投球数の話を持ち出したのは、私にはよくわからないことがあるからだ。日本の野球は「投げて肩を鍛えていく」というが、MLBでは「肩は消耗品」ということになっている。どちらが正しいのか。
日本の野球では、キャンプで「投げ込み」をする。集中的に投げることで肩の筋肉が鍛えられるとともに、コントロールもつくとされる。

NPBのキャンプなどでも「○○投手は200球投げた」などというニュースをよく目にする。

選抜北海道代表の遠軽高校は 室内練習場が使える日に ピッチャーが700球ぐらい投げ込みをしていると報道された。
1分に2球投げるとしても6時間近く投げ続けていることになる。
今日取り上げたNPB、MLBの投球数を見てもわかるが、700球と言うのは救援投手ならほぼ半期に投げる投球数に等しい。

今年、ソフトバンクにドラフト1位で入団した東浜巨も、亜細亜大学時代に3連投をしてその後3日で700球を投げ込んだという。

試合でも日本の投手は球数を気にすることなく投げる。
今日の済美高校と広陵高校戦は延長13回になったが、済美の安楽智大は232球、広陵の下石涼太も219球を投げた。
マスコミは、それを手柄のように書きたてた。監督も「それぐらいは平気です」と言っていた。

このあたり、腕が曲がってしまうまで投げ込んだ、明治期の一高投手、守山恒太郎の時代と何も変わっていない。



対照的に、MLBでは、投手の球数は厳格に管理される。試合だけでなく、キャンプでの投げ込みでも、コーチがカウンターをもって球数をチェックしている。

若手の剛腕投手は、実戦でも投球数を制限されることも多い。
ニューヨーク・ヤンキースのジョバ・チェンバレンは100mphの剛速球の持ち主だったが、2008年は100球シーズン150回の制限を設けられていた。
昨年のスティーブン・ストラスバーグはトミー・ジョン手術明けと言うこともあって、トータル160回と言う制限を設け、以後はポストシーズンも含め一切投げさせなかった。

投球が制限されるのは、マウンド上だけではない。ブルペンでの調整も球数が制限される。それどころか、イニングの間のキャッチボールまで禁止される。

MLB側が仕切るWBCは、球数制限ルールが厳格に設けられた。日本チームには違和感があったことだろう。

NPBからMLBに行く投手たちが一番悩むのは、この投球数に関する日米のギャップである。松坂大輔は高校時代から多くの球数を投げる投手だった。また、練習でも投げ込みを続けて制球力をつけるタイプだった。
松坂自身は、現在の苦境を「投げ込みができなかったからだ」と思っているのではないか。
しかしMLB側は「彼は、日本での投球過多がたたって肩を壊した」と思っているかもしれない。

日本でも投球過多は少しずつ問題になってはいるが、まだアマチュア野球では投げ込むのが当たり前になっている。高校で「僕は1日30球以上投げません。それに中2日は開けたい」と主張したら退部させられるだろう。

NPBでは酷使されて早々に姿を消す投手は今も数多い。投手個々の資質の差もあろうが、その中の何人かはMLBスタイルで使われていたら投手寿命を永らえた可能性もあるのではないか。

一方で、MLBでは、あれほど球数制限をしているのに肩やひじを壊す投手が後を絶たない。
DL(故障者リスト)入りする投手も枚挙にいとまがない。小さな故障であってもMLBでは大事を取ってDL入りすることが多いからでもあろうが、投球制限をしている割にその数はNPBと大差がないように思える。

日米の投球数に関する考え方はあまりにもギャップが大きすぎる。
1日700球を投げてきた投手が、アメリカへ行って30球でストップをかけられては、何もできないだろう。反対のケースも同様だ。

球数制限はすべきなのか、必要ないのか。それとも個人によって違うのか。
一朝一夕で結論は出ないのかもしれないが、何らかの科学的な見解は出ないのだろうか。
投手のパーソナルコーチである大友一仁さん(リトルロックハート・ベースボール・ラボラトリー http://littlerockheart.com/)など、専門家に聞いてみたい。

当ブログにも言及されていますが、豊浦彰太郎さんのこのブログに注目→


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