野球の記録で話したい

Baseball Stats Lounge

アルバート・プホルズの研究 2|MLB

【2009年7月11日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

プホルズはデビュー年の開幕第一戦に先発して以来、2度のDL入り以外ほぼすべての試合に出場し、傑出した実績をあげてきた。95%を超える出場率はイチローと双璧である。そして、タイプは違うが、常にリーグトップクラスの成績を上げ続けてきたことでも、イチローとプホルスは共通している。

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こういう安定したSTATSは、MLBでも稀有である。一昨年までのゲレーロがやや近いが、スケールは少し上である。毎年、単独のSTATSを見ているだけだとわからないが、プホルズは2007年やや不振だったのだ。そして、今年の前半戦はいつにも増して好調だ。

 

こうして積み重ねた数字がいかに凄いかを、脂の乗り切った働き盛りの強打者と比べることで見てみよう。現役で1500安打以上を打って、しかもまだ晩年を迎えていない選手12人との比較である

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シングルヒッターのイチロー、ジーターから大ものうちのA-RODまで、キャリアも経験も十分な打者たちと比較しても、プホルズのSTATSは傑出しているのだ。タイトルは1度(2003年首位打者)だけだが、彼が三冠王に最も近いといわれる所以である。イチローとは毎年通算打率で激しい争いをしていたが、2008年ついに追い抜いた。Decade(10年)での通算記録を争うという観点に立てば、01-10のDecadeで同期のイチローとプホルズ、どちらが10年首位打者を獲得するかも興味深い。

バランスが取れた上にスケールもトップクラス、そして安定度も抜群。プホルズはそう言う打者である。

■後日談:本塁打王と言う2つめのタイトルをようやくとったが、実力の割にタイトルに縁がない。本人にその意識が希薄なのではないか。

アルバート・プホルズの研究 1|MLB

【2009年7月10日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

ナショナルリーグのオールスターファン投票1位は予想通りSTLのプホルズだった。日本人ファンには、ナの選手はなじみが薄いのだが、プホルズは間違いなく現役最高の打者であり、さらに言えばイチローに比肩しうる「記録的な」打者である。

プホルズは1980年生まれ。学年は1つ上だが、日本で言うところの「松坂世代」である。ドミニカからカンザスシティに移住したプホルス家の末っ子だったアルバートは高校の野球チームで頭角を現し、メープルウッズ大学に進んだが、この大学はNCAAなどに所属していないマイナーな学校であり、これまで15人のマイナーリーガーを輩出したのみだった。

プホルズは1999年アマチュアドラフトで指名された。この年の主要な指名選手は以下の通りだ。

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ハミルトン、ベケットをはじめ、プホルズの同期は多士済々である。Bロバーツやクロフォード、モルノーなども同期だ。しかし、才能ある若者が上位で指名される中、13巡目402番での指名。これはプホルズが全くの無名だったことを意味する。

しかし、MLB機構に入ったプホルスはたちまち頭角を現す。Aのぺオリァ・チーフスでプホルズは長打率1位、MVPを獲得。そしてマイナー全体のMVPも獲得する。

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シーズン終盤で昇格したAAAでは数字は上がらなかったこともあって、フロントはもう1年AAAで経験を積ませる予定だったようだ。しかし、スプリングキャンプで打ちまくったプホルスを、チームの大スター、マーク・マグァイアが高く評価し、MLBに引き上げるようにラルーサ監督に推薦したという。

2001年のSTLは、マグァイア、一時期MLB最高年俸だったボニーヤ、Eレンテリーヤ、メイブリーなどの大物が並び、さらに当時MLB屈指の若手とされたJDドリューがいた。こうした面々の間を縫って開幕戦のスターティングメンバーに名を連ねたのである。これは、同期では1年目からMLBで投げたバリー・ジトに次ぐ早さ。

マイナーでは主に3Bを守っていたが、MLBでは外野に回ることになった。2001年4/2、COLとの開幕戦でプホルスは6番レフトでMLBにデビューする。48,113人の観衆の前で、プホルスは1安打を放った。同じ日にイチローも1番ライトでMLBの第一戦を迎えている。

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3Bを予定されたボニーヤの故障が長引き、プホルズはポランコをSSに追いやって3Bの守備に就くが、55試合で10個のエラーをしたこともあり、シーズン後半には外野、1Bを守る。4/17には4番に座り、以後、不動の中軸打者となるのである。

■後日談:昔はボブ・ホーナーのようにマイナー知らずの選手もいたが、今は現実的ではない。プホルズは恐らく最短距離でレギュラーを取った選手だ。

マウアー、ついにやってくる|MLB

【2009年7月9日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

ひょっとするとミネソタのファンよりも、日本人のほうがマウアーの数字に気をもんでいたのではないかと思うが、6試合連続1安打という“スランプ”中のイチローの横をマウアーが抜いていった。今年のマウアーは、昨年までの好打者ではなく、スラッガーというにふさわしい豪打ぶりである。OPSも1.000を超えている。

マウアーがイチローよりも有利なのは、打数が100以上も少ないことだ。1本の安打の価値が違う。反対に、打てないと打率が急降下するということでもあるが。

後半戦もマウアーは打ちまくるのか、イチロー、マウアーのオールスターを境目とする全後半戦の過去の数字は、以下のとおりだ。

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何度か紹介しているようにマウアーはシーズン通産で.350を打ったことはない。そして、全後半戦で見ると.027ほど打率を落としている。

一方のイチローも後半戦の方が打率は悪い。少し前までのイチローは夏以降極端に打率を下げていた。しかし近年は夏を越えてもそれほど打率が下がらない。これも円熟の境地だろうか。それにしても、イチローの現在の.356という数字は珍しくもなんともないのだということが実感できる。それから2004年後半の数字がいかにすごかったか、ということも。

