昨年選手会長になった嶋基宏の発言が、プロ、アマ野球の冷戦を終結させそうだ。歴史的な出来事である。
東京新聞より。

日本野球機構(NPB)、労組日本プロ野球選手会(楽天・嶋基宏会長)、日本学生野球協会の三者は十七日、東京都内で元プロ選手の学生野球資格回復について協議し、NPBと学生野球協会がそれぞれ主催する研修を受け、適性審査に合格すれば、高校や大学の野球部を指導できる資格を認める方針をまとめた。

アマチュア野球がプロ野球の人材引き抜きに激しい拒否反応を示したのは、1961年の「柳川事件」がきっかけだ。
当時、日本野球機構(NPB)は、社会人野球協会と毎年選手獲得について協定を結んでいたが、前年、社会人側がプロ野球選手の社会人加入について新たに制限を設けたことで、事態が紛糾。西鉄の西亦二郎社長の「目には目を」発言もあって、プロ側は協定破棄を申し渡した。
そして翌61年4月、中日が日本生命の外野手柳川福三と契約したことで事態は紛糾。プロとアマは、絶縁状態になった。

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この当時、新聞を見るとプロ野球とアマチュア野球の扱いはほぼ同じ。58年、長嶋茂雄が入団する以前は、アマの方が扱いが大きかった。プロ野球は人気が上昇し、アマと肩を並べようとしていたのだ。
社会人野球は、今や、企業のお荷物になりつつあるが、高度経済成長期の当時は、会社の一体化の象徴であり、企業の顔だった。選手の引き抜きは企業の面子にかかわった。

戦後、プロ側は強引な引き抜きを続けていた。アマがこれに不信感を持っていたのは間違いないが、アマ側の対応も強硬だったと言えよう。

アマ側は、占領軍から、ノンプロ野球世界大会に出場するためには、プロとアマの線引きを厳格にすべきだとの指示を受けていた。それもあって、プロとアマの交流戦をやめるなど、線引きを厳格にしてきた経緯があった。

しかし、プロ側は2リーグ制になり、チームが増えて選手が不足したこともあり、アマからの強引な引き抜きを繰り返していた。高校生、大学生の在学中の引き抜き、社会人野球の大会中の引き抜きなども日常茶飯事だった。
また、契約金も高騰、仲介者も暗躍するなど、無法状態になっていた。

その一方で、プロを引退した選手のアマチュア球界、学生球界への復帰は自由だった。池田高校の蔦文也、明星高校の真田重蔵など、プロ出身の指導者もいた。



プロ側に不信感を抱いたアマは、元プロ選手のアマへの復帰の門を徐々に閉ざすことで対抗しようとしていたのだ。

柳川事件はきっかけにすぎず、両者の長年にわたる相互不信が、この事件をきっかけに表面化したのだ。

これを機にプロ側も多少変化が見られた。選手獲得の高騰が問題になるなか、前述の西亦次郎の呼びかけで、ドラフト制度が66年から導入された。
ドラフト施行後は、社会人野球だけでなく、高校野球、学生野球も含め、プロとアマの接点はドラフトのみになった。

永い間、元プロ野球選手が社会人野球でプレーすることは事実上不可能となっていた。またプロ出身選手がアマチュア選手を指導することは、厳しく禁じられていた。親子や兄弟であっても指導できないという理不尽な状況が続いた。

1999年になって元プロ野球選手の社会人加入が1チーム2名に限り認められた。
また、プロ出身者が大学野球の指導者になる道も徐々に開けてはいた。
さらに高校野球では、教員免許を取得し「中学、高校で2年の教諭歴」を経ることで、指導者になることが可能となった。

ただ、高卒でプロ入りした選手、大学で教育課程を履修していなかった選手にとっては、大学に入り直して単位を取得しなければなかった。さらに、実際に教諭として2年間勤務するのも高いハードルだった。

今回の改定によって、指導者になりたいと希望するプロ選手はプロアマ双方の座学による研修を受けて適性検査にパスすれば、OKということになる。

昨年12月の会長就任早々、嶋基宏は、「プロアマ問題」-特に高野連との関係改善を最大のテーマとすることを表明した。
この問題が1か月足らずで大きく動いた形となった。

焦点は、プロ側がしっかりした人材を高校野球界に送り込むことができるかどうか、だろう。
プロ選手の中には、学生時代いびつな教育、指導を受けていた人も多い。体罰を経験した選手も多いだろう。
こうした人間が、その価値観のままに指導者となって、問題行動を起せば、開かれた扉が再び閉ざされかねない。

プロ側は現役時代の成績にこだわらず、真摯で信用のおける人間を厳選して送り出すべきだろう。

個人的には野茂英雄、古田敦也、矢野煬大、桑田真澄、松井秀喜など、第一級の人材が高校球児を指導するような日が来れば良いなと思う。

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