今日、店頭に並んでいる緑の表紙の『週刊ベースボール』12月12日号の特集は「巨人ドラフトの功罪」。
ページをめくると今年の巨人外れドラ一松本竜也(英明高)のインタビューなどに続き、「ドラフトを揺さぶり続けてきた巨人の恐るべき執念と唯我独尊」という記事がカラー、2見開きで掲載されている。
ここには「田淵幸一密会問題」から「江川騒動」「KKコンビ明暗」「澤村一本釣り」「菅野浪人」まで。巨人がドラフトをいかに壟断してきたか、エゴを押し通してきたかが歯に衣着せぬ文体で(やや下品に)書かれている。巨人はドラフト初期からルールの裏を掻く工作ばかりしてきた。しかし、そうした工作にもかかわらず非常な“ドラフト下手”のために、失敗が続き、これがさらなる裏工作へと走らせた。
筆者の大内隆雄氏は編集部のOB。『週ベ』では「一枚の写真」など古い話を専門に書いている。故田村大五氏の後継というポジションだろう。署名記事であり、一ジャーナリストの意見という体裁をとっているが、巻頭という位置を考えても、『週ベ』における大内氏のご意見番的な地位を考えても、これが『週刊ベースボール』のオピニオンだと考えてもよいのではないか。
特集では、他にも歴代ドラフト1位格付けカタログや、巨人の魔力について語る駒田徳弘、巨人を蹴ったドラ1小林秀一などの記事も載っていて、バランスをとってはいるが、それらは匕首の切っ先を巻く晒のようなものだと思う。『週ベ』が書きたかったのは、過去四十数年にわたって、ドラフトを有名無実化しようとしてきた、巨人への批判だと思う。

昔の『週刊ベースボール』は、スポーツ新聞を週刊誌にしたようなもので、深みもなく、下世話な話題も多かった。私は故宇佐美徹也さんや千葉功さんの「記録の手帳」が見たいために買っていた。デザイン的にも良いとは言えなかった。ある号では、桑田真澄が海パン一丁でプールサイドでくつろいでいる写真が、綴じ込みの大グラビアでついていた。半眼で薄笑いをする桑田の顔にうなされそうになった。また、他のメディアと同様巨人のウェイトが高かったように思う。
近年の『週刊ベースボール』は、アマチュアからプロ、独立リーグ、MLBまで、その視野の広さと、目配りの確かさで、文字通り野球界のオピニオンとなっている。競技者、関係者、そしてファンにも有用な雑誌になっている(野球オタク関係は『野球小僧』に任せている感じだ)。
その確固たる地位と自信が、今回の記事を書かしめたのかもしれない。元巨人GM清武英利さんの騒動では、客観報道にとどまっている。また清武さんのコラム「野球は幸せか」は再開されていないが、今回の『週ベ』の記事は、NPBの勢力地図の変動に一石を投じるのではないか。

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