マウアーは、ひょっとすると今年、1ランク上の打者に成長しつつあるのかもしれない。そうなると、高い打率を維持することも考えられる。

イチローは、2004年のようにもう一段ギアチェンジした数字を残すのか、それとも失速するのか、現状維持なのか、今の足踏み状態からどう脱するのかが鍵となりそうだ。

■後日談:マウアーは.350を打っただけでなくOPSも1.0を超えた。来季以降、手がつけられなくなる可能性もある。

イチローの「価値」について|MLB

【2009年7月8日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

最近イチローの記事ばかり書いている感がある。他の選手の話題が芳しくないのでやむを得ない。ここ7試合、32打数8安打と足踏みしているが、連続1安打試合の次に0安打が来るか、マルチか、この差が大きいと思う。マウアーが打率で上回っているが、勝負はこれからだろう。マウアーはシーズン通算.350を打った経験はない。

さて、1番打者としてのイチローについて、物足りないという声をしばしばいただく。もっと長打を打つべきだというご意見である。

まずは、アリーグの先頭打者のSTATSを比較したい。(前日まで)

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 SEAの1番は8試合務めたチャベスとイチロー。SEAは安打数、打率、出塁率、長打率、OPSでNYYと双璧のトップクラスの数字を残している。本塁打、RBIで劣っているのは事実だが、これは先頭打者に長打力を求めるか、出塁を求めるかという用兵の問題だと思う。出塁を期待する1番打者として、イチローは極めて優秀だと思う。BALの数字が優秀なのは、ブライアン・ロバーツのパフォーマンスが大きい。

得点、打点に関して言えば、本人の能力以上に前後を打つ打者の能力が大きく影響する。次の数字を見ていただきたい。先頭打者の打率、出塁率、長打率、OPSが、チーム平均とどれだけ差があるかという数字である。

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SEAは、つまりイチローはすべての数値でダントツのトップなのだ。SEAは、一番良い打者を1番に据えているのである。もったいないという見方もできようが、イチローを最大限に生かすのはこの打順ではないだろうか。むしろイチローに続く主軸打者こそ奮起すべきではないだろうか。

ちなみに、3番打者としてのイチローのSTATSは以下の通り。

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これだけでは何とも言えないが、長打は2塁打が3本だけである。

よくイチローは、本当は大きい当たりを打つ能力があるといわれる。確かにNPBでは、25本打った実績がある。これは本塁打王にあと3本と迫る数字だ。しかし、それはあくまでNPBの数字だ。NPBの打者の多くが、MLBではそれほど打てないのと同様に、イチローが仮に長距離打者を目指したとしてもMLBではうまくいかなかったのではないだろうか。

得点圏打率の低さ(58打数16安打.276)を指摘する声もある。一時期に比べれば落ちてきてはいるが、クラッチヒッターとしての数字も求めるのはやや酷ではないだろうか。

イチローなら長打も打てるはずだ。打点だってもっと望めるはずだ。というのは、ある種の幻想ではないかと思う。確かに様々な可能性はあっただろうが、その内の1つにもてる才能と努力を傾注したからこそ、このすさまじいSTATSを残したのだと思う。

 

■後日談:今年、イチローは少しだけOPSがアップした。シルバースラッガーにも選ばれた。かといって、マウアーのようにパワーアップしていくとは思えないが。

フューチャーズゲームのエリートたち その2|MLB

【2009年7月7日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

昨日のUSAチームに対する、ワールドチームのロースターである。

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まず気づくのは、ドラフト以外でMLB機構に入ってきている選手が大部分なこと。そして、USAチームよりも叩き上げ風の選手が多いこと。さらに言えば、参加国を多く見せたいために、多少無理目の選考が目立つこと。一言でいえば玉石混交の印象だ。この中では田澤のSTATSは堂々たるものだ。

投手のペレスは、昨年は独立リーグで投げていたが、再びマイナーから出直してフューチャーズに入った。ちなみに彼をスカウトしたのは、日本でもおなじみフリオ・フランコである。

もう一つ、投手で気がつくのはUSA,ワールドともに殆どが先発投手であること。たとえセットアッパーやクローザーとして名をなすとしても、最初は先発投手。これは日米ともに共通のようだ。

内野手(SS)のエスコバーは昨年9試合MLBでプレーしている。両チーム唯一の大リーガーである。

キリマンジャロの士さんご贔屓のSEAのリッディは、WBCではイタリア代表として8打数3安打だったが、驚異的な長打力でのし上がってきた。今年の1位アクリーの良いライバルになってほしい。キュラソー出身のスルバランもオランダ代表としてマウンドに立っている。小さなことのようだが、MLB機構はこのレベルでも世界戦略の視点を持っているのだと思う。

アメリカの野球には、学生時代からMLBの情報網にかかり、ひたすら頂点を目指すエリートと、海外から一攫千金を目指してやってくるたたき上げがいる。濃密の差こそあれ、その誰にもチャンスはある。そうした縮図がフューチャーズゲームなのだと思う。

■後日談:MLBには、プロスペクトをMLB登場前に演出する仕掛けがいろいろある。このゲームもそうだが、次々と注目をひく仕掛けを作っているのだ。

フューチャーズゲームのエリートたち その1|MLB

【2009年7月6日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

オールスターゲームの2日前、つまりホームラン競争の前日に、全米のマイナーリーガーから選抜された選手によるフューチャーズゲームが行われる。アメリカ出身の選手と、その他の国の選手(世界選抜)。いわば、WBCのミニチュア版のような試合である。7回制。試合そのものに意味があるというよりは、ここに選抜され、晴れの舞台で紹介されることに大きな意義があるといえよう。2回に分けて今年のロースターを紹介したい。まずはUSA選抜。

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ドラフト1巡目に指名された選手が多い。しかし中には低い指名順位から這い上がってきた選手もいる。父親がメジャーリーガーなのは、投手のドラベックとダフィ。内野手のウィークスの兄はMILのリッキー・ウィークスである。また、投手のケリーは入団時は内野手だったがすぐに転向して結果を出した。

