野球の記録で話したい

Baseball Stats Lounge

ノムさんの満たせぬ思い|野球史

2009319日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

スタジアムの前に、緑のリンカーンコンチネンタルが止まっていたら「あ、ノムさんもう来てる」と思ったものだ。夫人が運転する、この板チョコのような車で球場入りする。縁起を担いで同じ場所に止める。夫人は勿論、サッチーではない。

昭和40年代、南海ホークスは野村克也のチームだった。昭和48(1971)年、プレイングマネージャーとしてチームを優勝に導く。日本シリーズは長嶋茂雄抜きの巨人に敗れ去ったが、あとから思えば、これが南海ホークスの最後の輝きだった。この頃までの野村は、監督であり、4番であり、捕手であり、何重にもチームの要だった。そしてこの時期までは、それに見合う数字を残していた。球場で見る野村は、背も低くて風采も上がらなかったが、「ぶあっ」というそのスイング音の凄さだけは他を圧していた。

野村南海が崩れはじめたのは、優勝の翌年くらいからだ。故障とスランプのために打率.211、12本塁打しか打てなかったのに、監督野村は選手野村を4番から外さなかった。ぐんぐん伸びてきた門田博光との確執も取りざたされた。「あいつはぶてとる(ふてくされている)」という生々しい声が新聞に載ったりした。選手野村はその後持ち直し、40歳を過ぎても驚異的な成績を上げていたが、チームは早々にペナントレースから離脱するようになった。

そんなある日、野村の監督解任が発表された。表ざたの解任理由は覚えていないが、マスコミは不倫と、その愛人(サッチー)による公私混同を書き立てた。

物心ついてから野村南海一筋で応援してきた私は、世の中の楽しみの半分が失われたような気がした。その時の落胆を、今でも頭の中で再現してみることができる。

野村はすでに40歳を過ぎていたが、現役にこだわり、ロッテに移籍した。野村の存在がいかに大きかったかは、そのときのロッテのレギュラー捕手だった村上公康が、その報を聞くや引退してしまったことでもうかがえる。

「生涯一捕手」としてさらに数年の現役生活を過ごし、46歳で引退。5歳も年下の王貞治よりも1年あとだった。前人未到の3000試合出場、10000打数は、野村の執念を表していた。

 

野村は引退したとたんに中年を飛び越して年寄りの顔になった。彼が球界復帰するまでには9年の月日を要した。盟友といわれる森昌彦は「野村を起用しないのは球界の損失だ」とまで言ったが、球界はその公私混同的な体質、とりわけ新夫人サッチーの怪しげな動きを敬遠したのだろう。

平成2(1990)年、ヤクルトの監督に復帰した野村は、東京弁も板に付き、いくらか明るくなっていた。これ以後ほぼ20年にわたって監督稼業を続け、今では名選手と言うより名監督として名前が知れ渡っている。齢70歳をとっくに過ぎて、まだ引退の2文字は口にする気配がない。

 

これほどの大人物になりながら、野村は常に世の中に対して拗ねたような発言を繰り返している。そして誰かに対する嫉妬の混じった批判をたびたび口にする。その対象はときにONであり、星野であったりするが、今はホークスのはるかに後輩に当たる城島だ。その批評は的を射ていることも多いが、70歳を超えた老人が、今、ことさらに言わなくてもよいのに、と思わせることも多い。

 

あの南海監督解任事件以後、野村の心にはどうしても満たされないものがあるのだろう。「月見草」発言は有名だが、誰からも祝福されて身を引くような体験を一度もしてこなかった野村には、輝けるもの、正しく見えるものへの反発心が今も黒い炎となって燃えているのだろう。

救いは、今の野村の発言には、常にいくばくかのユーモアが含まれていることだ。現役最晩年、西武に在籍した野村は、テレビマンユニオンの萩元晴彦の取材を受けたが、このときのインタビューは、テレビカメラを前にした人間とは思えない陰惨なものだった。その頃から比べれば、野村は彼なりの処世術で、発言の角を丸め、ユーモアで締める技を身につけた。

