さて、2009年から今年のボストン・レッドソックス=BOSの投手陣の推移をみていこう。
えんじ色は規定投球回数に達した投手。
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2009年、ベケット、レスターの左右のエース並び立つ。しかし松坂大輔の故障、不調はBOSの政策上、非常に痛かったことがわかる。わずか2年で使い物にならなくなるとは。ウェイクフィールドの代わりどころか、松坂の穴埋めが必要になったのだ。
で、あの人がやってきたのだ。今年ソフトバンクに遊びに来た。一昨年の最多勝の勲章をぶら下げてはいたが、この時点でもだらしない成績で終わった。
バクホルツの成長はあったが、先発投手陣の優位性は失われた。ただ、救援投手陣は新加入のラモン・ラミレスと斎藤隆がよい働きをした。パベルボンも健在だった。
こうしてみるとファレルは、先発、救援のどちらかに頼りながら投手陣をマネジメントしてきたように思う。
ERA4.35 はリーグ7位。ワイルドカードでポストシーズンに進出したが、地区シリーズでロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム=LAAに破れている。
ありていに言えば、BOSの場合、ポストシーズンに進出すれば、一応及第点という印象がある。その地位に安住してきた嫌いもなくはない。

2010年、BOSは再び大型補強。LAAからジョン・ラッキーを獲得している。これにレスターと成長したバクホルツ。松坂も一応シーズン通して投げたが、とても一線級とは言えない。それにまして痛かったのがベケットの不振と故障だ。
ファレルはこの年も先発陣のやりくりに走り回る。ウェイクフィールドを先発救援で使いまわしたのもこの現れ。
この年は救援陣も破たんした。パベルボンが通用しなくなり、岡島も成績が急落。ラミレスも昨年の輝きは見られず。かろうじてバードだけが希望の光だった。
ERA4.19 はリーグ9位。チームはポストシーズン進出を果たせず。
オフにファレルはトロント・ブルージェイズの監督に転出。BOSは、代わりにカート・ヤングを投手コーチとした。ファレルと同年代で現役時代のキャリアも大差ない。オークランド・アスレチックスの投手コーチからの異動だ。

私はこのころからMLB、NPBの各球団の戦力チェックをしてきた。BOSは、明らかに先発、救援でのテコ入れが急務だった。しかし、このオフ、チームはほとんど動かなかった。打線にはエイドリアン・ゴンザレス、カール・クロフォードを入れたが、投手陣はアセべスなどを取った程度。打線を強化して投手力を補う腹積もりだったのか。また、新任の投手コーチから的確な進言がなかったのか。

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2011年、レスター、ベケットは健在だったが、松坂はトミー・ジョン手術でリタイア。ラッキーも故障、6月にアンドリュー・ミラー、8月にはエリック・ベダードを先発に加え、何とか体裁を整えた。
チームは春先には低迷したが、新打線の力もあり、9月1日時点ではニューヨーク・ヤンキース=NYYに0.5ゲーム、タンパベイ・レイズ=TBに9ゲームの差をつけて首位にいた。
順調かと思えたが、TBが追い上げる中で、救援投手陣が総崩れとなり、急速に調子を落とした。二週間後にはNYYに4.5差の2位に、TBとは3差。そして最終的にTBに逆転され、ポストシーズン進出を逃した。弱体な投手陣が足を引っ張った。フランコーナ監督が、この年限りの引退を表明したウェイクフィールドに200勝を挙げさせるために6試合を費やしたのも後から考えれば痛かった。
結局、2011年を持ってフランコ―ナ監督は解任。一つの時代が終わりを告げた。



2012年、バレンタイン監督の時代。投手コーチはボブ・マクレーに。カンザスシティ・ロイヤルズからの転出だ。この年もBOSは、本格的な投手補強はしなかった。コロラド・ロッキーズからアーロン・クックを獲得した程度。パベルボンが移籍したが、アセべスがそれに代わった。しかし、投手起用法は気まぐれだった。
この年、BOSは浮上せず。またチーム内に不協和音が起きて、エイドリアン・ゴンザレス、クロフォード、そして投手陣ではベケットが夏にはいなくなった。そして投手コーチのマクレーも解任された。完全な再建モードに入ったのだ。

ジョン・ファレルは、選手との間に信頼関係があった。それに加えて、先発、救援の投手の起用に一定の方針を持っていたように思う。おそらく補強についても考え方があったはずだ。投手陣というものは、2、3年で鮮度が落ちる。新陳代謝を図る必要がある。
その考えはオーソドックスなものだったかと思うが、それさえなくなった2011年以後の投手陣は崩壊したのだ。

BOSは来季、大型補強は考えていないように思える。経済状況の問題と、サラリーキャップの問題が影響していると思われる。緊縮財政に入ったのだろう。
ファレル新監督は、現状の先発投手陣を軸に再建することを求められている。
ファレルは残ったパーツをいかにつなぎ合わせてチームを作るのだろうか。残念ながら松坂はそのパーツには含まれていないようだが、今年おかしな使われ方をした田澤純一をぜひ、一人前にしてほしいと思う。
これ以上はない地点まで落ちたBOSである。来季は、少し明るい希望が持てそうだ。


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