「夕刊フジ」と言う夕刊紙には江尻良文というスーパージャーナリスト氏がいる。さすが、読売グループよりも巨人に忠誠を誓う江尻氏の配下には、筋金入りの記者がいるようだ。
昨日の記事から。

スキャンダルなど、どこ吹く風。味方も驚く巨人・原辰徳監督(53)の“サプライズ采配”は健在である。
 1日の中日戦(東京ドーム)では、ドラフト7位・田原誠次投手(22)=三菱自動車倉敷=がプロ初先発。1回は3人で片付け、2回も1死一、三塁を無失点でしのぎ切り、快調な立ち上がりを見せた。
 ところがその裏、無死満塁の先制機で打順が回ると、原監督はあっさりと代打・矢野を送った。矢野は右中間を破る先制2点適時二塁打で期待に応え、首位攻防3連戦に全勝して6月7日以来の首位に立った。
中略 いろんな意味で、まだまだ原監督の一挙手一投足から目を離せない。(宮脇広久)


私ならプライベートで動揺のあまり、心ここにあらぬ作戦を取ったのだと思う。「情緒不安定野球」とでもいうべきところだ。原監督の一挙手一投足から目を離せないと言う一点だけは、宮脇記者と同じ意見だが。



NPBには、いまだに甲子園大会のつもりでペナントレースに臨んでいるチームがある。目の前の一勝のために、選手に無理をさせる。無茶な使い方をする。中長期的な視点などなく、ただただ勝ちたいだけ。こうした采配が、選手の将来性を潰したり、大きな禍根を残したりする例は枚挙にいとまがない。

まだペナントレースは76試合も残っているのである。この時点で首位に立つことに、何ほどの意味があろうか。そのために、22歳の投手のプライドを傷つけ、モチベーションを失わせることの大きさに、原はなぜ思い至らないのだろう。

新人の田原誠次は今季、ファームで主に中継ぎとして16試合に投げ21.1回を投げて自責点4。ERA1.69という好成績をあげた。ドラフト7位だが22歳。子供ではない。緩急をつける投球ができる、クレバーな投手なのだ。

故障した宮國椋丞の代わりに5月17日に1軍に上がると、交流戦で3試合に救援で投げて3.2回被安打2、自責点1という結果を残し、本人としては満を持して先発のマウンドに上がったのだ。

試合後「田原?また中継ぎ」と原監督は言ったそうだが、この人は他人の人生を何だと思っているのだろう。
田原はプロ野球の厳しさと言うより、原辰徳個人の酷薄さを感じるのではないか。

MLBでも五十嵐亮太が昇格1日で1球も投げることなくマイナーに戻されるなど、過酷な人事は日常茶飯事のように起こってはいる。しかし、それはチームのやむにやまれぬ台所事情によるものであり、選手はそれを甘受している。

しかし、田原に対して原監督が行った仕打ちは、そんな切迫感から来るものではなく、ただの「ひらめき」だ。身分の軽いものに対して目上の者が、気まぐれに権力を行使したとしか思われない。

MLBの試合では、本来なら1点を取るために小細工をすべきところでそれをせず、選手の自主性を重んじるケースが度々ある。また、シビアな選手起用をする一面、長期的な視点でじっくり選手を伸ばそうともする。そこには、何らかの「考え」がある。選手を「資産」として重んじる精神があると思う。

スポーツは何でもそうだろうが、選手は「実力」だけで世渡りをするわけではない。運やめぐりあわせによって、チャンスをつかみ、それを手繰って成功を自分のものにするのだ。田原はあの試合で、ピンチを切り抜けたことで何かをつかみかけていたのかもしれない。

そういう“人生の機微”を承知で、原辰徳は田原に代打を送ったのだろうか。
目先の1勝に汲々とする姿勢には、万事先読みができず、糊塗策にはしって墓穴を掘った私生活での弱みがそのまま出ているように思う。

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