おそらくは、野村は自分の難儀な性格に苦笑しながら、“問題発言”を繰り返しているのだ。自分で自分の人生を嗤っているのだ。私はこれも一つの絵だな、と思い、野村ウォッチングを続けている。

■後日談:今年、楽天を勇退させられた野村だが、この人の半生、とりわけ現役時代にはもっと光があたっても良いと思う。

島村アナはいいなあ|野球報道

2009318日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

J-SPORTSで弟子の節丸アナとともにWBCの実況(スタジオだが)をしている島村さんは、昭和16年生まれだから68歳。いつも落ち着いた静かなトーンで淡々と試合を伝えてくれる。ポイントでは、声を張り上げ、動きをきちっと伝えてくれるから、耳から聞くだけでも試合の状況が伝わってくる。

今の地上波のアナウンサーは、まるで黙っていると自分の存在意義がなくなるかのように、ずーっと高いテンションでしゃべりまくる。昨日のキューバ、メキシコ戦などは、日本人にとってかかわりのある選手が少なかったから、元オリックスにいたカリム・ガルシアに打席が回るとやれ嬉しやと経歴を連呼し、清原にも「応援している」といわせる始末だ。高いテンションは見せ場だけにしないと、耳で聞いてもほとんど試合経過が分からない。局でそういう教育をしているのだろうが、みんな古館みたいになって、鬱陶しくて仕方がない。しかも野球が好きというわけでもないようで、知識も浅いからどんどんぼろが出てくる。

島村さんはNHKを離れてから、寸鉄のようなコメントもする。ホームインのシーンを映さないアメリカのカメラワークを批判したり、だらけた試合運びを皮肉ったり。それもほんの少しユーモアを交えて。芸になっているのだ。

当たり前の話だが、視聴者が見たい、聞きたいのは試合の状況である。アナウンサーがそれを何に例え、どう盛り上げるかなんて、ついでのことである。そのことを弁えた放送が、地上波ではほとんどなくなったのは悲しいことだ。

良い魚は切れる包丁で引いて、少し下地をつけてワサビを添えて食べるのがうまいのだ。どんな高級魚でもケチャップをかけまくっては台無しだ。

■後日談:野球報道について記事を上げると、予想外の反響をいただいた。この部分に不満を持つ人が非常に多いのだ。引き続き1項を設けて適宜追いかけていきたい。

 

MLB日本人選手消息0316|MLB

2009316日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】 

WBCに夢中になりつつも、今年のMLB日本人選手たちの消息が気になるところである。日曜日までの集計表を作ってみた。

まずは投手から。

SPRING0317-P

オープン戦が始まって2週間だが、マイナー契約の招待選手はあらかた行き先が決まってしまっている。昨日限りで大家と高橋が落ちた。薮田の情報は確認できていないが、まだ残っているのか。

井川の好調が光るが、よほど抜群の成績を残さないと、ギリギリの線までいくとしても落ちるだろう。今、各チームの陣容を見ているのだが、ヤンキースの投手順には井川の入る余地はそんなにないと思う。

MLBですでに実績を残している選手はまずます。上原は一度打ちこまれたが、次でそこそこの数字を残せば大丈夫だろう。BOSの田澤は学生相手の試合も含まれるので割り引くべきだ。BOSの投手陣は、タレントがそろっているので、常識的には、AAからのスタートとなろう。

野手の多くはWBCに参加しているが、

SPRING0317-B

松井稼のスランプがやや長引いている。松井秀は何とも言えない数字だ。A-ROD故障を受けた4番争いは、ポサダがリードしている状況だ。

田口が頑張っている。マイナーの招待選手ですでに40歳。これで開幕に残れたら本当にすごい。

こうしてみると、今WBCに出ている選手は、揺るがぬ地位がある一部の選手だということがわかる。他国には、WBCから帰ってきたらポジションがなかった、などという選手もいると思う。WBCは、まさに今年のメンバーを決定する最も大事な時にやっていることがわかる。

機構側としても、何らかの整合性のあるシステムを設けないと、WBCとMLBは両立しないだろう。

■後日談:スプリングキャンプとレギュラーシーズンの関係については2010年も追いかけていきたい。

日韓のWBC 野手編|WBC2009

【2009年3月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本は負傷で村田を失ったが、すぐに栗原を補強した。結果的に栗原は活躍しなかったが、もう数試合あれば実績を残したはずである。日本には、このメンバー以外にほとんど力の落ちない選手が、もう1チーム分以上いる。その層の厚さはMLBに匹敵する。