マイナーリーグには、それぞれオールスターゲームがある。そこでは、そのリーグで好成績を残した選手が選ばれる。しかし、フューチャーズゲームには、各リーグでの実績十分な選手は少ない。今、まさに出世街道を駆け上がろうとするプロスペクトが選ばれている。だからAAAの選手が意外に少ない。STATSで見れば物足りない選手もいる。数字以上にプレーそのものはまさに「未来」を感じさせる、そんな選手が選ばれているのだ。先述のウィークス弟などはその代表だ。対照的に2003年30巡目のヤングなどは、各レベルで50以上の盗塁を重ねてきてようやく選ばれている。少数だが、そう言う選手もいるのだ。

各リーグの実力者ということなら井川慶は選出される可能性はあるだろうが、フューチャーズゲームは難しいだろう。プロスペクト、つまりエリートのための舞台なのだ。

■後日談:ストラスバーグやアックリーは2010年に登場するのだろうか。

アジア・シリーズ打ち切り危機に思う|NPB

【2009年7月4日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

2005年から始まったプロ野球のアジア・シリーズは昨年限りで打ち切られ、今期は11月に日韓戦(1試合)をやる構想が持ち上がっているそうである。今月の実行委員会で決まるそうだ。

アジア・シリーズは年々衰退を重ねつつ4シーズン続けられてきた。

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もとは、読売新聞社が主催し、コナミが冠スポンサーになっていたが、ともに2007年限りで降りて、去年はNPB機構が単独で運営し、2億円の赤字を出したそうである。

今の読売新聞社は「球界の盟主」東京読売ジャイアンツを擁しながら、野球中継には消極的である。日テレG+というCSがメインとなり、地上波からは絶滅しそうな感じである。自チームの巨人戦でさえ縮小傾向なのに、NPBの他チームの試合など真剣に中継する気はないということか。ましてや2007年は仇敵中日だった。

そもそも東京ドームで行う必然性は、読売新聞主催と言うことでしかなかった。フランチャイズでない球場のために日本戦でさえ球場をいっぱいにできない試合が続き、2008年などは決勝戦以外は日本戦でも1万人に届かなかった。

コナミがスポンサーを降りたのは、やむを得ないとしても、読売新聞社はいったい何がしたかったのかと思う。

正力松太郎が覇権を握ってからの読売新聞社を伸長させたのは、読売ジャイアンツとプロレス中継だったとされる。朝日、毎日という先行するライバル紙から読者を次々と奪ったのは、TV、新聞のマルチメディアでのシャワー的なジャイアンツ報道と、試合観戦券、優待券を軸とした拡張策だったとされる。読売グループは、巨人、NPBに足を向けて寝られないはずだ。ろくに努力もせず、率が取れないからという理由で降りたのは信じられない。

WBCは、さまざまなトラブルを抱え、運営も成功とはいえなかったが、MLBは財政面では成功したといわれる。また、日本や韓国に後塵は拝したが、日韓のファンにMLBの野球を印象付けることに成功したはずである。スポンサーが降りたとたんに2億円の赤字を垂れ流したNPBとの差は歴然だ。これではNPBは、WBCを嗤うことはできない。

MLBは、オーストラリアでのプロ野球リーグの発足を発表した。中国のプロリーグには資金援助をすると共に、優秀な人材の青田狩りを始めている。日本を通り越してアジア、世界戦略の布石を固めるMLBを横目に、NPBは「赤字だから、人が集まらないから」という理由で、自分たちが始めたアジアのチャンピオンシップをやめようとしている。韓国、台湾、中国の野球人に失礼だとも思う。

代替案で出ている日韓戦は、WBCでの高視聴率にあやかろうというものだろうが、真剣勝負のモチベーションを保つことができるのか。アジア・シリーズの旗を急に下ろすのはまずいから、この試合でお茶を濁そうとしているのかもしれない。地方球場で1試合と言うせこい設定は「赤字をこれ以上出したくない」という本音からではないのか。

 

MLBとNPBで、最も大きい実力差があるのは、投手でも野手でも、監督でもなく、フロント、経営者だと思う。ありとあらゆるマーケティング手法を使って機構全体の市場を広げ、競争しつつも全体が繁栄する施策を繰り出すMLBと、功成り名遂げた70過ぎの高級官僚を頭に頂き、野球とは無縁のサラリーマン役員が任期を事なかれに過ごそうとするNPB。これでは日本側がいかに障壁を設けようとも、MLBへの人材流出を止めることは困難だろうと思う。

アジア・シリーズは小遣い稼ぎの「花相撲」」ではなく、NPBの世界戦略、アジア戦略を見据えた投資だったはずである。公式サイトにも「野球の国際化の第一歩」と明記されていた。投資と言うのは、回収までに時間がかかるものだ。MLBは、もちろん中国やオーストラリアでの単年度黒字など求めていない。そのことさえ理解せず、赤字だから撤退というのでは、もはや経営者とは言えないと思う。

■後日談:予定通り、長崎で日韓優勝チームによる1試合が行われた。来年は、台湾に舞台を移してアジア・シリーズを再開すると言う。存亡の危機にある台湾野球界の情勢を考えると、なぜそんな決定をしたのか理解に苦しむ。厄介ばらいをしたいと言うような気持が透けてみあるようだ。

イチロー、固め打ちの記録|MLB

【2009年7月4日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

昨日もCCサバシアから2安打。今年のイチローは、マルチヒットがやたら多い気がして、イチローのMLBでの全試合を安打別に調べてみようと思った。

で、ちょっとショックだったのはESPNのGameLogというデータで集計しようとしたら、どうしてもトータルの数字が合わなかったこと。他のDATAと突き合わせていくと、何と3試合も記録漏れがあったのだ。2003.6/28、2005.10/2、2007.9/26(ダブルヘッダーの1試合目)の3試合が抜け落ちている。ESPNみたいなメジャーなサイトでもこういうことがあるのだ。

