2007年から2012年までに、NPBで3000球以上投げた投手はのべ30人いる。
そのリスト。球数は独自集計なので、間違いがあるかもしれません。

NP-NPB


3000球とは1回を15球で片づけるとすれば、200回と言うことになる。実際にはもう少し投球回は少なくなるが。

杉内は、2007年から4年連続で3000球を投げたが、この2年は届かない。今季も現時点で1891球だから、3000球には届かない。

成瀬善久も3年連続で3000球を投げてきたが、今季は規定投球回数に入っていない。

ダルビッシュは2010年から連続で3000球を投げ、そのままMLBでも3166球。今季は3400球に達するだろう。

前田健太も3年連続で3000球を投げたが、今季は2500球前後にとどまるはずだ。

三浦大輔は2006、2007、2009年に3000球、今季も3000球近くは投げそうだ。

ちなみに内海哲也は2006年に3000球を投げ、以後、3000球に達してはいないが、2800球前後を常に投げている。

こうしてみると、3000球を2年連続で投げることができる投手は、限られていることが分かる。

先週の「野球好きニュース」で「3000球が危険水域」と言ったのは、このデータに拠る。
しかし、これはあくまでNPBの常識だ。
MLBでは3000球は当たり前である。

同時期のMLBで3000球以上を4回以上記録した投手。

NP-MLB


MLBでは毎年、3000球以上投げる投手は60人前後。1球団に2人はいる計算になる。
この6年で2回以上3000球を投げた投手は黒田博樹も含めて70人ほどいる。

マーク・バーリは2001年から12年連続、フェリックス・ヘルナンデスは2006年から7年連続、ジャスティン・バーランダー、CCサバシア、ジェームズ・シールズは2007年から6年連続。

MLBでは3000球とは、先発投手の合格ラインと言っても良いかもしれない。

MLBの球団数はNPBの2.5倍。同じ比率で行くならば、NPBにも毎年15人前後はいなければならない。MLBは162試合、NPBは144試合であることを勘案しても、少なくとも10人は3000球投手が出なければならない。

しかし、NPBで3000球を投げる投手は稀、まして連続で投げる投手は一握りしかいない。

ここから導き出されるのは、2つの仮説だ。

1)NPBの投手はMLBの投手よりスタミナがない。そして脆弱なために少し投げ過ぎるとすぐに故障する。

2)NPBの投手はMLBの投手よりも練習、調整の方法で劣っている。そのために、長く安定的に投げられない。

当然、2)だろうと思う。

NPBの投手は春先から投げ込んで肩を作る。そして、シーズン中も投げ込みをすることさえある。藤浪晋太郎はローテの間に200球も投げることがあると言う。また、回の間には入念にキャッチボールをする。これをカウントするかどうかは意見が分かれるだろうが、同じ3000球といっても、NPBとMLBでは肩の消耗度が大きく違うはずだ。

NPBでは、数多く投げることで制球が定まり、球威も増すという考えから、練習や調整でもたくさんボールを投げる。それは高校野球以来の伝統と言っても良い。
率直に言えば「投げ込み過ぎ」のために、NPBの投手は多くの球数を投げることができないし、すぐに故障するのだと思う。

150回、2000球も投げれば立派な先発投手とみなされるNPBでは、今の球数を費やす練習法でも通用するかもしれない。
しかし、毎年3000球を投げてはじめて一流とみなされるMLBでは、消耗を最小限にするために、僅かのトレーニングで肩を作り込むことができるように調整法を考えなければならない。



野茂英雄やダルビッシュがMLBに挑戦するにあたって、ウェイトトレーニングをするなど練習法を変えたのは、まさしく日米の「投球観」の違いを理解していたからだ。
それを理解できなかった投手=典型として松坂大輔、は長く活躍することはできなかった。

もちろん、個人の能力差も考慮しなければならないが、日米の野球の「スケールの差」が、こうしたギャップを生んでいると思う。


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!



広尾晃 野球記録の本、アマゾンでも販売しています。




クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。1959年セリーグ救援投手陣
Classic Stats