3月2日、まだ震災前のオープン戦。巨人、西武戦は、巨人澤村拓一、西武大石達也、菊池雄星、牧田和久が登板するという豪華なものだった。
注目されたのは両チームのドラフト一位、澤村と大石だったが、この時点でも両者の差は歴然だった。澤村は春先としては十分な145km/hの勢いのある球を揃え、これにカーブ、フォークを交えて4回を被安打1、54球できれいにかたづけた。マウンドさばきも堂々として、新人離れしていた。
対照的に大石は速球の球速にばらつきがあり、キレがなかった。大石は大学時代の剛球が戻らず、故障もあって一軍の試合に投げることはなかった。澤村は、この勢いを持続して開幕3戦目に先発。以後の成績。

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開幕から7戦連続で、投手の最低限の責任とされるQS(6回以上3自責点以下)をマーク。抜群の安定感だったが、この7試合で14自責点(ER)に対し、援護点(RS)も14。2勝3敗というさえないスタートだった。この間、捕手は加藤健だったが8戦目からは阿部慎之助が受けた。
しかし以後も勝ったり負けたりの状態が続いた。援護点が少なかったからだが、徐々に四球が増えてきたことも勝ち星が増えない原因の一つだった。
9月2日の時点で6勝11敗。内容的には素晴らしかったが、新人王は難しいかとも思われた。しかし、以後8回の登板で59回を投げて自責点7、防御率1.37。一流から超一流へとステップアップした。最大の進化は、投球数が減ったこと。9月2日までは1回あたり15.68球かけていたのが、以後8試合では12.8球。その差わずか3球というなかれ。シーズン中にここまで球数を絞る投手はほとんどいない。効率的な投球を身につけて、澤村はパリーグのダルビッシュ、田中将大に近い内容の投球ができるようになった。
澤村は大学2年まで全く無名だった。所属する中央大学が東都大学リーグ二部だったからだ。3年で一部に昇格してからの快投で一躍ドラフトの目玉となった。すでにアイドルとなって数年が経過していた斎藤祐樹は大学公式戦でも倦んだような表情を見せることがあったが、澤村はまだ使い減りしていないという感じだった。
澤村は、ローテーションを一度も外れることなくシーズンを全うした。新人としてはこれ以上の評価はない。新人王は文句なしではないか。不敵な面構えも頼もしい。
澤村拓一が澤村榮治賞をとる日も近いのではないか。

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