さて、イチローの通算記録を安打別に並べてみるとこうなる。

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イチローは、43.5%の試合でマルチヒットを打っている。1試合あたり1.42本。1安打では物足りない気がするのは当たり前なのだ。ノーヒットの試合はわずか18.8%である。

これを年度別に見てみる。

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262安打の2004年はマルチヒットの試合が49.7%、やや不調だった2005年、2008年は30%台。ただ、2008年でも無安打の試合は19.1%。イチローにとって不振なシーズンとは、ヒットが出ない試合が多いのではなく、マルチヒットの試合が少ないシーズンだといえそうだ。

さて、今シーズンである。ノーヒットの試合は10.1%、そしてマルチヒットの試合は昨日分まで含めて53.6%。1試合あたりの安打数は1.63と2004年とほぼ同じだが、固め打ちの密度はかつてない濃さだ。その上、4月、5月、6月と打率を上げてきている。最多安打262か、打率.400か、何か大記録を成し遂げるかもしれない。

糠喜びは禁物だが、好調に滑り出した7月を注視したい。

■後日談:8月に故障しなければ、イチローは今年はどんな記録を生んだのか、と思わずにはおれない。

イチロー6月.400 日本人選手の6月(打者)|MLB

【2009年7月3日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

野手もDLを出たり入ったりする選手が多い中で、6月はイチロー一人が絶好調だった。

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イチローはついに月間.400にのせた。2001年8月、2002年5月、2004年の5,7,8月、2007年6月に続く7度目。マウアーが間もなく.380越えの数字で規定打席に達することを考えれば、ここで調子を落とすわけにはいかない。首位打者争いの最初の関門は7月だろう。

城島は復帰したばかり。このままいけば昨年をさらに下回るSTATSで終わりそうだ。

松井秀喜のこの数字は、DHがない交流戦が多かったとはいえ、レギュラー落ちを意味しているだろう。去年は6/24にDL入りしている。

松井稼は、6/16にDL明け。昨年は反対に6/22にDL入りしていた。コンディションさえ維持できれば実績は残せると思うのだが。

そして福留。去年はこの時期、まだそこそこ打っていたのだが、今年は1ヶ月でたった14安打。昨年8月(83打数16安打)、9月(45打数8安打)に近いレベルだ。ピネラにまた「顔も見たくない」といわれそうだ。7月早々本塁打を打ったが、7月はまさに正念場だ。

■後日談:今年のマウアーが、スケールアップしていることにまだ気が付いていなかった。

日本人MLB選手の6月(投手)|MLB

【2009年7月2日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

6月は、日本人投手にとって良い月ではないようだ。昨年も多くの投手が調子を崩している。今年も数字的にはぱっとしない。

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岡島、斎藤の両セットアッパーは、昨日、実に気分の悪い終わり方をした。岡島は、昨日で一気に防御率を落とした。それまでは順調だったのだが。今日のBOSの逆転劇には両投手とも起用されず。松坂は再びのDL入り。復帰は秋になるのではないか。

黒田は数字よりも好投している印象だ。上原は6月にDL明けそして再びDL入り。今度は軽いように思うのだが。そして川上は、打球を体に受けてローテを1回飛ばしている。調子は良さそうだ。

大家は、先発に回って1度好投、2度失敗。もう1度くらいチャンスはあるだろうか。

高橋建は、マイナーに落とされるような数字ではなかった。残念だ。復帰が望まれるところだ。

記事投稿後、上原の肘は筋肉部分断裂の重傷であることがわかった。2か月は復帰できないようだ。

■後日談:上原は、ここで今年のシーズンを終えてしまった。2010年の復活はなるのだろうか?

マック鈴木復活!独立リーグの日本人選手|MLB

【2009年7月1日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

独立リーグは5,6月から本格的に動き出す。アマチュアドラフトが終わり、新人が入団するとともにMLB機構からはじき出される選手が独立リーグへと流れるのだ。

日本人選手の姿もちらほら見られる。まずは投手。

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この4人の投手は同じリーグに所属している。マック鈴木はカルガリー・バイパーズと4月28日に契約した。正直、日本でも通用しなかったし、もう限界かと思ったのだが、セットアッパー、クローザーとして素晴らしい活躍だ。チームメイトの長坂はいろんなチームのトライアウトを受けていた。こちらは先発だが、まだ結果を出せていない。マック鈴木34歳、長坂31歳である。

少し前に紹介した伊良部と三澤は、あれから好投している。

今、独立リーグでプレーしている野手は、探した限り1人だけのはずだ。

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この選手は外野手。詳しい経歴はわからない。今のロースターからは外れており、解雇されたようだ。マイナーも含めて、日本人の野手、打者はアメリカでは投手ほど通用しない、ということなのだろうか。少々残念なことだ。

■後日談:不景気は独立リーグの存続にも影響を及ぼしそうである。

 

田口が元気だ!日本人マイナーリーガーの6月 野手編|MLB

【2009年6月30日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本人マイナーリーガー、野手のSTATSである。

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4/16以来試合に出ていなかった田口だが6月に入ると復帰し、好打を連発した。外野のポジションを獲得する勢いだ。もうコーチになるんじゃないかと思っていたのだが、40歳、死んでいなかった。カブスの外野は厚いが、可能性はあると思う。

角盈男の長男、一晃は、AAAからAA、そしてRkに落ちている。基本から出直すということか。MLBの評価はドラスティックだ。

大阪出身の島袋は、1Bで今年もRkから。

そして、今年のアマチュアドラフトで14巡目412番でWASから再指名された鷲谷修也は、WASと契約。外野手で7月にはマイナーの試合に出る。田中将大のチームメイトだったこの選手がどこまで通用するか、楽しみである。

日本人野手はアメリカでは通用しないケースが多い。特にパワーが大きな壁のようだ。鷲谷、そして他の野手にも頑張ってもらいたい。

■後日談:田口は最後にはカブスのロースターに名を連ねた。見事である。

高橋建えらい!日本人マイナーリーガーの近況 投手編|MLB

【2009年6月30日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

6月のアマチュアドラフトが終わると、マイナーではルーキーリーグが始まり、活発な動きがみられる。同時にMLBに上がる選手、落ちてくる選手、浮沈もみられるようになる。まずは投手。

