、評価は常に上だった。STATSではこの豪打にもかかわらず、三振数の少なさが才能を物語っている。

ディマジオはその兄と弟も優秀な外野手だったことでも知られている。3人ともセンターを守っていた。先日死んだドムは、兄ジョーの最大のライバル、テッド・ウィリアムスと外野陣を形成し、打線でも中核をなした。BOS記録の34試合連続安打の持ち主でもある。兄のビンセントは常に弟ジョーの後塵を拝したが、30歳を過ぎて頭角を現した選手である。

ディマジオ3兄弟の内ビンスをのぞく2人は兵役につき、それがキャリアSTATSを物足りないものにしている。チームメイトになったことはないし、ビンスはリーグが違ったので公式戦での対戦もない。しかもオールスターでも対戦しなかった。

何やらぎすぎすした話題が多いMLBだが、ディマジオ家の終焉は、彼らの時代が完全に歴史になってしまったことを表している。

 (それにしてもArialは美しい。STATSには最高の書体だな)

■後日談:クラシカルなSTATSは大好きなのだが、いかんせんその魅力がなかなか伝わらないのだ。もっと工夫したい。

ドラフトがやってくる④|MLB

【2009年5月13日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

少々地味なシリーズになったが、これが最終回。今回は、2001年のMLBドラフトの結果をチーム別に見てみる。

なお、成功PTはMLB4、AAA3、AA2、A1~1.2、R0.8、独立L1でポイントを加算し、その巡の平均値をとったもの。MLBだけでなく、より高いレベルにどれだけ昇進したかの目安のデータである。)

この年指名した選手がどれだけMLBに昇進したかの順番である。

Draft05

これはいわば、GMからスカウトまでを含めたフロント陣の能力のランキングだ。トップは「マネーボール」の主人公、ビリー・ビーンGMのOAK。MLB昇進者は3番目の9人だが、指名者数を41人に絞り込んで率ではNO.1である。ビーンはFA権の補償で他チームから1巡指名権を奪う名人だが、この年も3人を1巡で指名。すべてがMLBに上がった。限られた予算でどれだけ有望な選手を指名するか、その努力が数字に表れている。

MLB昇進率が20%を超えるチームを見ると、PITを除いて近年優勝争いにかかわっているチームが多い。

NYYはドラフトでも良い実績を挙げているが、この時点でのBOSはドラフトでは振るわない。今のジョン・ヘンリーオーナー、テオ・エプスタインGMの体制になるまでBOSは「Bルースの呪い」でワールドチャンピオンになれなかったのだが、一面でいえばフロントが無能だったといえよう。今のBOSのフロントは当時とは大きく変わっている。

もちろん、ドラフトの成績が悪くてもFAやトレード、さらには実戦での戦略性の高さなどで好成績を上げる球団もあるから、このデータはチーム能力を表していると言い切ることはできないが。

SEAのフロントは、長年ドラフトでもトレードでも首をかしげざるを得ない施策を取り続けてきた。この年も、ノマー・ガルシアパーラの弟のマイケルを1位指名したが、彼は目が出ず今年もMIL傘下のAAAにいる。指名実績も最低の部類である。春先良いスタートを切ったものの、最近負けが込んだSEAでは、またぞろイチロー不要論が出ているようだが、それはお門違いだろう。長年のフロントの無定見が、チームの実力に反映されているのだと思う。

ドラフトの成果は数年しないと現れない。今年6月のドラフトの結果は、未来のMLBの勢力図へとつながっているのである。

■後日談:MLBのドラフトはもっと深く突っ込まないと、興味を引くネタにはならないなと思った。

ドラフトがやってくる③|MLB

【2009年5月9日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

さて、2001年の指名選手のうち、MLBまで上がった選手183人を一覧で見てみたい。長い表で恐縮だが。

Draft04

何度も紹介している通り、この年の指名トップはマウアーだが、出世頭は彼ではなく、タシェアラではないか。NYYに移籍し、1年当たり2062万ドルを獲得している。さらに、当代最高の三塁手の一人と言われるデビッド・ライトも1巡目にいる。出世のスピードでいえばOAKのショートのクロスビーが2004年に新人王になって一歩リードしたのだが、その後低迷している。

そして、決して高い指名とは言えない8巡目の243位にケビン・ユーキリスがいる。この選手や、さらに下の11巡目318位で指名され、昨年新人王に輝いた強打の捕手、ジォバニー・ソトが同期の出世レースを逆転でものにするかもしれない。