対照的に韓国は、一握りの選手は日本を上回る実力を有しているが、残りはかなり落ちることを露呈した。

野手の比較である。

B

日本の打線は、レギュラーと控えの差がほとんどない。これはSTATSを見ても明白だ。それに対し、韓国ではレギュラークラスでさえも全く不振のままに終わった選手が散見される。これは、通用しなかったと見るべきではないか。特に捕手である。韓国の捕手すべての打撃は、27打数2安打.074の1打点。城島を中心とする日本は.305の4打点である。韓国の捕手朴勍完(パク・キョンアン)や姜珉鎬(カンミンホ)は、自国では屈指の強打者だが、全く振るわなかった。

韓国は上位こそ強力だったが、打線にいくつか穴が開いていたのだ。日本の投手は、ここで一息つくことができた。日本の下位打線は、韓国にとって息抜きどころではなかっただろう。

日本は、数人の打者に絞り込んで対策を練り、強力打線を封じ込めることができたのだと思う。

特に、金泰均(キム・テギュン)への対策は、きわめて周到だったと思う。

   日韓5戦での金泰均の打撃成績

    3/8  3打数1安打2打点 1本塁打

    3/10 4打数2安打1打点 1二塁打

    3/18 2打数1安打 2四球

    3/20 3打数無安打 1四球

    3/24 3打数無安打 1四球

 金泰均が空を見上げるシーンが増えていったのである。

韓国の野球は、日本を手本として進化してきた(認めたがらないだろうが)。素材的には日本を上回る選手も多く出て、ある部分では日本を上回っている。しかし、総合力のぶつかり合いになれば、まだ日本に一日の長があったということだ。この関係は、NPBとMLBでも言えるのかもしれない。

STATS的にも興味深いWBCだった。

■後日談:金泰均は、すごく楽しみだが苦労するかもしれない。韓国流の野球エリートの彼は日本でいうところの高等教育を全く受けていない。日本の複雑な戦略についていけるだろうか?

日韓のWBC 投手編|WBC2009

【2009年3月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

確かに、WBCには二つのストーリーが並行して進行していた。一つはWBCの複雑なブラケットをよじ登って、頂点に達すること。そしてもう一つは、日韓という野球だけにとどまらない骨肉の関係に黒白をつける争い。今回のWBCのレギュレーションが決まり、3回以上の対戦することが、ほぼ間違いなくなってから、日韓両軍はそれを意識してきたはずである。

意外なほどに他の敵がもろかったために、日韓は眼前の敵と戦いながら、常に互いを意識するようになる。結果として日韓は、5回制の世界タイトルマッチを戦うことになったのだ。

これはまさに総力戦だった。そして、総合力で日本は韓国に勝った。これはSTATSを見れば明白である。

興奮冷めやらぬ今日、この事実を押さえておきたい。

まずは投手陣の比較。

P

すでにこの決勝戦前に、韓国は日本に通用する投手の数が、絶対的に不足していた。最大の誤算は、言うまでもなく金広鉉(キム・ガンヒョン)である。去年夏の日本キラーが全く通用しないことがわかって、韓国は窮地に陥った。それを救ったのが奉重根(ボン・ジョングン)だった。しかし、それに次ぐ先発投手だった柳賢振(リュ・ヒュンジン)を信頼しきれなかったために、韓国の「投」の戦略は単純になった。日本は奉の攻略に的を絞れば良くなったのである。3度目の戦いとなる今日の日本は、奉に球数を投げさせることに徹していた。

さらに、韓国は対戦の前から、日本との真剣勝負では使えない投手がほぼ決まっていた。WHIPが2.00を超す4投手は、接戦となる日本戦では使えない。さらに、対戦が煮詰まってくるとともに「冒険はとてもできない」というムードが高まりSTATS上は良くても、右の技巧派の尹錫珉(ユン・ソクミン)は出せない。そんな風に首脳陣の頭が凝り固まってきたのだと思う。結果的に、抑えの林昌勇(イム・チャンヨン)までつなぐストーリーが極めて窮屈になっていった。

