「マネーボール」と「スモールボール」はよく混同されるが、似て非なるものだ。
「マネーボール」のポイントはすでに述べた。選球眼と長打を重視し、打率や打点を意味がないとする。また、犠打や犠飛、盗塁などは統計学的に勝利に結びつかないとする。

「スモールボール」は、長打に頼らず、出塁した走者をバントやエンドラン、盗塁で先の塁に進め、得点に結びつけるものだ。

その点では、2者は180度違う戦略だと言えるが、選球眼を重視する点は同じだ。
また選手獲得面では、ともにタイトルを取るような年俸の高い選手ではなく、わき役タイプの選手を発掘して使うと言う意味で、共通点もある。

監督の采配は「マネーボール」と「スモールボール」では全く異なる。
「マネーボール」では、監督は試合が始まると、ほとんど動かない。データに基づいて選手を交代させる程度だ。しかし「スモールボール」では、試合中の監督は実に忙しい。臨機応変にサインを送って選手を動かす。

オークランド・アスレチックスは、「マネーボール」の本家として忠実にセオリーを守ってきた。しかし、最近の試合を見ると、これまでにない展開が散見される。

6/18のテキサス・レンジャーズ戦では2回、安打で出たジョシュ・レディックが盗塁し、次打者ソガードの安打で帰ってきた。
6/16のシアトル・マリナーズ戦では、4回、無死一塁でロサレスがバントで走者レディックを二塁に送っている。
6/13のニューヨーク・ヤンキース戦では3回、四球のクリス・ヤングと安打のエリック・ソガードがダブルスチール。続くノリスの遊ゴロでヤングが帰っている(そのあと、三盗を狙ったソガードは刺されている)。

オークランドの盗塁と犠打の記録を見てみよう。Rkはそれぞれのリーグ順位。

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14球団のアリーグで、オークランドは盗塁、犠飛ともにずっと最低ランクだった。「マネーボール」のセオリーに従っていたのだ。
ところが、2008年から突然盗塁数が増加する。
これは、ラジャイ・デービスと言う選手の加入が大きかったようだ。
この年、ビリー・ビーン子飼いのニック・スイッシャ―を年俸高騰に伴ってシカゴ・ホワイトソックスにトレード。
サンフランシスコ・ジャイアンツからシーズン途中にやってきたラジャイは、三振が多くて四球が少ない、マネーボールには向かない選手だったが、当時の監督、ボブ・ゲランはこの選手を自由に走らせた。これが盗塁数の増加につながった。2年半の在籍中にラジャイは116盗塁した。

マネーボール的には「戦略のブレ」ともいうべきものだったが、こうした経験を積むうちに、チームは「盗塁の効用」を学んだのではないだろうか。

2010年、オークランドはココ・クリスプを獲得。チームはその広い守備範囲とともに、抜群の脚力にも着目した。オークランドはココに「走れ」と指令しているはずである。積極的な走塁で、チャンスを広げることを期待しているはずだ。
これまで28盗塁がキャリアハイだったココは、入団後32、49(盗塁王)、39と走りまくった。

チームは必要とあれば犠打も用いるようになった。2010年にはダリック・バートンとクリフ・ぺニントンが各12犠打。

これまで、オークランド・アスレチックスは、出塁するまでは実にしぶとかったが、ひとたび塁に出た走者は、次打者の打撃以外ではほとんど動かなかった。投手にしてみれば「安全な走者」だったのだ。

しかし、今のオークランドは動いてくる。これが以前との大きな違いだ。
ただし、盗塁、犠打をするのは「その能力がある」選手に限られている。今季、犠打数が少ないのは、適任者がいないからだろう。

「マネーボールⅡ」とは、「小技を柔軟に併用するマネーボール」である。今のところ、そのメリットは十分に表れていると思われる。

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