投手では、STLからARIに移ったダン・ヘイレンが今季の勝も含めて68勝で勝ち頭、2位は今はDETにいるボンダーマンだが、ボンダーマンは血栓で長期DLに入っている。同様に、43勝を挙げたプリオーや2005年Kcの開幕投手を務めたブラゼルトンも故障で長期離脱している。投手の予測は難しいことがわかる。

10巡目指名以後は、2001年の指名を回避し、次年以降の指名でプロ入りする選手が目立つ。J.D.ドリューの弟、スティーブン・ドリューは2001年は11巡目324位だったが、2004年は1巡目15位でARIに入団している。代理人スコット・ボラスの手腕もあるのだろう。さらに下位には2003年の再ドラフトでプロ入りし、昨年ブレークしたイアン・キンズラーがいる。

中にはこの年の指名を回避し、次年以降のドラフトに期待したものの、順位を更に下げた選手もいる。大抵は進学した大学などで故障したり、調子を落としたりしたためである。

NPBのドラフトならば、1968年組と言えば、山本浩、星野、田淵、福本、加藤英、富田とすらすらと名前が出てくるが、MLBでは同世代という一体感は薄い。しかし、毎年、MLBを目指してプロ入りする選手たちは、こうした出世レースで頂点を目指しているのである。

■後日談:今年のアリーグのMVPは、マウアーとタシェアラという同期生の争いだったのだ。

ドラフトがやってくる②|MLB

【2009年5月10日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

2001年は、日本人MLBファンにとって特に記憶に残る年である。言うまでもなく、日本人初の野手、イチローと新庄がMLBデビューを果たした年だからだ。開幕からのイチローの驚異的な活躍は、MLB全体を大いに沸かせたものだ。

この年の6月、例年の様に開かれたドラフト会議では1482人の選手が指名された。(順位としては1485番まで付いているが、3つの順位は空白である)

NPBのドラフトのように会場で発表されるものではなく、電話会議だから実態を見ることはできない。しかも1巡目から50巡目まで延々と行われる。各球団のオフィスではGM以下のスタッフが長時間電話を耳元に作戦を練るのである。終盤に入ってくると緊張感が緩むのか、とんでもない名前がエントリーされたりする。この年でいえば、47巡目、1397番目にTORが指名したのは36歳のクリス・ジョーンズ、1398番目は59歳のチャック・テーラー、いずれも元MLBのおじさん。お遊びでの指名である。こうした半ば本気でない指名も含めて、1482人の選手が指名されるのだ。

各球団が1巡ごとにほぼ1人ずつ指名するのが原則だが、1巡目指名権はFA選手の獲得などのからみで、数が増える。

こうしてほぼ1日に及ぶドラフト会議が終わり、リストが作られる。

彼らが現在、どのような出世街道を歩んでいるのか、一覧にしたのが以下の表である。この表は、このときのドラフトでプロに進まず翌年以降の指名で入った選手のDATAも合算している。

(なお、成功PTはMLB4、AAA3、AA2、A1~1.2、R0.8、独立L1でポイントを加算し、その巡の平均値をとったもの。MLBだけでなく、より高いレベルにどれだけ昇進したかの目安のデータである。)

 Draft02

MLBドラフトの圧倒的なボリュームがご理解いただけるだろう。

1巡目のトップはジョー・マウアー、今や最高の評価を受ける捕手、打者である。全体では12.3%にあたる183人がMLBのグランドに立った。しかし、すでに72%の若者が現役を去っている。淘汰は確実に進んでいるのだ。

1巡目の選手は44人中25人がMLBまで昇進した。中には全体7番指名でBALが指名したクリス・スミスのようにAどまりで2005年に引退した選手もいるが、概ねスカウトの目は確かなようである。以下、50巡目まで見ていくと、確かに上位指名の方が出世する可能性は高いのだが、下位にいくほどその傾向は顕著ではなくなる。

これを10巡ごとに区切ってみたのが以下の表だ。

Draft03

下位に行くほど辞退率(進学・辞退者の比率)が上がるのは明らかだが、30巡目以降はMLBへの昇進率は大差がなくなってくる。これは、ダントツに優秀な選手はともかく、ドングリの背比べの選手は見極めがつきにくいこと、そして各球団の関心が上位の有望選手に集中していることを表しているのだろう。