日本の投手陣で破たんした投手は一人もいない。すべての投手が防御率3点台より上、WHIPも1.50以上である。原監督は、この優秀な投手陣の中でも、さらに絞り込みをかけて、結局先発の3人+杉内に信を託すことにした。同じように投手陣を絞り込んではいたが、日本の方がレベルが一段上だったといってよい。

そしてその4人の投手が期待にこたえた。藤川には気の毒だが、これが正解だったと思う。

特に岩隈は、長いイニングを破たんすることなく投げることで、日本の投手のソロバン勘定を飛躍的に向上させた。MVPは間違いなく彼だと思う。

■後日談:MVPを受賞したことと、松坂の今季の不調、無関係ではないと思う。

 

イチローが帰ってきた、遅ればせながら|WBC2009

【2009年3月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

そういえば、の話ではあるが、イチローは昨日あたりから空振りをしなくなった。ようやくあったまってきたというか、中身が詰まってきたのだろう。今日の最初の打席は結局点にはつながらなかったが、イチローは〝帰ってきた〟のだ。

日本は何度もチャンスを潰した。しかしそれは拙攻というより、韓国の必死の守りに抑え込まれた印象がある。岩隈の出来は素晴らしかったが、韓国は食らいついてくる。意志の力で攻め上げてくる。金泰均は徹底的にマークされたが、あとに続く秋信守、李机浩で追いついた。しかし、岩隈は明らかに力が劣る韓国の下位打線で一息つくことができる。韓国は一度も逆転できず、追いつくのがいっぱいだった。

気負いすぎのダルビッシュによって延長戦にもたれ込んだが、最後は本当に打ってほしい選手が打って、勝利にたどりついた。快勝というべきだ。10回の韓国には、もう反撃する力はなかった。

韓国は明らかにONだった。日本は実力でその韓国を下した。日韓はこれから「普通のライバル関係」にもどってほしい。

こんな試合、平日の昼間から何回もやられては体が持たない。まるで甲子園である。

グランドでは、まるで下手な観光ガイドみたいなアナウンスが、日本語で表彰式を進めている。さあ、日常生活に戻ろう!おめでとう、日本!

■後日談:消耗戦、持久戦を制したという印象、何よりイチローに花を持たせる結果に終わったことがめでたかった。

救いはスピーディな試合だったこと|WBC2009

【2009年3月23日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

USAの弱点は、一向に調子の上がらない先発投手陣だが、日本の打線は二巡目を過ぎた5回にオズワルトをとらえ、決定的な5点を奪った。米は3番ロリンズと7番デロ―サが当たっていたが、ここまで好調だったアダム・ダンとライトが戦意喪失したような打席を重ね、二人で6三振を喫した。ダンの守備は、今日も深刻だった。ライトへ少し速い打球が飛ぶとヒットである。

USAは、強力なセットアッパー陣を擁しているので、追加点は難しいかと思ったが、最終回にエラーがらみで決定的な3点を挙げた。

松坂は、よくMLB中継で見るような「普通の松坂」だった。(ゴロアウトがいつもより多かったが)悪いなりにゲームメイクをし、味方の援護を待つパターンである。イチローも、よくSEAで見るイチローのように、試合の流れとは無関係な存在だった。明日こそ主役になってほしい。

馬原とマッキャン、イチローとシールズなど、名勝負もあって、凡戦ではなかったが、アメリカベンチには「とてもかなわない」というあきらめムードが早々にただよっていた気がする。MLBプレーヤーは、この時期に全力でプレーすることはできないのではないか。

これで、明日、韓国が奉重根、柳賢振という左の2本柱を立てるのに対し、日本は岩隈、ダルビッシュと右の2本柱を対抗させることができる。ことに岩隈は、積極打法の韓国からゴロの山を築くことが期待できよう。

アメリカはプライドを傷つけられたと思う。セリグは次回のWBCを24カ国でやると発表したようだが、足元のMLBの球団、選手との利害調整をきっちりしないと、次回開催も危ういだろう。

