
先週末、女子プロ野球を観戦したので、私の腕は赤銅色になっている。この時期、NPBはナイターが多いから、こんな色にはならない。この赤銅色が褪せないうちに、女子プロ野球についてもう1本書いておきたい。
土曜日、試合観戦後、長谷川晶一さんにお誘いいただき、ファンの皆さんの打ち上げに参加させていただいた。
ウェストフローラのファンの方が多かった。鳴り物入りで応援していた方もいる。
NPBの応援団の中には非常に傲慢な態度の人がいる。あたかも特権階級のように振る舞ったり、若手選手を呼び捨てにしたり、相手チームの選手に聞くに堪えない罵声を浴びせかけたり。私はそういう勘違い応援団が嫌いなのだが、女子野球のファンの方々は全く違っていた。
全国を転戦する女子野球を、手弁当で追いかけている。贔屓の選手を一生懸命応援するのは当たり前だが、その選手だけでなく、チーム全体、そして相手チームの選手も含め、女子野球全体を応援している。非常に優しい男たちだった。
まだ女子野球が弱体だからだろうが、「女子野球が好き」という前提があって「選手が好き」があるというのは、誠に正しい姿勢だと思えた。
今季から体制が大きく変わったことには、不安を抱いている人が多かった。異口同音に訴えたのは、観客動員が減っていることだ。過去の観客動員。

2012年の数字は推定。
2011年まで順調に推移した観客動員は、球団数が2から3に増えた2012年に激減、体制が大きく変わった今年はやや持ち直したように見えるが、ティアラカップは入れ替えなしのダブルヘッダーで2試合の観客数を加算しているから、実質的には目減りしている。
2012年は、球団増に伴って選手が分散したことが影響したのかもしれない。またやや飽きられた感があったかもしれない。
こうした現状を打破すべく、今年は3年間培ってきた関西地区でのファン層をかなぐり捨てて、全国に市場を求めた。新規まき直しだから観客動員が減るのはやむなしとも言えなくはない。しかし、どんなビジネスでもリピーターがいなければ成り立たない。同じ形態で数年間続けることができるのなら、ファンの定着も期待できるが、常に新規顧客を求めるような興行は、無謀だと言えよう。

しかも今季はレギュレーションや体制が混乱した。当初、4球団は株式会社として独立すると発表されたが、経営主体が確立できず、今も機構の管理下にある。
機構側がセカンドキャリア対策として義務付けた資格取得補助制度で、国家試験が受験できなかった選手にスタメン出場禁止などのペナルティを課した。その中には有名選手が混じっていた。観客動員を考えれば、機構側は自分で自分の首を絞めるような愚を犯したのだ。
こうしたドラスティックすぎる政策が敢行されるのは、事実上、女子野球が「わかさ生活」というスポンサーの支援によって支えられているからだと言われる。「鶴の一声」で政策が変わってしまうのだ。
打ち上げの席で、口々にこういう話が出た。和やか雰囲気だったが、真剣な話をしていたのだ。
ファンの人々にしても、昨年までは京都や福知山など関西圏を移動するだけで良かったのが、今年は全国を回らなければならない。既存客を振り落とそうとする機構に抗って、必死について行っているという感がある。本当に得難いファンである。


「女子プロ野球はレベルが低いから見に行かない」という人がいるが、それは野球ファンではないと思う。
高校野球は、ぽろぽろエラーはするし、力量はプロに大きく劣るが、それでも熱狂的な観客がいる。野球はレベルの高さだけでなく、一生懸命さに感動したり、成長する過程をともに喜んだりすることもできるのだ。
女子プロ野球は確かにアームは弱く、足は遅く、パワーはないが、それでもスリリングなシーンはいっぱいある。また、年ごとにパワーがついてくる打者を見るのもうれしい。
野球ファンにとって、十分に見るに堪えるコンテンツなのは間違いがない。

決定的に足りないのは「資金」だ。
ティアラカップでは、延長戦はなく、同点の場合はくじ引きとなる。これは球場使用料の延長金を支払いたくないからだ。また、効果的なPRもできていない。
女子プロ野球機構=JWBLはNPBとの連携を強めているとのこと。それ自体は喜ばしいが、NPBから資金援助を得たり、ビジネスやマーケティングで連携したりすることは望めないだろう。そもそもNPB自体がスポーツビジネスの「素人」なのだから。
日本ではこの手の野球興行の「成功体験」が一つもないのだ。プロ野球自体が「企業の広告媒体」の域を出ていない。
そういう意味では、JWBLの試行錯誤もやむを得ないことなのかもしれない。スポンサーが独断専行するのもやむなしだ。「わかさ生活」が手を放せば、女子野球は一瞬で霧散することと思われるのだから。
スポンサーの体力が続くうちに、そしてファンの方々が家族から「いい加減に帰っておいで!」と言われないうちに、新しい支援者が出てこないものだろうか。
ソフトバンクさん、去年、ブラッド・ペニー支払った年俸くらいで、女子野球のトップリーグの大旦那になることができるのですが、いかがですか。人間の半分は女性ですよ!
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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ウェストフローラのファンの方が多かった。鳴り物入りで応援していた方もいる。
NPBの応援団の中には非常に傲慢な態度の人がいる。あたかも特権階級のように振る舞ったり、若手選手を呼び捨てにしたり、相手チームの選手に聞くに堪えない罵声を浴びせかけたり。私はそういう勘違い応援団が嫌いなのだが、女子野球のファンの方々は全く違っていた。
全国を転戦する女子野球を、手弁当で追いかけている。贔屓の選手を一生懸命応援するのは当たり前だが、その選手だけでなく、チーム全体、そして相手チームの選手も含め、女子野球全体を応援している。非常に優しい男たちだった。
まだ女子野球が弱体だからだろうが、「女子野球が好き」という前提があって「選手が好き」があるというのは、誠に正しい姿勢だと思えた。
今季から体制が大きく変わったことには、不安を抱いている人が多かった。異口同音に訴えたのは、観客動員が減っていることだ。過去の観客動員。