この年、最も低い順位で指名されてMLBまで上がったのは、1482番(下から3番目)にCWCが指名したザック・ジャクソン。この年の指名ではプロに行かず、2004年のドラフトで1巡目32番でTORに指名されている。左のセットアッパーとして今年もCLEで2試合に投げている。この年の指名で入団した中では、1411番目にSFが指名したスコット・ムンター。右のセットアッパーとして2005-7年までMLBで投げたがトレードされて今はCOLのAAAにいる。

次回は、この年指名された選手の中からMLBまで上がった選手をクローズアップする。

■後日談:MLBの出世の階梯は、相撲の番付を下から登るのと同じくらい厳しい。日本のプロ野球の比ではないのだ。

ドラフトがやってくる①|MLB

【2009年5月8日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

もう1月ほどで、MLBのドラフトシーズンを迎える。NPBのドラフトでは約70人から100人が指名されるが、最近のMLBは1500人。桁が違う、すさまじい情報ネットワークで有望な選手を指名しつくすのだ。その頂点に立つのが1巡目の1位指名である。まさにエリート中のエリート。では、1位指名の選手はどこまで出世したのだろうか?

過去44年間のドラフトの記録を一覧表にした。

 Draft01

1位指名の選手はほぼ全員がMLBまで昇進する。しかし、それ以後の成績はまちまちである。マウアーやA-ROD、チッパー・ジョーンズ、KグリフィJr.など、将来の殿堂入りが有望視される選手がいる一方で、地味な成績のままに終わった選手も多い。Bホーナーは、ヤクルトで力の違いを見せつけたが、MLBでは成功したとは言えない。派手な登場をしたDストロベリーも最後は惨めだった。Rマンデーはポストシーズンの活躍が懐かしいところだ。

投手では、200勝をした1位選手はいない。投手の見極めは野手より難しいのかもしれない。

6月アマチュアドラフトにエントリーされる選手はエクスパンション以降、増えている。また顕著なのは、大卒選手の指名が増えていることだ。「高卒の指名はギャンブルだ」というOAKのビーンGMの主張が支持されているからだろう。

こうして指名された選手がMLBでプレーできる確率は、エクスパンション以降で12~13%。しかし定着できるのは、その1/3程度である。

日本人も何人か指名されたが、MLBまで行った選手はいない。

2007、2008の1位指名はTBが行った。Dプライス、Tベッカムともに今日にもMLBに上がりそうな報道だったが、AAAでの数字を見る限り、意外に苦戦している。

MLBのドラフトの信頼度は、NPBより上だとは思うが、それでもまだ不確定要素が多いことを実感する。

しばらくドラフトのSTATSを紹介したい。

■後日談:MLBの壮大なドラフトは、大いに興味をそそった。ただ日本の皆さんの関心はそれほどではなかった。もうすこし深くつっこんでいきたい。

エバン・ロンゴリアはいつ発見されたのか?|MLB

【2009年5月7日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

4月の月間MVPにTBのロンゴリアが選ばれたようだ。昨年の満票の新人王に続き、開幕早々の月間MVP。まさに順風満帆である。

日本のファンからすれば、ロンゴリアは岩村を3塁から2塁に追いやった選手ということになる。その時点で、1試合もMLBに出ていなかった選手になぜ、それだけ期待をかけることが出来たのか?

今、普通に入手できるSTATSで、アマチュア野球までフォローしているのはhttp://www.thebaseballcube.com/というサイトである。これでSTATSをまとめてみた。

EVAN LONGO

ロンゴリアは2006年ドラフトで全体の3番目でTBに指名されている。約1500人指名される中で3番目である。アメリカの大学野球は2月~5月、ドラフト会議は6月に開かれるから、入団を承諾した選手はその年のうちにマイナーリーグで野球ができる(良くできているなと思う)。

こうして20歳のロンゴリアは大学2年でプロに入ったのだが、STATSを見ればわかる通り、A-A+というクラスは短い期間で卒業している。AAでは多少足踏みをしたが、AAAに上がった時点では成績のいかんにかかわらず、翌年のMLB昇格は既定の事実になっていたようである。開幕時点でのロースター入りはならなかったが、4/12にデビューすると以後はDL期間を除いて3塁に座り続け、成績を残したのである。

