「子どもが好きなスポーツは何?」今の子どもの51%は「サッカー」なのだという。野球は2位だが何と19%。「国民的娯楽」だった野球の将来は、かなり暗いと覚悟すべきだ。今の大相撲のように、いつの間にかマイナーな存在になるのではないか。
バンダイが今年の7月から8.月にかけて、3歳から12歳の子どもがいる全国の保護者にアンケートを実施。1500人が回答した(9/13の発表)。http://www.bandai.co.jp/kodomo/pdf/question205.pdf

これによると「子どもが好きなスポーツ」では男の子は約半数が「サッカー」を挙げて1位。次いで「野球」が多かったものの19%。以下3位「水泳」18%、4位「ドッジボール」4%。女の子では、1位は「水泳」で29%。次いで「サッカー」の18%。3位は「縄跳び」「バドミントン」「陸上」「体操」で、いずれも7%だった。
サッカーは、男の子は日本代表や海外で活躍する選手に憧れて好きになるケースが多く、女の子は、なでしこジャパンがワールドカップやオリンピックで活躍したのを見て好きになるケースが多かった。
バンダイは、「サッカーや水泳などオリンピックで日本選手が活躍したスポーツの人気がやはり高い。野球は親が好きな影響で始めるケースが多い」とコメント。

ショッキングだ。私が子どもの頃は、見るスポーツと言えば野球、そして大相撲。やるスポーツは圧倒的に野球、サッカーはバレーやバスケ、テニスなどとともに「特別に好きな子」がやるスポーツだった。

Jリーグの発足が潮目となってサッカー人気は高まったのだろうが、以後20年足らずでここまでマーケットが変わったのだ。

一つにはワールドカップの影響が大きい。93年のドーハの悲劇の後、強化が進んだ日本代表は98年以降連続で本大会に出場している。2002年には日韓共催でワールドカップを行った。日本代表は着実に強くなっている。また、女子の「なでしこジャパン」も昨年ワールドカップで優勝、メジャースポーツになろうとしている。

そして日本人選手は次々と世界に雄飛している。ヨーロッパの主要なサッカーリーグには、日本人がいて、毎日その奮闘ぶりが伝えられている。



何より素晴らしいのは、日本サッカー協会、Jリーグが「100年構想」をもって、着実にすそ野を広げていることだ。サッカーの世界では、アマチュアとプロに垣根はない。ともにJリーグ構想の担い手として頑張っている。プロ選手が少年を指導し、プロとアマがともに試合をしている。指導者のライセンスも整備されている。

また、各チームはJリーグの指導監督下に置かれる。勝手な行動は許されない。経営状態が悪いチームは成績にかかわらず経営指導が入り、だめなときは除名される。選手の外国への移籍については、国際ルールが適用される。国内と世界の間に特別な障壁はない。

サッカーを志す少年は、自分の未来が描きやすい。偉大な才能の持ち主ならば、Jリーグを経由して海外のチームでプレーする夢を描くことができる。サッカーへの情熱が強いなら、指導者への道も開けている。もちろん「大人の事情」や「世間のしがらみ」はあるだろうが、サッカー選手の未来は透明度が高く、イメージが良い。

私は、Jリーグは、野球を反面教師として設立した一面があるのではないかと思う。

閉鎖的で旧弊な印象のアマチュア野球。素晴らしい指導者もいるだろうが、ろくでもない大人が金の匂いを嗅ぎつけて動き回っている印象がぬぐえない。アマとプロは一部で癒着しているが、まだ高くて理不尽な壁がある。野球選手には今も「堅気ではない」印象がついてまわる。

そして、相変わらず一部の球団の都合が優先されるプロ野球。100年構想どころか11月に迫っている「侍ジャパン」ゲームの準備さえままならないコミッショナー事務局。アメリカと日本のマネジメントの差を認めない日本側関係者。
海外へ雄飛しようと思えば、野茂のようにプロ野球界から村八分にされる。渋々認めたとしても、田澤に見られるようにアマチュア野球からMLBへの移籍には、今も大きな障壁がある。

無能な野球機構と、旧弊な野球関係者が、野球の印象を暗いものにしている。

今回の調査は、近い将来、ほぼ確実に、野球がサッカーに逆転されることを物語っている。もう手遅れに近い。日本シリーズがテレビで中継される時代は、間もなく終わるのだろう。スポーツ紙が「球団機関誌」であった時代も終わるだろう。

しかし、残念ながらこうした逆境を立て直すような人材は、プロ野球界には非常に少ない。危機意識も高いとは言えない。

そう遠くない未来、「ご趣味は?」「プロ野球観戦です」「へー、変わってますね」と言われるときが来ることを、我々は覚悟しなければならない。

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