■後日談:アメリカの選手の気持ちが切れた瞬間が分かった感じがした。アメリカの選手にとっても、口惜しいことではあったろう。

語り草になる試合を見せてくれ!|WBC2009

【2009年3月22日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本の野球は、MLBへのあこがれを原動力として成長してきたと言ってよい。ほぼ100年前、日本にやってきた「世界周遊野球チーム」を皮切りとして、MLB選手は来日の度に格の違いをみせつけたものだ。日本人は自らの体格、野球技術が大きく劣ることを痛感させられ、努力を重ねてきたのだ。

戦後になって、MLBの一線級の選手が定期的に試合に来るようになったが、それはあくまでオープン戦であって、真剣勝負は一度もなかった。それでも日本側が勝ち越すことは、ほとんどなかった。

2006年、第一回のWBC、第二ラウンドの日米戦は,初めて実現した両国代表の真剣勝負だった。NPBの憲法ともいうべき日本プロフェッショナル野球協約には、NPBの目的の一つを「(2)わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う。」と定めている。その意味では、野球の本家であり、最高峰でもあるUSA代表との真剣勝負は、日本野球が求めてきた究極の舞台だった。この試合はタッチアップをめぐる誤審で後味の悪いものになったが、イチローの先頭打者ホームランあり、A-RODのサヨナラ安打ありで白熱した試合だった。

明日の試合は、2年前のリベンジでもあると共に、100年の歳月を経て日本がアメリカに挑む2試合目であり、NPBにとって最も重要な試合であるといってもよい。

お叱りを受けるかもしれないが、そのあとの決勝戦は、仮に日本が勝ったとしても今大会5試合目であり、日韓二か国の意地のぶつかりあいである。それはそれで有意義かもしれないが、野球史上では明日の試合こそが重たいと思う。願わくば、USAが今日のベネズエラのように、試合開始30分ほどで戦意を失ったりしないように。極端に言えば、アメリカが格の違いを見せつけて快勝してもそれはそれで納得がいく。お互いが持てる力を出し切った、良い試合を見せてほしい。

思えばWBCは、特にPool-B、C、Dであまりにもレベルの低い試合が多すぎた。録画を見るのが苦痛だった。

せめてその集大成である残り2試合が、心に残る名勝負であってほしい。100年前に大学生相手に放ったトリス・スピーカーの本塁打や、70年前の澤村榮治の快投のように、永く語り草となるような試合が見たい。

■後日談:我々は「歴史の証人」になるために試合を見ているのだ。それにつきる。

ベネズエラ、ソーホ監督はあくびをかみ殺していた|WBC2009

【2009年3月22日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

1回表。韓国2番鄭根宇のライトフライをアブレイユがポロリとやって、慌てて2塁へ送球したのを2塁でポロリとやって、それで試合は決まったようなものになった。これまでシルヴァは無失点だったが相手はオランダとイタリア、韓国戦の参考になるものではなかった。

何というだらだらした試合か。試合中にソーホ監督があくびをかみ殺すシーンが何度も出たが、彼らのメンタリティはアジア人とよほど違うのだろう。もう2回の時点であきらめてしまったのだろう。

韓国は7回途中まで尹錫珉が投げたことで、主要な投手をほぼ温存できた。柳賢振は1人に2球だけ投げさせたが、これは実戦感覚をつけさせるためだろう。決勝戦の相手は、奉重根、柳賢振というタイプの違う2枚の左腕エースと対戦しなければならなくなった。

Pool.Aとその他のPoolでは次元の違う試合をしてきたのだ、と痛感させられる。MLBの選手たちは162試合で実力を出すのであって、わずか数試合の真剣勝負では本気になれないのか、とも思えた。

■後日談:呆然とするほどのあっけない試合だった。自国にトップリーグを持たない国は、チーム編成が不可能なのかとも思った。

USA、日本戦力比較|WBC2009

【2009年3月21日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

USAとベネズエラの試合を見ていると、USAの選手の泣き言が聞こえてきそうだ。「寒くて、雨で、仲間はどんどん故障で消えていくし、非難は浴びるし、おまけにこのがらがらのスタンドだ。早くチームに帰りたいよ」。デーブ・ジョンソンはそんなチームを引っ張って、何とかここまで来た。STATSを見ても満身創痍の感がある。