マイナーにも打撃、投手のタイトル争いがあるが、プロスペクトの多くはそうした次元とは別に、マイナーの階段を駆け上がるのだ。

ロンゴリアの母校カリフォリニア州立大学ロングビーチ校の所属するNCAAビッグ・ウェストカンファレンスからは、2006年40人の大学生が指名されているが、今年の時点でMLBに上がったのはロンゴリアと2位のAカーペンターのみ(しかも1試合)。指名された時点ですでにプロスペクトだったのだ。

では、彼は2005、6年の大学野球での活躍で“発見”されたのか?実はそうではないようだ。ロンゴリアは、その前年にリオ・ホンドコミュニティーカレッジという公立短期大学で野球をしたのだが、このときの成績が抜群で、全米大学スポーツの最高峰、NCAAに所属するカリフォリニア州立大学ロングビーチ校に特待生で入学を許されたのだ。

ロンゴリアは、ロス近郊のウィッテリアという小さな町の、学生数30000人余り(その60%以上がヒスパニック)の地域住民が学ぶ無名大学にいるときに“発見”されたのだ。

OAKのビリー・ビーンGMのマネーボールは野球の様々な分野に革命をもたらしたが、こうした新人を発見する情報ネットワークもその賜物なのだと思う。

■後日談:ロンゴリアはそこそこの成績はあげたが、春先の勢いはなかった。ややモチベーションに欠ける印象があった2010年はどうだろうか?

ローテーションが崩壊するということ|MLB

【2009年5月6日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

今年のSEAの好調の要因はいくつかある。俊足好打好守の二人の外野手の加入、精神的支柱のグリフィJr.の存在、ベンチの雰囲気はずいぶん良くなっていると思うが、同時に投手陣の好調は見逃せない。今年のSEAの先発投手陣は実に安定しているのである。

昨日までのSEAの先発投手の成績をローテーションの形で見てみる。

QS-SEA

ご存じの方も多いとは思うが、QSとは先発投手が6回以上を投げて3点以内に抑えること。先発の最低限の仕事の基準である。なお、小さな箱の数字は左が回数、右が自責点。

WBCを辞退してまで先発転向にかけていたローランドスミスはDL入りし、代わりにジャクボスカスが入ったが、あとは規則正しくローテーションを守っている。ヘルナンデス、ウォシュバーン、ベダードが3回に2回はQSを守っている。3人とも防御率は3.5以下である。シルバがローテから外れるのは時間の問題だろうが、ジャクボスカスはまだ見込みがある。シルバの代わりには、中継ぎへ回って好投しているバティスタ、ホワイトなどが考えられる。

とにかく、ローテーションが安定していると、チームの作戦が組みやすくなる。勝つにせよ負けるにせよ、ストーリーがはっきりしてくるという感じだ。

対照的なのは、LAAだ。

QS-LAA

エースのラッキー、サンタナがDLから復帰せず、開幕から2本柱抜きのローテーションとなった。一順目は抜擢したエーデンハートの好投もあって順調に滑り出したのだが、そのエーデンハートが直後に事故死、急きょルークスがローテに入るが、ローテ二番手のモズレーもDLに入り、以後、LAAのローテーションは混迷を深める。オリバー、パーマー、オルテガと抜擢した投手がすぐには結果を出せず、チームは最下位に沈むのだ。主砲ゲレーロのDL入りも大きかっただろうが、エーデンハートのショックを引きずったという見方もできるだろう。

1か月が過ぎて、ソーンダース、ウィーバー、ルークスという先発の柱がおぼろげながらに見えてきた。これでDL入りしているラッキー、サンタナが加われば、LAAの陣容はようやく立て直される。そうなればSEAの大敵はやはりLAAということになろう。

こういう形でローテーションを見てくると、その崩壊がチームの崩壊をも意味することがわかってくるのである。

■後日談:いつ崩れるかと思っていたローテーションが崩壊してSEAは落ちていき、体勢を立て直したLAAは定位置の首位でシーズンを終えた。SEAはいいところまでいっていたのになあ、という気がする。

井口資仁という成長曲線|MLB、NPB

【2009年5月5日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

千葉ロッテマリーンズの新しい主軸として、井口の活躍は目覚ましいものがある。MLBでの監督経験も豊富なバレンタインは、井口を獲得するや躊躇なく4番に据えた。

iguchi

ダイエーに入った頃の井口は、時折長打は打つが粗い打者という印象だった。それが俊足を生かして上位に起用されると、課題を次々と克服していく。転機となったのは2003年である。この年にはじめて.300を超えると100打点も記録。翌年も高打率をあげた。この2年がなければMLBへの移籍は難しかっただろう。