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MLBではDL入りが相次いでいるが、マイナーは元気だ。薮田、藪ともにセットアッパーとして数字を残している。前川は先発を外れピリッとしない。井川はもう堂々たる主戦投手である。小林雅は、MLBにいるのが不思議なSTATSだったが、マイナーでもぱっとしない。

そして、大きな成績の下落もないのにチーム事情でマイナーに降格した高橋建。降格するや否や2試合をピシャッと押さえた。腐らずに頑張る。いい男である。今年は絶対に優勝しなければならないNYMにとって、必ずや再び必要とされることがあるだろう。

田澤も堂々たる成績を上げている。安定感がある。

トピックスは、シーズンが始まってからBALと契約した田中良平。千葉のドラフト1位だったが、昨年戦力外通告を受けてアメリカで再起を図っていた。サイドスローの右投げ。これまでは制球難が課題だったが、AAでクローザーとして見事な活躍。27歳。この活躍が続けば、後半戦にMLBに顔を出す可能性さえあると思う。

ブースは打線に捕まっている。須田は昨年同様ルーキーから再スタート。今年日生三高からATLに入った山林はオーストラリアの教育リーグから帰ってきたはずだが、ロースターには名前がない。やや気になるところである。

■後日談:マイナーを丹念に見ていくと、選手の資質がかなりわかってくる。続けたい。

イチロースランプ知らず|MLB

【2009年6月29日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

打者のスランプの定義はいろいろあるだろうが、端的にいえば「ヒットが出ない」ということだろう。でも1試合や2試合出ないでスランプとはいい難い。3試合連続でヒットが出なければスランプだ、と定義してみる。

イチローの1300試合を超すMLBのSTATSを見ていく。印象では、スランプは結構あったように思ったのだが、

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わずか9回しかなかった。無安打の最長は5。どんな強打者でもシーズンに1、2度は5試合くらい無安打の試合があるものだが、イチローは8シーズン半で1度だけである。いかに密度高く安打を打っているかがわかる。

さらにスランプの前後3試合の記録をとってみると、イチローのスランプからの立ち直りの早さもわかる。

昨年はイチローにとっては「裏年、不作の年」だったのだが、それでも3試合以上の無安打試合はなかった。固め打ちこそ少なかったが、コンスタントに安打を打っていたのだ。円熟の境地を感じる。

実は2試合連続無安打でさえも昨年の8月13、15日以来ない。しかも今期になってからは、無安打試合さえ5試合しかない。そのうち1、2試合で安打が出ていれば、とてつもない連続試合安打の記録が出ていたはずだ。

一昨日から始まったLAD戦、好調な投手との対戦が続くが、すごい勢いでヒットを量産している。ESPNのProjectedでも、今期の最終は253安打となっている。8試合欠場しているのに262安打に次ぐ記録である。

気がかりなのは、イチローの3試合連続無安打記録が最も多く出ているのは、4月とともに7月だということだ。ベテランの域に達しているから、コンディション調整は万全だろうが、息切れしないことを望む。

■後日談:2試合連続無安打なしと言う記録は、終盤に途絶えたが、今年のイチローは好調を維持した。

伊良部と三澤の近況|MLB

【2009年6月27日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本でも一部報道されたが、5月に開幕した米西海岸の独立リーグゴールデンベースボールリーグ、ロングビーチアルマダで、伊良部が先発投手として投げている。読売で長らく中継ぎを務めた三澤興一も同じチームで頑張っている。後で知ったのだが、このチーム出身者にはSEAのヤクバゥスカスがいる。しかし、25人のロースターにMLB出身者はほとんどいない。レベルは決して高いとは言えない。

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三澤は2006,7年と野球をしていなかったが、2008年独立リーグのノーザンリーグ、ゲーリーラりキャッツで29試合7勝1敗6SV2.29の好成績を残し、クローザーとして入団した。しかし開幕2戦目から3試合連続で救援に失敗した。調整期間を経て6/16にセットアッパーとして復帰、2試合を押さえたが、6/24リードされている場面で最終回に登板して再び失点している。苦労しているという印象だ。

伊良部は6/5のYuma戦で先発、5回を投げ6安打を打たれるも勝利投手となる。次の試合7回1自責点と好投したが、その次は打ちこまれた。このレベルでこの成績は、何とも言えない。これを踏み台にMLBを目指すとは今のところ思えない成績である。

気になるのは、伊良部自身が野球を楽しんでいるのかどうか。独立リーグは、ビジネスというより「野球を続けたい」という気持のプレイヤーが多いと思うので。

■後日談:伊良部はアメリカと日本の独立リーグを少しつまみ食いしただけで、今年を終えた。楽しくなかったのだろうか。

イチロー、史上最強のシングルヒッター その2|MLB

【2009年6月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

シングルヒットの通算記録を並べてみると、ほぼ通算安打と同じ顔ぶれが続く。

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ピートローズ、タイ・カッブという安打、1、2位が単打でも同じ位置を占める。中で抜け落ちているのが長距離打者。バリー・ボンズ(2935安打)、ベーブ・ルース(2873安打)、ルー・ゲーリッグ(2721安打)らである。彼らの安打数に占める単打の割合は50%台なのだ。対象的に単打比率が高く、上位に来ているのがウィリー・キーラー、ロッド・カルー、サム・ライスなどの「安打製造機」である。中で単打比率が80%を超えているのは、ともに40年代~60年代にかけて活躍したネリー・フォックス、リッチー・アシュバーンの二人である。

イチローは今、1547単打の168位。しかし、フォックス、アシュバーンに近い比率で単打を量産している。その点では同系の選手に見える。しかし、イチローはフォックス(.288)、アシュバーン(.308)よりもはるかに打率が高い。スケールが違うというべきだろう。

