ダルビッシュは一度だけ、MLBの主力打者と真剣勝負をしている。
2009年の第2回WBCの準決勝、USA戦の9回、ダルは5人目の投手として登板。デレク・ジーターにはセットポジションから94mph前後の2シームを5球投げ込み3-1から遊ゴロ、3安打と当たっていたジミー・ロリンズは2-2から77mphのスライダーを右前打される。NPBではほとんど打たれなかった球だ。しかしデビッド・ライトはそのスライダーで空振り三振、アダム・ダンも2シームで見逃し三振に切って取った。すでに9-4と日本が大きくリード。アメリカのファンは大半が帰途につくなど盛り上がりには欠いていたが、ダルは気合十分だった。

しかし、来年、MLBの各打者は、当時とは全く違うダルビッシュを目にすることになろう。当時のWBCのパンフレットにはダルビッシュは196cm85kgと書かれてある。しかし、今、ダルは105kg。この20㎏はすべて必要な筋肉だ。

優男からごつい筋肉男へと変身した今のダルビッシュは、以前よりも体をねじらなくなった。体幹は突っ立ったままで、手だけが動いている感じ。一見手投げのようだが、それでいて凄まじい球威の速球が投げ込まれる。しかも体の中心がぶれないので、コントロールが抜群に良くなった。スライダーのキレも増し、カーブ、チェンジアップなどの緩急のある変化球もさらに磨きがかかった。その上にダルビッシュは今年、サイドスローからも同様の威力のあるボールが投げられることを見せた(もともとサイドスローでしたから、とのこと)。またワインドアップから重たい2シームを投げ込んで、吉井コーチをして「わしの夢やった」と喜ばせたりもした。ダルビッシュという分厚い本は、まだページの半ばにしおりが挟まれている感じだ。これからもっと面白い物語が始まりそうだ。

ではダルビッシュには何の不安材料もないのか?

そうではない。ダルビッシュには、MLBの半年で162試合、中5日登板という厳しい日程が立ちはだかるはずだ。これについては、今年6月にすでに紹介した

ダルビッシュはNPBよりもはるかに苛酷なスケジュールに対応しなければならない。
しかし、それは必ずしも「より多く投げること」を意味するわけではない。

ダルビッシュのNPBキャリアでの投球数=NP。Gは登板数。IPは投球回。BFは対戦打者数。投球数をG,IP,BFで割った数値も示した。さらにIP/G。1試合当たりの投球回も示した。

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ダルビッシュは今季3387球を投じている。これを今季のMLBの主要投手の投球数=NPと比較する。

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ダルビッシュは今年、クリフ・リーとほぼ同じ投球数、投球回数を投げているのだ。では何が違うのか?ダルが28試合でこの球数を投げているのに対し、MLBの投手は32~34試合で同じ程度の球数を投げている。ダルビッシュは、平均すると8回120球。しかしMLBの先発投手は長くても7回、多くは6回110球前後で退いているのだ。

MLBで、ダルビッシュはトータルすれば今期とほぼ変わらない投球数を投げる。しかし、降板するタイミングは少なくとも1回は早くなるはずだ。その代わり、登板間隔は中6日ではなく、4~5日になる。

大エースとして日本ハムに君臨したダルビッシュは「自分で決めてやる」という意識が強いように思えた。しかし分業がより明確なMLBでは、先発投手はQS(6回以上投げて自責点3点以下)を果たすことが第一の目標になる。意識の転換が必要だろう。

もちろん、相手にする打線はNPBよりも強力だから、そのままというわけにはいかないだろうが、33試合に先発登板して100球を投げてほぼQSをマークすることは可能だろう。
シーズンを通せば200回3300球、15勝、ERA3.00は十分に期待できるのではないか。

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