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前日にうって変わって、昨日の台湾は晴れ。強烈な暑さとなった。今日もマニーを見に行く。土曜日は現地時間午後5時から試合がある。
グランドでは、マニーが所属する義大の打撃練習が始まっている。
いた、マニーが。
白いシャツでバッティングケージに入った。
3~4球ほど打つと交代する、MLBスタイルの打撃練習。
スイングが他の選手と全然違う。打ちそこないがほとんどない。ほとんどの打球は唸りを上げてフェンス際まで行く。すでにかなり詰めかけたスタンドが沸く。

見ていてわかるのは、漫然とバットを振っている台湾選手と違い、一球一球全力でバットを振りぬいていることだ。そういう習慣が身についているのだろう。心を込めて振っているという印象がある。

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ケージの外ではあまり他の選手とは話さない。おそらく言葉の問題もあるだろうし、台湾の選手には近寄りがたくもあろう。ケージ外でも、スイングの確認に余念がない。
偉大な選手の一面を見た。

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試合も前日と違って、引き締まった好ゲームだった。その原因はただ一つ。両軍ともに先発投手が外国人だったのだ。
先発はLamigoが雷力、ピッツバーグ、デトロイトなどのマイナーで投げ、昨年は米独立リーグにいたマイク・ロリー。義大が希克、カンザスシティで2005年から3年間投げて3勝1セーブしたアンディ・シスコ。CPBL(台湾リーグ)では選手成績、ことに投手成績は外国人が上位を占める。昨日時点でも希克がERA1位、雷力が4位。

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台湾人投手は大きく見劣りする。このリーグが常に打高投低になるのはそのためだ。王建民や、陳偉殷(チェン)などトップクラスの素材はCPBLに行かず、NPBやMLBに行ってしまうからだ。

雷力、希克ともに140㎞/h代の速球とスライダーを投げる。NPBやMLBでは普通だが、CPBLではこのレベルの投手がなかなか打てないために、投手戦になる。

マニーは1回目の打席は走者を1,3塁において三ゴロ。
相変わらず各打者は簡単に打って出る。外国人投手の成績が良いのは、そのためもあるだろう。
しかし最下位のLamigoはよく振れている。2回、WBC台湾代表の控え捕手だった林泓育の二塁打を足がかりに1点。

3回には義大が下位打線で追いつく。4回にLamigoも下位打線の安打、盗塁で1点。

以後2対1のままでこう着状態に。

昨日、強烈な臭いで我々を出迎えた「臭豆腐」の前には行列ができている。彼らは匂いをスタジアム中に広げていく。
若いアベックが楽しげに食べている。思わずカメラを向けてしまった。

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この二人は野球が終わってそのまま帰ったりしないだろう。匂いを振りまきながら、何を語り合うのだろうか。

昨日に増して応援が凄まじい。こちらの応援は、人々を一刻たりともスタジアム内に注目させまいと考えているようだ。大音量の音楽と、チアリーダーの男のがなり声、鳴り物、さらに拍手の効果音。
「野球の試合なんて面白いはずがない、と思ってるんでしょうね」
と豊浦彰太郎さん。
身もふたもない話だが、そういうことだろう。

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だから、見巧者、野球通みたいなファンがほとんどいない。
ストライクボールやアウトセーフの際どい判定でため息が出たり、ファインプレーに特に大きな拍手をしたりすることはまずない。
フライが飛べば大騒ぎ。敵がアウトになれば大喜び。試合の内容ではなく、結果にひたすら反応している。
日本では「ホームラン!あべしんのすーけ」とか叫んでいるお兄ちゃんでも、「今日の杉内は球が高いな」くらいのことは言う。野球文化が定着しているのだが、わずか25年の歴史の台湾プロ野球では、人々の知識が深まる前に「馬鹿騒ぎの時代」を迎えてしまった。
6回には「プロポーズタイム」男がスタンドで彼女に告白をする。大盛り上がりしすぎて、試合が中断したが、だれも文句を言わなかった。
スタンド踊っている人たちは、おそらくは一過性の情熱だ。CPBLの将来が思いやられる。

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7回、1点ずつを取り合った両チーム。義大2-3Lamigoの1点差で最終回。ここまでのマニー・ラミレスは3タコ(三ゴロ、三振、左飛)。ストライクは全部振っている。
投手はこの回から徳本、JD・ダービン。2010年ソフトバンクで投げていたダービンだ。MLB経験はない。
マニーは初球のストライクを見逃す。打席を外すと「なるほどね」という感じで軽く頭を振って、二球目

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高めの速球を薙ぎ払うように見事に中前に弾き返した。1球目で球速、球道を確認し、2球目でそれにアジャストした、という感じ。

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まさに格の違いを見せつけた。三塁側、義大スタンドの大声援を受けながら、一塁で代走と交代。楽しそうである。
マニーに続く打者が凡退して、試合はそのままLamigoの勝ち。

派手な花火が打ちあがった。

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「マニーに、MLBから声がかかることは無いでしょう。でも引退後の生活が想像できないから、現役にこだわっているんじゃないですか」と豊浦さん。
「Lamigoのチアガールは、アイドルみたいになっています。特定のファンがいるんですよ」とMuneharu Uchinoさん。
よく煮込まれ香草の匂いが鮮烈なカキそばや、甘いおでんをつつきながら、屋台での野球談議は深まっていった。
良い旅だった。



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