実は単打率がイチローよりも高い選手は掃いて捨てるほどいる。多くは、長打が打てないだけでなく打率も低い、いわゆる「守備の人」である。イチローほど打率が高くて、しかも単打を打ちまくる選手は、1世紀前はともかく、今はほとんどいない。その点でも異能というべきだろう。

あと5年、40歳までほぼ同じペースで単打を打ち続ければ、歴代ベスト10に入る。わずか14年で、である。これを偉業と見る人は少ないかもしれないが、一つの金字塔なのは間違いがない。

■後日談:多彩な物差しで測れるところに、球技、とりわけ野球の面白さがある。単打に光を与える評価があっていいと思う。

イチロー、史上最強のシングルヒッター その1|MLB

【2009年6月23日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

昨日、96本目のヒットを打って、イチローは再びギアがトップにかかったような感じである。ESPNには、ProjectedというSATSがある。このペースでいけばシーズン何安打するか、というものだが、これを見るとシーズン242安打するという計算になっている。200本は軽く超えそうである。

これとともに、地味な記録だが注目すべきものがある。それはシーズン単打記録である。イチロー、3度目の200単打なるか。

実はシングルヒットの世界では、イチローはすでに圧倒的なレコードホルダーである。

ICHIRO-SINGLE01

左側のシーズン最多単打の記録。イチローの周辺にいるのは、ほとんどが100年以上前の選手である。ウィリー・キーラーも、ロイド・ウエィナー(ビッグポイズン)も伝説の選手だ。そして、その中でもダントツの記録を積み上げているのだ。イチローのバッティングが、いかに特異なものかがわかる。

デビュー以来の記録でも、2003年を除き単打王の記録を保っている(2003年にイチローを破ったホアン・ピエールはイチローに次ぐシングルヒッターではある)。

現在は、OPSというSTATSが幅を利かせ、単打よりも長打が良いとされ、安打と同じくらい四球の価値があるとされる時代だが、ここまで単打を打てば、文句はないだろうという気がする。イチローの安打数は大部分の選手の安打数+四球よりも多いのだ。

今年はESPNのProjectedでは、190安打の予測だが、もう少し短いのも打ってほしい気がする。

■後日談:イチローなかりせば、ジーターが単打王と呼ばれただろう。

高見山=東関引退で思ったこと|NPB

高見山の時代

 

野球とは関係のない話から切り出すことをお許しいただきたい。

6/19に元関脇高見山大五郎の東関が年寄り定年を迎え、角界から引退した。私は現役時代の高見山が死ぬほど好きで、その土俵を毎日毎日心臓をバクバクさせて見入っていた。きっかけが何だったのかはわからないが、たまたま熱心に中継を見出した1972年7月場所で優勝したことから、寝ても覚めてもという状態になったのだ。

大きな上体の下に実に細くて貧相な下半身がついている。その重たい上体を前傾させて、まるで重連の機関車が通過するように前に出るだけが高見山の相撲だった。少しでもいなされたり、懐に入られたりしたらまずダメ。小兵力士に弱くて、鷲羽山や旭国にはぶん投げられたり転がされたりしていた。ただ、横綱輪島には強かった。ノド輪をかまされると横を向く癖のある輪島ののど元にガシっと太い掌をあてがい、あとはひたすら前に出るだけ。輪島は前ミツを必死に探るうちにずるずると下がって土俵を割ったものだった。

このお相撲さんは、ハワイから連れてこられた。その以前から外国人力士は何人もいたが、長続きはしなかった。荒岩マーチンのように実力のある力士もいたが、結局閉鎖的で上下関係の厳しい相撲界に耐えられず、早々にやめていったのだ。

高見山を連れてきた横綱前田山の高砂は、彼を甘やかすことなく日本人と同じ生活をさせた。一方で高砂部屋の実質的な創業者の四股名「高見山」を与えるなど、常に目をかけていた。引退したばかりの振分(横綱朝潮)や前ノ山、富士桜などの励ましもあり、高見山は多くの日本人力士よりも長く土俵に立った。優勝もし、金星の記録や勝利数の記録も作った。

しかし、その高見山をして大関に昇ることはなかった。その当時は「これが外国人の限界」だと思ったものだ。昭和40~50年代、大相撲は野球に次ぐ人気スポーツだった。毎年春場所には百数十人の新弟子が集まった。数だけでなく、質も高かった。故先代貴乃花は、オリンピックの水泳選手になろうかという人材だった。北の湖は小学生の頃から身体能力の高さで注目されたが、知力の面でも抜群だった。後に関取として名を成すものは、相撲教習所の成績も良かった。要するに、当時の相撲界には上質のアスリートが入ってきていたのだ。

 

「外国人力士」というビジネスモデル

 

高見山の拓いた道を後進が続いた。小錦は、その非常識な体のサイズと意外に粘っこい下半身で日本の力士の脅威となった。曙は、「下半身がしっかりした高見山」という感があり、その破壊力で横綱まで登った。しかし、当時は相撲を「“重心の低さ競争”から“格闘技”に変えた」千代の富士がおり、その後継者としての二代目貴乃花がいた。日本人と外国人の拮抗した覇権争いは見ごたえがあった。

相撲界の変質は、その時期(平成初頭)からはじまっていた。「分離独立を許さず」という厳しい掟で結束していた出羽の海部屋が独立を許容するようになったことも契機となり、小さな部屋が乱立するようになった。小さな部屋には小さな谷町=スポンサーがつく。その多くはパチンコ、飲食店主、そしてはやりのベンチャー企業。これまでの相撲部屋の谷町=三井、住友、サントリーなどの大企業は、親方に「相撲界の伝統」を教え、健全な経営者としての品格、モラルを求めてきたが、彼ら新興スポンサーが若い親方に説いたのは「てっとり早い成功」である。「ビジネスモデル」を創案し、そこにもてる経営資源を注入して成功する。自分たちと同じ道を歩むことを求めたのだ。