U-P

U-B

投手陣は、STATSの通り、本調子とは思えない先発投手は早々に引っ込んで、あとは多彩な中継ぎ陣でつないでいく戦法である。途中から呼ばれたハンラハンとグラボウがいい働きをしている。球速もある。何回か対戦しないと投手を打ち崩せない日本の打者には、手ごわい相手だろう。クローザーのプッツまでに勝敗が決まってしまう可能性があるだろう。

野手は1次ラウンドのスタート時点とは様変わりした。配置に苦しんで、マッキャンが外野を守ったり、アダム・ダンが1塁に入ったり。ダンの1塁は本当に下手だった。チッパーの代わりにロンゴリアが呼ばれたが、彼が3塁だけを守るとは限らないだろう。ただし、打線は決して悪くはない。ロバーツ、ジーター、ロリンズ、ダン、マッキャンと非常にクレバーなメンバーがそろっている。韓国のような積極性は見られないが、MLBの本当の力を見せてくるだろう。

日本のSTATS

J-P

J-B

ここは松坂に託すのだろうが、USAには松坂を最も得意とするBロバーツ(12打数6安打)がいる。またジーター(12打数4安打)、グランダーソン(9打数4安打)、ロンゴリア(2打数1安打)なども松坂を苦手としていない。大いに不安である。立ち上がりが不安定なら、すぐにつなぐ用意が必要だろう。中継ぎ陣は非常に優秀だから、期待できると思う。ただ、藤川はSTATS上は抑えているが、明らかに球速が落ちている。終盤の逆転劇を経験したUSAにぶつけるには不安がある。

打線のカギはやはりイチローだろう。USAの先発はナの投手が多く、対戦成績は多くないが、特に第一打席でどんなパフォーマンスをするかが、チーム全体に影響するだろう。絶好調の青木に活躍の場を与えたいところだ。

USAは、松坂をじっくり見ていくはずである。特にアダム・ダンは荒い選手のように見えるが、MLB屈指の出塁率を誇る。松坂は四球を重ねて試合を台無しにする可能性もないではない。日本は、先発に決まったオズワルトを3回までに打ちこんで得点をあげ、逃げ切る戦法だろう。回が深まれば、USAが地力を発揮してくる。韓国戦とは頭を切り替える必要があるだろう。

 ■後日談:一番残念だったのは、USAが日本といい試合ができなかったこと。戦意の問題もあるが、調整の遅れが響いていた。

韓国はOFFのままだった|WBC2009

【2009年3月20日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

アジア野球ウォッチャーの佐々木さんが、韓国にはONとOFFのときがあると言っていた。日本戦はON=鬼となって、恐ろしい迫力で攻めるのが常だが、今日はついにスィッチは入らなかったのではないか。

スタメンも相当変えてきて、選手の虫干しをした感があるが、先頭の鄭根宇の速攻など、個々にはがんばりを示したものの、つながりは見られなかった。金泰均の打棒は下り坂のようだ。そして韓国投手陣は、層が薄いことが露呈された。張洹三、李在雨、呉昇桓、林泰勲という投手陣で日本打線に脅威を与えた投手はいなかった。金広鉉も打たれた。韓国打線は次回ステージを今日以外の投手を軸に戦っていくことになる。

日本の打線はここへきて、青木が絶好調となり、稲葉、小笠原、岩村と左がすべて目覚めた。これに城島、イチローが加わって流れができつつあったのだが、痛恨は村田の負傷だ。このシリーズだけでなく、シーズンまで影響するのではないか。栗原が急きょ呼ばれたが、この試合の位置づけを考えれば、痛すぎる。

この試合は韓国の実力を反映するものではない。韓国はベネズエラ戦で再びONとなって戦うだろう。問題は日本がUSAに勝てるかどうかだ。

■後日談:WBCって、こういう戦い方になるんだ、ということが理解できた。構造的には問題のある大会だった。両チームともに全力とは言い難い印象。

1回、1番の差で決まった|WBC2009

2009318日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

両軍首脳も、見る者も、日韓戦は前回同様の重苦しい投手戦になるものと予想していた。両者の戦いは、すぐに膠着してしまうのだ。だから、戦端を開いた直後に点を取った方が心理的に有利になる。先に仕掛けることができる。その思惑も一致していた筈だ。

