藤浪は腰が細くて胴が縊れていない。そのためにベルトの位置がずり上がって妙に足が長く見えてしまう。ジャージを着た痩せた兄ちゃんと言う感じ。ただ、大物の雰囲気は漂っている。
1回、ヤクルトの1番、田中浩康への初球は内角への150km/hの糸を引くようなまっすぐ。高卒プロ入りの第1球としては実に見事。胸のすくような球だった。
田中は2球目をひっかけて一ゴロ。しかしこれを新井良太が、ミットですくいきれずエラー。冴えない船出だ。
藤浪はストライクが入らない。低いか高いか、内か外か、はっきり外れている。上田が歩く。
ヤクルトの各打者はボールを見はじめた。ミレッジの大きな右邪飛で田中は三塁へ。畠山の当たりはよくなかったが中前に落ちるタイムリー。
以後、藤浪はストライクを入れようとするが、制球は定まらなかった。カッターを投げたが、変化がはっきりしている。
2回、球速は140km/h台になる。しかしストライクが入らない。速球がシュート回転している。打者二人を歩かせて、ピンチを招くが、ここから三者三振。ヤクルト打線は狙い球が定まらないようだ。
先発投手が三振でしかアウトが取れないのは、決して良い状態だとは思えない。球数が増えるし、腕をしっかり振る力投が続き、スタミナを消耗するからだ。
3回以降、藤浪のコントロールが安定してきた。フォークボールを決め球に使い始めたが、これが有効。シュート回転する速球も打ちにくそうだ。
ヤクルト各打者は集中力を失いつつあるようで、早打ちが目立つようになった。さすがに高校時代から一人で投げてきただけに、ペース配分がわかっている。
しかし阪神は援護射撃ができない。5回には藤浪が大きな中飛を打ったが、これが場内を沸かせたぐらいで、一昨日の勢いは全くなかった(それにしてもミレッジの肩は恐ろしい)。
阪神は早くも貧打病か。
6回裏、2者が凡退したが藤浪の速球を芯でとらえ始める。雄平の2球目、フォークが落ちず高めに入ったところを思い切って振りぬかれる。右翼中段に落ちる本塁打。失点2、自責点1。
6回105球。球数制限はあったのか?
上々の滑り出しと言うところだろうが、ヤクルトはバレンティンがいない。打線が万全ならば打ち込まれた可能性もあろう。それ以前に四球で自滅した可能性もあった。負けはしたが、幸運だったようにも思う。
球種で見ると、藤浪は角度を活かした縦の変化はあるが、横の変化球が少ない。緩急を活かす球も少ない。各球団の打線が温まってくるとともに、打ち込まれるのではないだろうか。
率直に言って、高校時代の貯金で投げているような感があった。
ポテンシャルがわかり、問題点もわかった時点で、深手を負う前に一度おさらいをする選択肢もあると思う。
阪神首脳陣は「故障しない限り、藤浪を絶対に外さない」と言っているようだが、もう少し柔軟な育成をすべきだと思う。
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クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。1973年セリーグの救援投手
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序盤あれだけ球が荒れると、点を取るために意思統一して狙い球を絞る・走者を進めるというヤクルトのバッティングはなかなかさせてもらえませんでした。
とんでもないボール球の次に低めの良い所に決まったりするので、「ストライクとボールがはっきりしているから、ゾーンを狭めて打てる球に絞る」というのも簡単ではなかったようですね。
あくまでも今日1試合だけの印象ですが、狙って投げる良いボールと、なんとなく投げているような無駄なボール(あるいは打ち頃の球)の落差が極端です。
これと同じピッチングをしていたら、巨人やヤクルトのように、点を取るための役割分担がはっきりしている打線には打たれると感じました。
そうしたボールの精度を磨くことに加え、将来完投できるスタミナと力の抜き方を身につけること、今後20年投げ続ける体力を蓄えること、無駄な故障のリスクを負わない打席での立ち振る舞い、これから敵も味方もデータが増えていく中での戦い方。その他にも素人には分からないあれやこれやがあるでしょう。
いくつか別々の土台が必要なこれらの課題を、「一軍ローテを守りながら」という、プレッシャーもペース配分の制約もある条件で積み上げていくのが果たして近道なのか、個人的にも疑問です。
もっとも、同リーグ他球団のファンとしては、目先のことだけを言えば、それで苦しんでくれる方が助かるんですけども。