小久保裕紀の引退表明は、かなりの反響があった。シーズン中の引退表明が異例だということもあるが、最近、この手のあっさりした身の振り方が珍しいということもあろう。
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大相撲の世界では、引退表明をした瞬間から土俵に上がることはできない。土俵上での真剣勝負に「降りた人間」は、加わることが出来ないのだ。

プロ野球の場合、そういうことはない。残された時間、チームに貢献し、後進にバトンタッチをする時間が与えられるのだ。

MLBでは、シーズン前や途中に引退宣言をするケースはよくある。今期でいえばアトランタ・ブレーブスのチッパー・ジョーンズは、3月に「今季限りの引退」を宣言してプレーしている。長期契約の切れ目などにこういう宣言が出ることが多い。ただしアメリカの場合、撤回されるケースも多い。

小久保の引退表明が注目されるのは、最近、功成り名遂げた選手がなかなか引退しないケースが多いからだ。
実力が伴い、チームに十分貢献できるのなら、何も問題はない。40歳を超えて打率3割をキープしている日本ハムの稲葉篤紀や、守備のかなめとしてオールスターにも出場した中日の谷繁元信などは、文句の言いようがない。

しかし、明らかに実力が衰えているのにもかかわらず、現役にこだわり続ける選手は、チームに迷惑をかけ、若手の出場機会を奪う。日本ではこういう大物ベテランに引導を渡すのは難しい。腫れ物に触るようにしてしまうことが多いのだ。
力が衰えて、なお現役にこだわる選手は、年俸も実力相応にし、ポジションも若手とイーブンで争うのなら、現役続行にも理がある。しかし「年功給」とでもいうべき高給をもらい、当たり前のようにポジションを得ている選手もいるのだ。

小久保の引退宣言は、結果的にこうした風潮に一石を投じている。

「体は元気だけど、フリー打撃でボールが飛ばなくなったり、完全にホームランだなと思った当たりがセンターフライだったり。試合に出られなくなったというより、自分の実力」
という引退理由は明快だ。



小久保の野球人生は、順風満帆とは言えなかった。若気の至りもあり、フロントとの確執や、不可解なトレードも経験し、故障も多かった。それだけに未練もあるはずだが、2000本を機に引退宣言をしたのは、評価されてよいと思う。

残された時期に、どんなパフォーマンスをするか、注目したい。

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