野球ファンにとって、春は「選手名鑑」とともにやってくる。

試合のない寒い季節を経て、ようやくキャンプ。各球団の補強も終わり、陣容が定まってくると、書店店頭に色とりどりの「選手名鑑」が並ぶのだ。
早くもベースボールマガジン社から大きいサイズのが出ている。



プロ野球選手カラー名鑑2012



毎年、うれしくなって、何冊か買うのだが、いつも不満が残る。

記録ファンとしては、キャリアSTATSが貧弱な名鑑が多いのは気に入らない。昨年の成績が申し訳程度に載っているだけだったり、通算成績が無かったり。プロ野球選手は、数字で評価されるのだから、きっちり載せてほしい。年俸もSTATSの内だと思う。

そのくせ、どうでもいい情報が載っている名鑑も多い。たとえば好きな女性のタイプ、乗ってるクルマ、趣味。各選手にアンケートするのだろうが、700人近い野球選手にわざわざ聞くべきこととは思えない。試合を見ながら「あ、この投手は上戸彩タイプが好きなのか。この打者は料理好きな女性がいいのか」などと思う人がいないとは思わないが、それは野球ファンの本筋ではないでしょう。

それ以上に不満が残るのは、選手個別の解説。ほとんどの名鑑が、昨年あるいはこれまでの実績を紹介して「今年は勝負の年」とか「若い者には負けない」などとしめくくっている。別に選手の家族や親せきではないので、そんなこと言われてもなあと思う。

実績は数字やキャリアでしっかり書いて、解説では選手の特徴、見どころを抑えてほしい。「選手名鑑」は観戦の友なのだから。たとえば内野守備なら「ゴロさばきが巧み」とか「強肩」。投手なら「150km/h超の2シームとスライダー」。打撃では「速い球に強い」「バントが巧み」。また故障についてもしっかり書いてほしい。これは無理かもしれないが、「スローイングが美しい」とか、「迫力あるベースランニング」などもほしい。

一方で、やたらデータを駆使しまくった本もある。打者の強み弱みをストライクゾーンの図で表していたり、得意な投手、苦手投手を対戦成績とともに出していたり。これを全選手でやっている。打数が数百もある選手ならデータの信ぴょう性はあるだろうが、十打数程度の選手まで同じことをやるからインコース高めの打率1.000なんてすごい数字が載ったりする。こういう本は解説が貧弱だ。データページを作るのに精いっぱいという感じだ。

以前にも書いたが、私が思うベストの「選手名鑑」は、『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑』(廣済堂出版)だ。700人を超すメジャーリーガーの長所、短所をコンパクトに紹介している。選手のキャラや見どころがわかる。こういう本はバックナンバーもとっておきたくなる。
メジャーリーグ完全データ選手名鑑2012






残念ながらこの本に匹敵するNPBの名鑑は見当たらない。だからベースボールマガジン社の文庫サイズの小さい本を携行することになる。





宇佐美徹也さんの『プロ野球全記録』は、主要選手のSTATS、打者の特徴がコンパクトに紹介されていて読みごたえがあった。まさにこれぞ記録好きのための「選手名鑑」だった。こういう本はぜひ復刊していただきたい。





ちょっと変わった名鑑として、例の白夜ムックから4月頃に出る『世界野球選手名鑑』は、NPB、MLBからアマチュア野球、アジア、中南米の野球選手まで2000名を超す選手を網羅。こうなると完全に読み物だ。





ほしいのは「数字」と「言葉」だ。しっかりデータを抑えたうえで、毎日毎日プロ野球を見ているプロ記者ならではの選手評を載せてほしい。

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