中軸を打っていた井口はMLBでは2番が定位置となる。守備ではしばしばスーパープレーを見せたが、打者としてはつなぐ役割に徹していた。NPB時代とは二まわりくらいスケールの小さな野手になった感があった。気の毒なのは、CWSからシーズン途中でPHIにトレードで出され、ジャーニーマンになってしまったことだ。レギュラーでなければ持ち味を発揮できないだけに、MLB後半は苦労が続いた。

NPBにもどっての活躍で井口は、まだ成長曲線の途上にいることを証明した。本当のところ、MLBでの活躍をもう少し見たかったが、NPBとMLBの実力差や野球観の違いを見る上で、井口は格好の材料となっている。

■後日談:井口の最終成績は、ぱっとしないものだった。何か憑き物が落ちたような感じがある。MLBにいたときのモチベーションが維持できなかったのではないか。

高橋建の38球|MLB

【2009年5月4日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

建さんがようやくMLBのマウンドに上がった。「よかったねー」と思っていたのだが、良く考えてみるとこれは歴史的な出来事だということに気が付いた。史上三番目に高齢のMLBデビューなのだ。1位はよく知られているとおり42歳のサッチェル・ペイジ、2位は41歳のディオメデス・オリーボ、建さんは40歳で3番目なのだ。

kensan

1番から9番まで、ちょうどフィリーズのラインナップと一通り対戦した。1番打者ビクトリーノへの初球は日本ではシュートと言っていたが、こちらではチェンジアップ。Pゴロ併殺で仕留めて3アウト。次の回からは、140キロの4シームをいかに早く見せるか、建さんの老獪な投球が始まるのだ。何とおなじみのイバニェスは2番を打っているが、彼に2塁打を打たれてからは、後続を抑えていく。時折投げる遅い変化球が有効だったのだろう。恐らく一番怖いのは、ハワードではなく5番のロリンズだと思うが、ここでは4シームと2シームの使い分けも行っている。

9人目の打者は今年11月には47歳になる投手のモイヤーである。この大投手も建さんには大いに興味を抱いたようで、何と9球も粘っている。建さんはずっと4シーム、一番速い球を投げ続けて彼を左飛にしとめた。面白い勝負だったはずだ。ライブで見たかった。

 

ペイジは46歳で12勝を挙げている。オリーボも翌年5勝である。建さんはこれから、どれだけの成績を残すだろうか。楽しみがまた一つ増えた。

■後日談:大きなミスはなかったが、高橋建は最終的にはマイナーでシーズンを終えた。MLB残留も難しいだろう。40歳と言う年齢はやはり将来を夢見るには無理がある。もっと早くにMLBに行くシステムがあればと思う。

日本人MLB選手の4月(野手)|MLB

【2009年5月3日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

今年のMLBは昨年よりも開幕が1週間遅かった。このことが日本人MLB野手には幸いしているようである。

 200905-bat

多くの日本人選手が昨年より成績を上げている。ことに福留は長打率でも出塁率でも大幅に上げて、今日時点でチームの打率、打点2冠王である。昨年後半の不調は内角のウイークポイントを突かれたからだといわれるが、はやくもそれを克服したのだろうか?

岩村も今年は大きく変わっている。制約の多い1番ではなく、下位を打つことで選択肢が広がったようで、昨年シーズン通算8盗塁6盗塁死だったものが、すでに5盗塁である。ただ、BJアップトンの不調を考えると、やはり岩村1番が良いとは思う。

松井秀喜は、昨年も4月は好調だった。勝負はこれからなのだ。同様のことがイチローにも言える。打率はかろうじて3割に乗っているが、好調とは言い切れない。5月に35安打以上しないと200本は見えてこないだろう。

■後日談:日本人の新しいMLB野手は当面でてきそうにないことが、寂しい感じがする。

日本人MLB選手の4月(投手)|MLB

【2009年5月2日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

MLBが開幕して1月が経った。今年の各選手の調子を占う上で重要なSTATSが揃った。昨年実績と併記して見てみたい。

まずは投手

200905-pitch

非常に気になるのは、黒田を除き、2年目以上の投手全員が防御率を大きくダウンさせていることだ。その上、黒田、川上、松坂の3スターターがDLに入っている。2年目に入り投球パターンを読まれて苦しむ投手、そして調整に失敗した投手。まだまだ盛り返す機会はたくさん残っているが、このところ高騰気味だった日本人投手株は、かなり落ち着いてきているはずだ。