韓国は、やや不振だった「韓国のイチロー」と呼ばれる李鍾旭を引っ込め、ほぼ同タイプの李容圭を1番に起用した。日本は本家イチロー。極論すればこの二人の1回表の打席の差で決まったと言ってもよい。鉄壁の日本の守備は、三遊間にやや不安があったが、そこも突かれた。立ち上がりのダルビッシュの不安にも付け込んで、決定的な3点を奪われたのだ。韓国のチャンスは、この1回限りだったのだが、それを貪欲にものにした。

感心したのは、金泰均が、ライト前に抜けそうな当たりを3度もゴロにしたこと。データ野球のたまものでもあろう。また、7回に日本戦で火だるまになった金広鉉をメキシコ戦に続き登板させた采配は、敬服に値する。大きなリスクを冒してでも、有力な投手を戦列にひきもどしたのだ。

日本は、投手交代のタイミングを間違えて無駄な1点をやったが、それ以上に、毎回走者を出しながら攻めきれなかった淡白さが情けない。思い切ってバットを振っていないという不満が残った。

キューバには優秀な投手はいない。打者はセぺダが怖いが、あとは恐れるに足りない。早い回に点を取れば、難しい試合にはならない。怖いのは、打者が意気阻喪して攻めきれずに自滅することだ。はじめての背水の陣。好調の選手を右左の別なく出すべき時が来たと思う。

■後日談:原ジャパンの最大のピンチだったが、個人的にはキューバは見切っている感があったので、負けることはないと思っていた。

岩隈の完勝、日本は浄化された|WBC2009

【2009年3月19日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

韓国戦でかけられた呪縛をキューバ戦で解く、日本は再びこのパターンで、瓜二つの勝利を得た。キューバは、前の日本戦で目立たないが最も良い投球をしたマヤが先発、日本は岩隈。岩隈は全く危なげがなかったが、日本も最初は体が固く、マヤを攻めあぐねた。しかし、4回、青木、稲葉の連打を受けた小笠原の一打で呪縛が解けた。センターのセスペデスのエラーではあるが、ある意味で日本の執念が落球させたような当たりだった。昨日の試合では、左打者が3安打を打ったものの封じこまれた印象があったが、今日の8安打はすべて左打者だった。

ことに、イチローの9回の3塁打に思わず快哉を叫んだ人も多かっただろう。長かったという思いだ。

岩隈の今日の投球を、3/15の松坂と比較してみよう。

同じ6回無失点だが、松坂が球数を使いながら力押しに押したのに対し、岩隈は打たせることに徹していた。AIR(フライ、ライナー)のアウトが、1つしかなかったことにそれが表れている。岩隈は5安打されているが、すべて2死から。ランナーを置いての被安打も4回だけ。全く危なげがなかった。続く杉内は、3回をパーフェクト。9つのアウトのうち4つが三振、5つがAIR(フライ、ライナー)。こうもタイプが違う投手が出てきては、キューバは手も足も出ないという感じだった。

会心の試合。開き直るようだが、明日の韓国戦の勝敗はどちらでもよい。勢いのベネズエラ、目覚めたUSA、どちらも手ごわさに変わりはない。松坂を温存して、涌井や内海などを立てても良いのではないか。打線も思い切った積極策で、韓国戦の重い空気を打ち破ってほしい。

■後日談:岩隈の圧巻のピッチングが光った。モノが違うという感じだった。それからイチローが目覚めたことでも記憶される試合だった。

WBCは救われた|WBC2009

2009318日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

9回裏、プエルトリコはUSAを2点をリードしてロメロをマウンドに送った。キャッチャーをモリーナに替え、レフトをボカチカからフェリシアーノにかえて、守備固めにも怠りはなかった。ロメロは2008年も81試合を投げているベテランだが、ビクトリーノ、ロバーツと連打されると、浮足立ち、ジーターは打ちとったもののビクトリーノが3進、ロバーツが盗塁して2、3塁。ここでロリンズを歩かせたところで投手交代。