当時の相撲界のおける「ビジネスモデル」とは、「外国から力士を連れてくる」ということだった。当時すでに相撲協会は外国人力士を「1部屋1人」と規制していた。しかし、おもに旧共産圏から連れてこられる若者は、例えばその国のレスリングのチャンピオンであり、蒙古相撲の名門の子弟であり、一級のアスリートだった。たとえ番付の最下位から相撲を取ったとしても、関取(十両以上、750人中80人以内)になる可能性は高い。関取ができれば部屋は潤うし、弟子は増える(=養育費と言う名の収入が増える)。旭鷲山を端緒とするモンゴルや東欧圏の力士の増加の背景には、こうした動きがあった。モンゴルなどでは有力な若者の周辺にはブローカーの影があり、裏で金が動いているという噂が絶えなかったが、多くのスポンサーはこれを「投資」と心得て資金援助をしたのである。

こうして連れてこられた外国人は、「金の卵」である。逃げられては大変だから、お客様として遇する。「相撲界の慣習を教え込む」どころの騒ぎではない。わがままは聞く、甘やかす。先輩力士たちが付け人のように気を配るのが通例となった。

 

大相撲、衰退の危機

 

朝青龍の出現以後、相撲界は大きく変質した。横綱、大関の大部分を外国人力士が占め、日本人優勝力士も栃東以来出ていない。新興部屋では協会から支給される養育費ほしさに、手当たり次第に新弟子をあさるようになった。その一方で、身体能力や知力の高いアスリートは相撲界に魅力を感じず力士を志向しないようになった。日本人力士と外国人力士の格差は広がるばかりである。

乱立する部屋は、若い親方が一人で切り盛りしている。金儲けには熱心でも、力士の行儀作法やモラルを教える意識は希薄である。一門の紐帯は弱まっている。モラルハザードはこうした中で次々と起こっているのだ。

関西で熱狂的な支持を得ている夕方のバラエティ番組「ちちんぷいぷい」は、開始当初、無謀な賭けだと言われていた。当時、15:00から18:00の時間帯は大相撲中継が圧倒的な視聴率を稼いでいたからだ。今は完全な昔話となってしまったが。

相撲界の長期低落傾向は、相撲部屋と言う構成要素が腐敗していくなか、指導者層が何ら有効なビジョンを打ち出せなかったことで進行した。真因は顧客に魅力的な姿を提示することなく、既得権益に胡坐をかき、その体制の安定のみをひたすら求めてきたことにある。大相撲はこのままフェードアウトする可能性さえはらんでいると思う。高見山の東関は、今の外国人隆盛の相撲界を複雑な思いで眺めているのではないか。

 

NPBはもって他山の石となせ

 

さて、この相撲界と同じような状況を迎えているのが、台湾のプロ野球である。人気浮揚策として外国人選手を招き、布雷(ブリト)、雷鵬(レイバーン)などの派手な名前を付けて売り出している。外国人選手は活躍しているが、肝腎の台湾人選手はパッとしない。観客動員も落ち込んでいる。なぜなら、機構全体が弛緩し、衰退しているからだ。前年に球団ぐるみでの八百長が発覚した米迪亜球団が追放され、その余波で中信球団も撤退。モラルハザードの深刻化にともなって、入場者数は急落し、王建民など優秀な人材はMLBやNPBに流出した。見せかけの人気取り以外の政策を打たず、個々の球団の足の引っ張り合いにまかせて、台湾球界としてのビジョンを全く打ち出せなかった首脳陣の責任は大きい。WBCでも中国に負けるなど惨敗した。

 

NPBは、相撲界や台湾野球を対岸の火事と見るべきではない。組織トップが明確なビジョンを打ち出すことなく、小手先の人気取りや姑息な足の引っ張り合いをしている状態は、それほど変わりがない。プロスペクト投手田澤がMLBに流出したのは、衰退の始まりだと見るべきだ。MLBへの選手流出防止策に頭をひねる暇があったら、NPB機構全体の見直しと、明確な将来ビジョンを打ち出すべきだ。

地上波での放送時間の縮小は、日本人がNPBを見はなしつつあることを意味している。北海道や福岡、千葉などフランチャイズでは地道な営業活動が実を結び、強固なファン層が根付いている。しかし、読売や中日など旧弊な「男芸者的」球団経営を行うチームがNPBで大きな発言権を有しているのも事実だ。彼らは、MLBの放送を制限し、人材流出を制度面で規制することでNPBを守ろうとしている。愚策というしかない。

先日の朝日新聞のインタビューで、ジャーナリストの古内義明氏はNPBの将来を明るくするためには、MLBの進出を阻害するのではなく、NPBをMLBに負けない魅力的な組織、イベントにするために、経営を強化することだと説いていた。本社から来たサラリーマン経営者ではなく、スポーツビジネスをしっかり学んだエキスパートによって新しいNPBを創出するべきだと言っていた。まったく同感だ。

大相撲、プロ野球がTVメディアで色あせる中、TV番組は低俗化の一途をたどっている。つまらないパスタイムを救うためにも、NPBの体質改善を求めたい。

■後日談:この九州場所の恐ろしいような不入りを見ても、NPBを巡る不景気な話を聞いても、「お茶の間スポーツ」の大きな曲がり角を感じずにはおられない。

SEAのドラフト上位指名選手|MLB

【2009年6月20日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

SEAの他の上位ドラフト指名選手も列挙しておこう。

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高校生は残念ながらSTATSが公表されていない。だからMLBレポートを読むしかできないが、NフランクリンはBOSのバリテックの後輩であり、小柄だがパワーを秘めたスイッチヒッターのSS、肩は強くないが敏捷だということだ。

Sバロンは、無名のファーガソン高校出身。キャッチング、敏捷性に優れた捕手であり、肩も良い。打撃、走塁は標準と言う評価だ。

2巡目51位指名のジョージア大Rポイスレスは、父のリチャードも南ジョージア大学で鳴らしたSSで1973年にはCHCから26巡目589位でドラフトにかかった。父はプロには進まなかったが、息子はこの高位の指名を受けるのではないだろうか。大学2年目からパワーヒッターとして頭角を現した。試合数を大きく上回る打点が魅力。太めでスピードはないが、ミートがうまい強打の右打者である。