なかで上原が3選連続QSと安定していることが救いだ。

松坂はチームが好調なだけに、あまり無理をして上にあげない方針のようだが、これで登板回数は最大30回ほどに減ってしまった。昨年並みの数字を挙げるのは厳しくなった。また、小林、岡島、斎藤はセットアッパーとして安定しているとは言い難い。これからが正念場だろう。4/27高橋建は上に上がったが、まだ登板機会がない。

日本人投手の5月以降に期待したい。しり上がりに調子を上げてほしいものだ。

■後日談:MLBの厳しさは162という数字に象徴されるのではないか。特に投手たちは、徹底した自己管理ができずにつぶれていったのではないかと思う。

投手を見殺しにする野球|NPB

【2009年5月2日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

昨夜のオリックスは楽天に12-2で大敗した。楽天は永井が完投したが、何とオリックスも中山が12点を奪われながら完投した。3回の8失点のあとも6、7、8に失点を続けながら、ベンチは救援を送らなかった。NPB記録に1点差に迫る大量失点での完投。まさに見殺しである。

中山慎也は27歳。期待の左腕だが、今期は開幕1軍を外れていた。満を持しての先発だったが、大失敗。監督の大石は「勉強の為に」あえて投げさせたそうである。

いろいろな意見はあるだろうが、これはプロ野球の2つの重要なものを大切にしていない、という点で非難されるべきではないか。

1つは当然ながら選手である。こんな状態で投げさせて「勉強」もあったものではない。自信を失うし、恥をかくし、体力も消耗する。おそらくは「チームに見捨てられた」と思ったはずである。NPBの選手は高校球児ではない(高校生であってもいいとは思わないが)。すでにプロであり、出来上がった存在だ。プライドもある。この失点ではあとどれだけ頑張っても通算防御率はなかなか上がらないだろう。シーズンを投げる気になってもおかしくない。たまたま不調で打ちこまれる時があったとしても、投手はチームの貴重な財産のはずだ。監督やチームは彼を守らなくてはならないのではないか。

もう1つは、当夜Kスタ宮城に集まった12262人の観客である。大部分が楽天ファンだったにしても、相手チームが早々に戦意を喪失し、火だるまになった投手をそのまま投げさせるのを見て、入場料は高いと思ったはずである。こんな試合をGWに魅せられるのは災難だと思う。

オリックスは4/24にも、5回までに7失点したエース小松を7回途中まで投げさせている。MLBでも大量失点した投手を続投させるケースはあるが、それは100球までという目安に則っている場合が多い。MLBのように投手を節約しなければならない切迫した事情があるとは思えないし、オリックスの投手起用は理解に苦しむ。

「罰を与える」意味で続投させたとすれば僭越この上ないと思う。

■後日談:オリックスの大石監督は今季で解任された。古い人ではないが、用兵は古臭かったと思う。
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最近メディアからいろいろお話をブログにいただくようになりました。迂闊なことに、殆ど対応できていませんでした。ご連絡は下記までお願いいたします。

baseballstats2011@gmail.com

広尾晃と申します。

ライター稼業をして、かれこれ34年になります。

2009年1月に、SportsNaviで「MLBをだらだら愛す」というブログを開設、12月には「野球の記録で話したい」を開設。多くの皆様にご愛読いただきました。2011年11月、livedoorに引っ越し。基本的な考え方は変わりません。MLB、NPBの記録を中心に、野球界のことをあれこれ考えていきたいと思います。多くの皆様に読んでいただきたいと思いますが、記録や野球史に興味と尊敬の念を持っていただける方のサイトにしたいと思います。特定の球団のファンの方も大歓迎ですが、「ひいきの引き倒し」的な論調には与しません。

広尾晃はペンネーム。本名は手束卓です。ペンネームは、小学校時代から使っていました。手束仁という同業者がいるので、ややこしいのでこの名前で通しています。ちなみに手束仁はいとこです。顔もよく似ています。
私が本名を隠しているかと勘違いして、恐喝のようなコメントを送ってくる犯罪者まがいがいるので、あえて公表します。


2012年11月「クラシックSTATS鑑賞」を独立したサイトにしました。

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