日本人MLB先発投手は、3人とも9試合を投げた。3人ともかつてない好調である。それぞれに持ち味を出して所属球団のエース、準エース格になっている。3人の詳細な比較をしてみたい。
3投手について各STATSの数値とそのリーグ順位で比較する。えんじ色はアリーグ全投手での順位、その他は規定投球回数以上。1位のSTATSを濃い水色、10位以内に入っているSTATSを水色で示した。

Dar-Iwa-Kuro


総合力では勝利数と奪三振数でダルが1位、リーグを代表するパワーピッチャーである。
DIPSはセイバーメトリクスの研究者ボロス・マクラッケンの提唱した数値。本塁打以外の安打は運によるものと割り切って、被本塁打、奪三振、与四死球だけで算出した数値。この数値がERAよりも高い投手は実力以上の成績を上げていることになるとされる。
ダルはERAとDIPSが近い値になっているが、他の2投手はDIPSがかなり悪い。

安定感はQS(6回以上投げて3自責点以下)数、QS%、WHIP。岩隈は9回登板して8回QS。QS%ともに1位タイ。他の2投手を上回っている。
WHIP(安打、四死球での1回あたりの出塁数)は3人ともに1を割る素晴らしい成績だが、岩隈がリーグ1位。

圧倒力は、三振を奪う力と安打、長打を打たせない力と規定した。
三振はダルが断トツ。被安打率は3人ともに素晴らしい数字だ。被長打率で黒田が他の二人を上回る。そして被OPSでは岩隈が1位。
このグループの数字がきわめて優秀なのが、日本人投手の特長だ。3人とも打者には非常に攻めにくい投手なのだ。



制球は、BB9、SO/BBと併殺打数。岩隈のBB9はリーグ3位、SO/BBもリーグ2位。投球の精度が高い。併殺が少ないのは3人ともにゴロを打たせる投球ではないということだ。

スタミナはイニング数とNP(投球数)。ダルは投球数でリーグ2位、先日の130球は今季1位。対照的に岩隈は、100球以上投げた試合が1つしかない。7試合は80-99球。黒田は初戦のKOを除いて100-119球の間で投げている。

効率。NP/G(1試合当たりの投球数)は、ダルビッシュがリーグ2番目に多い。反対に岩隈はリーグ4番目に少ない。
NP/IP(イニングあたりの投球数)になると岩隈が1位。際立って効率が良い投手であることが分かる。
NP/PA(1打者当たりの投球数)、これは奪三振数と関係がある。三振を多くとる投手は打たせて取る投手よりも数字が大きくなる。

さらに運。BABIPは前述のセイバーメトリクスの研究家ボロス・マクラッケンが提唱した、本塁打以外の打率。これは投手の実力に関わりなく3割前後になるとされ、この数値が3割よりも低い場合は、長期的に見れば被安打率は悪化するとされる。
これで見る限り、3投手ともにペナントレースが深まるとともに被安打率は嵩んでいくという予想になる。

RSはその投手が投げているときの味方の援護点。ER(自責点)と比較した。ダルビッシュはリーグ1位の援護をもらっている。楽勝パターンが多いのだ。岩隈、黒田も援護点は小さくない。
RSAは9回換算した援護点。これを防御率、さらに1試合当たりのチーム平均得点と比較した。
3投手ともに先発登板時には味方がいつもより多く援護点をあげていることがわかる。特にダルビッシュは強烈だ。
岩隈の僚友フェリックス・ヘルナンデスはRSAが3.11しかない。これで5勝2敗。苦戦の連続であることが分かる。



予想は単純に残り試合数から換算した。こうなると3人ともサイ・ヤング賞候補。ダルは300奪三振超え。

数字の上では3人とも今後はやや悪化するとの予想だが、果たしてどうなるだろうか。



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