2012年の数字は推定。
2011年まで順調に推移した観客動員は、球団数が2から3に増えた2012年に激減、体制が大きく変わった今年はやや持ち直したように見えるが、ティアラカップは入れ替えなしのダブルヘッダーで2試合の観客数を加算しているから、実質的には目減りしている。
2012年は、球団増に伴って選手が分散したことが影響したのかもしれない。またやや飽きられた感があったかもしれない。
こうした現状を打破すべく、今年は3年間培ってきた関西地区でのファン層をかなぐり捨てて、全国に市場を求めた。新規まき直しだから観客動員が減るのはやむなしとも言えなくはない。しかし、どんなビジネスでもリピーターがいなければ成り立たない。同じ形態で数年間続けることができるのなら、ファンの定着も期待できるが、常に新規顧客を求めるような興行は、無謀だと言えよう。

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女子プロ野球は確かにアームは弱く、足は遅く、パワーはないが、それでもスリリングなシーンはいっぱいある。また、年ごとにパワーがついてくる打者を見るのもうれしい。
野球ファンにとって、十分に見るに堪えるコンテンツなのは間違いがない。

決定的に足りないのは「資金」だ。
ティアラカップでは、延長戦はなく、同点の場合はくじ引きとなる。これは球場使用料の延長金を支払いたくないからだ。また、効果的なPRもできていない。
女子プロ野球機構=JWBLはNPBとの連携を強めているとのこと。それ自体は喜ばしいが、NPBから資金援助を得たり、ビジネスやマーケティングで連携したりすることは望めないだろう。そもそもNPB自体がスポーツビジネスの「素人」なのだから。
日本ではこの手の野球興行の「成功体験」が一つもないのだ。プロ野球自体が「企業の広告媒体」の域を出ていない。
そういう意味では、JWBLの試行錯誤もやむを得ないことなのかもしれない。スポンサーが独断専行するのもやむなしだ。「わかさ生活」が手を放せば、女子野球は一瞬で霧散することと思われるのだから。
スポンサーの体力が続くうちに、そしてファンの方々が家族から「いい加減に帰っておいで!」と言われないうちに、新しい支援者が出てこないものだろうか。
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ここにある記事も含めて、昨今ではスタジアムにいる「応援団」の応援のあり方、存在意義について考えさせられることが多いように思います。
鳴り物がどうだとか、そういったことは些末な問題なのであって、もっと深刻なところで問題が生じているように思うのです。
女子野球の応援をする人たちもそうですが、最近ではJリーグのゴール裏のサポーターたちの行動にも注目が集まっています。
今、Jリーグでは観客動員の増加をもくろんで、かつて行われていた2ステージ制を復活させようという動きがあります(以前、パ・リーグで行われていた前期・後期制のようなものです)。
これに対して、浦和レッズを筆頭に、各チームのサポーターが反対の意思を横断幕によって反対の意思を示したことが新聞紙上で取り上げられました。
スタジアムの一角を占拠して大声で歌いながら応援するという点で、NPBの応援団と似ているようにも思いますが、両者の決定的な違いは、たぶんリーグやそのスポーツを全体を盛り上げる意思があるかないか、その差だと思います。
Jリーグもプロスポーツとしては後発であり、女子野球も独立リーグもマイナーな存在からの出発であるのに対し、NPBは長い歴史があり、その人気に胡坐をかいているところが、経営陣だけではなく、案外、応援団の中にもあるのかもしれません。
NPBではコミッショナーの問題など、多くの問題が山積していますが、応援団とやらに言いたいのは、日ごろから横柄な態度でファンの代表を気取るのであれば、外野席を占拠してただ鳴り物を鳴らすだけにとどまらず、もっとNPB全体のことを考えて行動できないものかと思ってしまいます。
最も、NPB各球団自体にまとまりがなく、全体として改革に臨む気概がない以上、応援団にもそういう発想がないのかもしれませんが……