デイリースポーツより
日本プロ野球選手会は20日、大阪市内のホテルで臨時総会を行い、来年3月に予定されている第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しない方針を決議した。
決議は各球団2名、計24名の全会一致で決定した。新井貴浩選手会会長(阪神)は記者会見で「昨年7月から主催者側にアプローチしていた。僕たちはボールを投げたのに、投げたボールが返ってこなくて苦渋の決断をした」と話した。
選手会は、代表チームのスポンサー権、ライセンス権をすべて大会運営会社であるWBCIに譲渡することが参加条件だったため、譲歩を求めていたが、実現しなかった。


新聞などの事前観測では、選手会もWBC参加表明をすると思われていたので、これはかなりの衝撃だ。
選手会のこの決議は、いくつかの意味を持っていると考えられる。

一つは、WBCを主催するMLB機構とMLB選手会の強硬な姿勢に対して、決然とNOを突き付けたということ。
選手の気持ちは、経営者などよりストレートであり、相手が譲歩しない限りこちらも譲らないことをはっきりと意思表示したのだろう。
韓国野球の選手会がWBC不参加を表明したことも大きかったのではないか。

日本プロ野球選手会にとっては、営業収益の分配の不公平さも大きな問題だっただろうが、開催期間の問題、怪我などのリスクの問題もあっただろう。

MLBの選手たちもそうだが、WBCに選出されるような高給取りの選手にとって、WBCの賞金はそれほど美味しいものではない。むしろ、通常ならば調整中のはずの春先に、真剣勝負をさせられることのリスクを懸念しているものと思われる。つまり、WBCは、レギュラーシーズンに比べてステイタスが低いのだ。
レギュラーシーズンで怪我をするならまだしも、こんな花相撲で怪我をしてはたまらないと言う意識がある。

もう一つは、MLB側から確たる譲歩も引き出さないままに、ずるずると参加表明をしたNPBに対する不信感があるだろう。選手側の利益を代表すべき経営者たちの弱腰、交渉能力の低さに対して、NOを突き付けたと言う一面もあろう。

7月12日に加藤良三コミッショナーが再選され、加藤氏を中心にWBCの監督人事など「侍ジャパン」を構築していくことになったが、加藤氏の手腕に対する不信も含まれているだろう。

例によって加藤コミッショナーは

出場しないことの影響を真剣に考えなければならない。不参加の決定が最終的なものかどうかは承知していないが、参加するよう選手会と話し合いは続けていく。

と当たり障りのない意見を述べた。

選手会は全会一致で不参加を決めたが、個別にはこの決定を残念がる声も聞かれた。

◇答えられない
 西武・中島 自分としては今は何も答えられない。WBCではいい経験をたくさんさせてもらったのは確か。
◇仕方がない
 ソフトバンク・内川 日の丸をつけて戦うことが素晴らしい経験になるとは思うが、利益の部分で(意見が)一致しているなら仕方がない。


選手会長の新井貴浩は、2006年のWBCに選出されたが2試合のみの出場。2009年は参加を辞退している。選手の間での温度差もあったのではないかと思う。

このことで、不利益をこうむるのはファンである。長期低迷が続くプロ野球人気の中で、7年前、3年前の春の熱狂はNPB史上でも特筆すべきものだった。それが、ファンとは何の関係もないところで不出場が決まったことに、釈然としない思いもある。新井選手会長は、「ファンと思いは同じ」と入ったが、少なくともファンに対して理解を求める言葉があっても良かったと思う。

問題の本質は、WBCをサッカーのワールドカップのように育成することを、世界中のすべての野球に関わる人が認識することだと思う。

ビジネスは重要だが、それ以上に五輪にさえ出ることが許されないマイナースポーツである野球のステイタスをあげるために、WBCをより大きく、より権威のあるものにする、というコンセンサスを得ることだ。

MLBは常に世界に野球を普及することを考えてはいる。しかしそれは常に「ビジネス」と表裏の関係があってのことだ。自らのインカムが見込めないような事業は起こさない。

できればNPBにイニシアティブを取ってほしいが、それは無理だろう。今一度話し合いが行われることを期待したい。

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