アックリーの項で紹介したACCのベスト10にも入っているが、3巡目82位で指名のカイル・シーガーはアックリーとともにノースカロライナ大学の主力だった内野手である。シュアな左打者。ただパワーでポイスレスに一歩及ばないことがこの評価となったと思われる。50巡目1500人が指名されるアマチュアドラフトでは、この順位も相当高い。

さて、よくわからないのが4巡目ジェイムズ・ジョーンズである。ロングアイランド大学はニューヨークにあるマンモス大学だが、過去のMLB選手はテリー・クロウリー1人だけだ。そしてこのチームは今年、所属するリーグ(NEC)で最下位である。で、ジョーンズはこのチームの先発投手であり、1番打者なのだ。ネットで検索すると投球シーンと打撃シーンが両方出てくる。STATSを見ればどう考えても俊足強打の外野手と言う感じなのだが、記事を読むと投手としての評価も高い。クレメンスだのムシ―ナだのと比べられている。黒人らしいしなやかさがあって、いかにも才能の塊と言う感じだが、SEAはどう扱うのだろうか?

 

レベルにバラツキのある学校が対戦する高校の成績はあてにならない。高いレベルの選手が競う大学での数字こそデータとして有効だという考えが浸透して、今やドラフト指名は大学生1000人に対して高校生は500人である。選手寿命が延びる一因にもなっているだろう。

アメリカの大学野球と比較していつも思うのは、日本の大学野球の公式戦の少なさである。アメリカが2~6月に70試合前後を戦うのに対し、日本は春秋のリーグ戦を足しても30試合、社会人対抗や神宮大会などを入れても40試合に届かない。こんな試合数では実力を正確に知るのは難しい。その上、試合の日程が空いているから投手のローテーションも確立しない。全国から優秀な人材を集めておいて、多くの選手はろくに試合に出ないままキャリアを終えることにもなる。

アメリカの大学野球の選手の多くは、野球のシーズンオフにはバスケットやアメフトなど他のスポーツに熱中する。その分野でドラフトにかかることも多い。野球だけでなくとにかく実戦経験が豊富なのだ。日本の大学野球の選手は、年がら年中野球(の練習)漬けになりながら、試合経験を十分に積むことができない。エネルギーの無駄遣いのような気がしてならない。

■後日談:野球と言うスポーツは数戦ではその真価が分からないと思う。少なくとも年間50試合はしないと数字は信頼できない。

SEA1位アックリーという選手|MLB

【2009年6月19日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

全米最古の公立大学であり、アメリカの指導者層を多く輩出しているノースカロライナ大学から、今年ドラフト1巡目2位でSEAに指名されたダスティン・アックリー(1B、OF)は、ノースフォーサイス高校時代から期待された逸材、大学1年目から4割を打ち、注目された。

アックリー

1年目打率2位、2年目2位、3年目の今年首位打者に輝いた。ドラフト前はストラスバーグとアックリー、どちらが指名1位を獲得するかと噂されたのもうなずける。

レポートによれば確実性とパワーを兼ね備えた打撃に加え、走塁にも見るべきものがある。トミー・ジョン手術をしているが、肩もある。1塁手よりはセンターでいくべきだということだ。

ノースカロライナ大学が所属するアトランティックコーストカンファレンスは、NCAAでも有力なリーグの一つ。打高投低で最近は毎年4割打者が2~3人は出るが、3年連続の4割は傑出している。ちなみにアックリーの前年に首位打者になったフロリダ州立大のバスター・ポージーは2008年のSFに1巡目5位で指名され入団している。

2009年度のアトランティックコーストカンファレンスの打率ベスト10を紹介しておこう。なお大学のSTATSと異なっているのは、大学がリーグ戦以外の試合も公式記録に入れているためだと思われる。

アックリー2

アトランティックコーストカンファレンス(ACC)で上位の成績を上げれば、かなりの指名順位でMLBアマチュアドラフトに指名されることが分かる。

 さて、強欲ボラスは、このアックリーにも5000万ドル近い契約金を要求するようである。しかしSEAは、年俸合計1億ドルを超える金満球団だから(無駄遣いも多いし)、条件次第では支払う可能性もあるだろう。Kグリフィ、A-RODに続くスーパースターを作りたいSEAには、魅力的な話かもしれない。左打者でもあるし、アックリーは入団すれば早いうちにMLBに上がってくるだろう。

■後日談:アックリー5000万ドルは私の完全な勘違い。500万ドル以下での契約だった。


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最近メディアからいろいろお話をブログにいただくようになりました。迂闊なことに、殆ど対応できていませんでした。ご連絡は下記までお願いいたします。

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広尾晃と申します。

ライター稼業をして、かれこれ34年になります。

2009年1月に、SportsNaviで「MLBをだらだら愛す」というブログを開設、12月には「野球の記録で話したい」を開設。多くの皆様にご愛読いただきました。2011年11月、livedoorに引っ越し。基本的な考え方は変わりません。MLB、NPBの記録を中心に、野球界のことをあれこれ考えていきたいと思います。多くの皆様に読んでいただきたいと思いますが、記録や野球史に興味と尊敬の念を持っていただける方のサイトにしたいと思います。特定の球団のファンの方も大歓迎ですが、「ひいきの引き倒し」的な論調には与しません。

広尾晃はペンネーム。本名は手束卓です。ペンネームは、小学校時代から使っていました。手束仁という同業者がいるので、ややこしいのでこの名前で通しています。ちなみに手束仁はいとこです。顔もよく似ています。
私が本名を隠しているかと勘違いして、恐喝のようなコメントを送ってくる犯罪者まがいがいるので、あえて公表します。


2012年11月「クラシックSTATS鑑賞」を独立したサイトにしました。

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