報知新聞は2日前に大谷はNPBを志望するという記事を書いたが、これは空振りに終わった。昨日、大谷翔平はMLBに挑戦する旨明言した。
テキサス・レンジャーズとの面談に、チームは傘下のAでプレイしている尾中博俊に同席させ、マイナーリーガーの生活について説明させたようだ。大谷はかえって不安を抱いたという観測もあったが、MLBに挑戦したいという気持ちは変わらなかったようだ。
MLB挑戦に不安を抱いたのは、おそらく両親だったのだろう。しかし本人の決心は固かった。
大谷翔平のMLB挑戦によって、MLBとNPBの関係はまた一つ、転換点を迎えた。
これまで、ドラフト候補の高校生が、NPBを経ずにMLB機構に入った例はない。

ほとんど知られていないが、1990年代以降、日本からは多くの若者が海を渡り、MLBに挑戦している。NPBを経由せず、MLB機構で野球をした選手は、私が調べた限りでは55人に上る。表の右外の文字は、MLB機構を経て移籍したNPBチーム。
なお、伊東、大越、マック鈴木はサリナス・スパーズという球団に入っている。このチームは日本人の古賀英彦が監督をしていた時期もあり、多くのNPB選手が野球留学をしている。親球団はない独立系の球団だが、MLB機構内のAクラスに所属していた。独立リーグではない。
RVはマイナーリーグでの最高位。

draft-NPB-MLB


NPBを経ずにMLB機構に身を投じて、MLBまで上り詰めた選手はマック鈴木、マイケル中村、多田野数人、田澤純一の4人しかいない。このうち多田野と田澤はふつうならばNPBのドラフト上位に当然指名されるべき選手だった。
NPBのドラフトから洩れた選手がMLBで活躍したケースはマック鈴木とマイケル中村の2例だけ。
NPBのスカウトが指名を見送った選手たちがMLBで活躍できる可能性は極めて低いのだ。多くの選手たちはAまでのレベルでキャリアを終えている。数字的にも見るべきものが少ない。またマイナーリーグを経てNPBに入ることができた投手の中で活躍したのは、今のところ山口鉄也だけである。

現役では奥田ペドロはFRkつまり、海外=ベネズエラのルーキーリーグにいる。

数年前までNPB側はMLBへの人材流出に全く気を留めていなかった。ドラフトの網から漏れた、ノーマークの選手が海を渡っても知ったことではなかった。また、結果も伴わなかった。

しかし、2009年、社会人ドラフト1位候補だった田澤純一が、指名を拒否してボストン・レッドソックス=BOSとメジャー契約を結んだことは大きな衝撃だった。そして、彼がトミージョン手術を超えて今季素晴らしい成績を残したことは、日本の有力なアマチュア選手にとって大きな刺激となったはずだ。



大谷翔平が最終的にMLB挑戦を決断したのも、田澤の活躍があったからではないか。NPBのドラフト1位レベルは、MLBでも十分に通用する。MLB側もそのように口説いただろうし、それは十分に説得力のあるものだった。

有望な高校生がNPBのドラフトを拒否してMLBを志向する動きが広がれば、日本のドラフト制度は根底から崩れる。NPBには建前上契約金の制限があるが、MLBは実質青天井である。まともに勝負すれば勝てるはずはない。
大谷が順調に成長してMLBのマウンドに立つようなことがあれば、トップクラスの高校生は一気にMLB志向に転ずるだろう。

NPBは、この事態を真剣に考えなければならない。これまでのように、出て行った選手を村八分にしたり、できもしない鎖国政策を取るなど、小手先の策を弄するのではなく、MLB側としっかり協議をして、わかりやすくオープンなルールを設けることだろう。彼我の力量差を認めるところから始まると思う。

そして、何につけてもそうなのだが、NPB側が機構改革を進めて、プロのビジネス、マネジメント集団にならなければ、日本プロ野球に明日はないだろう。

報知新聞蛭間豊章記者、興味深い考察。

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