昨日、IBBについて考えていて、今更ながらイチローの特殊さに思い至った。軽量のリードオフマンタイプでありながら、チームの最強打者として一人マークされる。それは栄誉というよりは、孤愁を帯びたものなのではないか。
これを、目に見える形にできないかと考えた。2001年、イチローがシアトル・マリナーズの1番打者に座ってから、今年までのレギュラー野手陣のRCを棒グラフにしてみることにした。

ご承知の通りRC=RUN CREATEは、得点を生み出すために必要なあらゆる要素(安打、長打、四球、盗塁、犠打、犠飛など)を盛り込んだ、オフェンスの総合的な数値だ。100を超えれば強打者だと言われる。当然のことながら本塁打の多い打者ほどRCは高くなる。

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イチローはアルバート・プホルズとならんで、2010年までデビュー以来10年連続RC100を達成してきた。しかし2011年200本安打が潰えるとともにRCも100を割って74.8にまで落ち込んだ。

で、ありながら2011年もチームでは最高のRCなのだ。歴史的と言われる貧打線をここからも見ることが出来る。イチローは貧打線の中にそびえる孤峰だったのだ。

イチローの孤峰状態は、2009年から続いている。ラウル・イバニェスがフィラデルフィア・フィリーズ=PHIに移籍してからチームは重量級の大物打者を補強することをやめた。そのために、イチローに次ぐ高さの打者がいない状態が続いているのだ。

弱いチームの打線というのは、往々にしてこういう山型を描くものだ。しかし、SEAが異常なのはその山型の頂を、シーズンに柵越えを10本程度しか打たない打者が務めていることだ。これは当事者にとって息苦しいことに違いない。

エイドリアン・ベルトレやリッチー・セクソンなど過去に獲得した強打者は「期待外れ」のレッテルを張られたが、こうして見れば彼らがいた時期の方が、打線はまだ強力だった。

さらにさかのぼれば、エドガー・マルチネスが「主」のようにDHで頑張っていた時代、ジョン・オルルードやブレット・ブーンも元気だった時代は、イチローはリードオフマンでありさえすればよかった。打線は山脈として連なり、高い生産性を保っていたのだ。強いチームの打線とはそういうものだ。

これは今年の強豪チームを見ればよくわかることだ。

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強いチームは、一人の強打者ではなく、様々な個性を持つ打者が能力を発揮することで勝ち星を生み出すのだ。

イチローは契約最終年。チームはプリンス・フィルダーをあきらめていないようだが、若手が伸びているにしても、今年、SEAが堂々たる山脈を形成する可能性は限りなく低い。今年も細腕イチローは、打線を背負わなければならない。モチベーションが維持されるのかどうか、心許ない気もする。





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