身の程を知ったMLB挑戦宣言というべきか。川崎宗則は国外FA宣言をするとともに「イチローのいるシアトル・マリナーズ=SEAから指名された場合以外はソフトバンクに残る」と公言した。しかしSEAに行けるなら「マイナー契約でもいい」とも言った。
もし、川崎が西岡剛より前に国外FA宣言をしていたなら、ここまでへりくだった表現はしなかっただろう。しかし、西岡が惨敗ともいうべき数字に終わったために、日本人内野手の評価が暴落したことを、川崎は強く意識しているのだろう。
また、今年の川崎は全試合、全イニングに出場したものの、はかばかしくない結果に終わった。統一球の影響もあっただろうが「これでは買い手がつかない」との思いもあったろう。川崎のキャリアSTATS。右端の$は、年俸を便宜的に1ドル75円で割った数字。単位は万ドル。

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同じパリーグを代表する遊撃手の中島裕之と比較しても、小粒であることは一目瞭然。川崎はあくまで1、2番を打つ打者であり、ポイントゲッターではなかった。俊足で、打率も高かったが、コツコツ当てる打者だった。MLBに行けば、一層小粒になると思われる。最下段の赤いデータは、MLBに移った選手の数字の下落率から割り出した川崎のMLBでの予測値だ。これは厳しい数字。

実はSEAは、このところ遊撃手不作に悩んでいる。イチローが入団してからのSEAの主な遊撃手の成績。右端の$は年俸。単位は万ドル。

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2001年以来、SEAはカルロス・ギーエン、ユニエスキ・ベタンコートという2人の遊撃手を育ててきた。ギーエンはデトロイト・タイガース=DETに移籍してからスター選手となった。SEAフロントはその無能ぶりをさらけ出したと言われた。ユニエスキ・ベタンコートは身体能力の高い野手だったが、典型的なフリースインガーで、打者としては信頼感が低かった。散漫なプレーが次第に目立つようになり、2009年に年俸の一部をSEAが負担する形でカンザスシティ・ロイヤルズ=KCに放出された。
以後、規定打席に達する遊撃手がいないままだった。今年のブレンダン・ライアンはセントルイス・カージナルス=STLから移籍。打撃は物足りなかったものの、広い守備範囲で評価は高かった。ライアンは2年契約だから、一応来季もポジションが約束されている。
本拠地のセーフコ・フィールドが広いこともあって、2001年以降二けた本塁打を打った遊撃手はいない(2000年はA-RODが41本打っていたが)。もともと打力はそれほど期待されていないのだ。また、盗塁も昨年のライアンの13が最高だ。川崎がもし移籍して34盗塁もすれば、これは大きな武器になるだろう。川崎が辛抱強く四球を選ぶことができれば、全くの当て外れに終わったショーン・フィギンスに代わって、イチローのあとの2番を打つ可能性もあろう。
SEAの来季の内野陣は、一塁が25歳のジャスティン・スモーク、二塁が24歳のダスティン・アックリー、三塁が24歳のカイル・シーガーとフレッシュな顔ぶれになるはずだ。うまくいけば31歳の川崎は内野のリーダーになるかもしれない。
問題は年俸。川崎の今の年俸は320万ドル。ライアンのほぼ倍だ。この年俸でSEAが契約するかどうかは微妙だ。ただ“マイナー契約でも”という言葉からは、年俸を度外視しても入りたいという気持ちがあることがわかる。
川崎はSEAを“逆指名”したことで、デレク・ジーターや、JJハーディなど強打の遊撃手と比較されなくて済む。等身大の川崎を評価してもらうことができそうだ。
イチローは川崎の宣言を聞いて呵呵大笑したという。来年はイチローも契約最終年。川崎はそのタイミングを逃したくなかったのだろう。なんとなく「ダメだったら戻ってこいよ」とソフトバンクのフロントに言われているような気もする。
川崎の決意はいじらしいなと思う。夢がかなえばいいと思う。

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