この時点で、プエルトリコは投手が尽きかけていた。

かわったフェルナンド・カブレラは昨年BOSで22試合を投げているとはいえ、防御率は5点台、一線級とは言い難い。この投手にすべてをゆだねたのだ。次打者はユーキリス、次はライト、シュアな打者が続きに続く息の抜けない打線だ。

ユーキリスが歩いて、ライトがリオスの前に安打を落としてすべては終わった。

WBCは、2012年退任するバド・セリグが創設したが、不人気な上にここまでホスト国USAが弱いと、退任後の2013年に開かれる第三回は、中止される恐れがあったと思う。少し大袈裟にいえば、9回裏のライトの安打は、WBCを救った一打といっても良い。

USAは、追加招集された選手の活躍で首の皮一枚つながった。WBCの盛り上がりのためにも、ここから立て直してほしい。

■後日談:このWBCのハイライトのひとつ。MLBのスターたちが一瞬だけ目覚めた試合だった。一言でいえば、体を大事にしながら戦っていたのである。

韓国は考えた野球をした|WBC2009

2009316日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

柳賢振は体の切れが悪くて球数も多く、メキシコに付け込まれていた。メキシコは、1次ラウンドとは打って変わって粘り強い攻撃をした。地元に近い地の利もあってか、メキシコ勢は調子がよさそうで、特にゴンザレス弟やカントゥはシーズン中に近かったと思う。

メキシコは、MLB選手をそろえているが、投手陣の層が薄い。ペレス、カンピーヨの先発とクローザーのソリアまでの間をつなぐセットアッパーの中で、計算できるのがアヤラとレイエスしかいない。そのために打ち勝つ野球しかできなくなっている。防御率10点台、打率3割というチーム成績がそれを物語っている。

中盤以降にその差がはっきりと出てきた。韓国は、アジア野球の特色とも言うべき出塁した選手をつなぎ、送る野球をやり始めた。金泰均がいい仕事をした。

焦点となったのは7回である。カリム・ガルシアの安打で無死1塁となったところで金広鉉をマウンドにあげた。日本の初戦先発以来の登板、まだ4-2の点差で、下手をすれば前回同様試合を台無しにされる危険をはらんでいたが、韓国ベンチは金広鉉に試合を託したのである。スライダーは高めに浮き、頼りなかったが金広鉉は2人を抑えた。厳しい実戦にあえて投入することで、韓国サイドは金広鉉を戦列に復帰させたのだ。そのあと1死をとるために、同じく先発投手の尹錫珉を投げさせたのも、深い考えだ。

この裏に4点をとって、韓国は完全にペースに乗った。このあとは何も起こらなかった。メキシコは、単調な攻めになった。安打が出てもつなげるバッティングはもうしない。

韓国は試合をしながら、自チームの体制を整えていった。

また韓国とやるのか・・・という声もあるが、またやるのである。

また対戦するのだ。ほぼ互角だと思う。

■後日談:韓国と日本はプロトコルが同じという感じがする。メキシコなどラテンの国と対戦する時の攻め口が似ている。しかも、韓国はもっとアグレッシブである。人材の厚みが出れば、さらに強くなるだろう。
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2009年1月に、SportsNaviで「MLBをだらだら愛す」というブログを開設、12月には「野球の記録で話したい」を開設。多くの皆様にご愛読いただきました。2011年11月、livedoorに引っ越し。基本的な考え方は変わりません。MLB、NPBの記録を中心に、野球界のことをあれこれ考えていきたいと思います。多くの皆様に読んでいただきたいと思いますが、記録や野球史に興味と尊敬の念を持っていただける方のサイトにしたいと思います。特定の球団のファンの方も大歓迎ですが、「ひいきの引き倒し」的な論調には与しません。

広尾晃はペンネーム。本名は手束卓です。ペンネームは、小学校時代から使っていました。手束仁という同業者がいるので、ややこしいのでこの名前で通しています。ちなみに手束仁はいとこです。顔もよく似ています。
私が本名を隠しているかと勘違いして、恐喝のようなコメントを送ってくる犯罪者まがいがいるので、あえて公表します。


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