佐野真『和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか』




最近少し前の本ばかり紹介している。毎日のように野球関連の本は出ているのだが、読んで目からうろこが落ちたり、うーんと唸らせるような本は滅多にないのだ。それよりも、古い本でも、これは見逃せないという本をぜひ、紹介したいと思っている。

この本は、スポーツライター、囲碁観戦ライターの佐野真さんの手になるノンフィクション。大学時代から和田の投球に着目した佐野さんは、和田に密着して話を聞くとともに、130km/h台にもかかわらず、打者が振り遅れ、空振りをする和田の速球を、科学的に究明したのだ。

なぜ、和田毅の球は打てないのか。それは、この本を読んでいただきたいが、それ以上に、感心するのは和田毅という人間の見事さである。

決めたことは絶対にやり遂げる。フォームのこと、投球術のこと、気になったことは自ら徹底的に究明する。その前向きで、ひたむきな姿勢には思わず襟を正したくなる。

タイトルからして魅力的なこの本が出た時に、私はすぐに買って読み、子供に「読め」と渡したことを覚えている。我が子がしっかり読んだかどうかは定かではないが、この本は、野球選手だけでなく、若い人たちにこそ読んでもらいたい。

左腕で、三振に強いこだわりを持った投手、という点で江夏豊と和田毅は共通している。しかし、野放図で自己中心的な江夏と、真面目で誠実な和田毅は天と地ほどの差がある。ただし、野球に関する集中力、観察力などは通じるところがあるように思う。

江夏と和田の間には37年の歳月がある。この間にNPBの世界は大きく変わった。江夏の本には、徹夜マージャン明けで登板する話が何度も出てくる。煙草は当たり前、トレーニングも各自に任されていた。シーズンを通して厳しい体調管理、コンディション維持を行う和田の時代では考えられない話だ。
前回に紹介した『左腕の誇り』とこの『和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか』は、NPBの野球がどのように進化したかを見る格好のテキストでもある。

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!