この頃は慣れっこになったが、NPBのペナントレースを見ていると、各球団は「本当は優勝したくないのではないか」と思えるときがある。
優勝間際になっても、中々エンジンがかからないのだ。
今季、昨日までのNPB各球団の直近10試合の成績
優勝争いをしているはずの球団が、勝ったり負けたりしている。とても勢いを増しているとは思えない。
唯一、西武がソフトバンクを急追していて、これがパリーグのシーズン終幕を面白くしてはいるが、セは静かなものだ。
なぜ盛り上がらないか、それは明白だ。セリーグの場合、ずいぶん早くに大勢が決まってしまって、あとは数字上の「優勝までのカウントダウン=マジック」が減っていくだけだったのだ。
広島と中日の3位争いが少し熱くなったが、あっさり決まってしまった。今は広島と阪神の2位争いが少しあるだけ。これもCSのホームチームを決めるだけだからそんなに盛り上がらない。
パリーグの場合は、楽天とロッテに多少競り合いがあったがそれも終わって、あとはロッテ、ソフトバンク、西武のCS進出争い。しかし、西武はともかく、ロッテとソフトバンクは競り合いの中でも勝ち星は上がらない。
MLBの同様の表を見てみよう。
MLBでは各地区1位と、それ以外のチームの勝率上位2球団がワイルドカードでポストシーズンに進出できる。
今季も、優勝争いとワイルドカード争いが展開されたのだが、小さなゲーム差で競っている球団は最後の10試合はみんな勝率がいい。今日敗退したがクリーブランドは10連勝、テキサスやタンパベイも8勝。
よく、NPBにきた外国人選手がシーズン終盤に頑張るのを日本人は「帳尻合わせをしている」と揶揄するが、帳尻を合わせるべき時に本気で力が出ないと、結果は出せないはずだ。
MLBは個人だけでなく、チームも帳尻を合わせるためにしゃかりきになる。だから終盤が異常なほど盛り上がる。
がんばって勝ち星を挙げるべき時に頑張れない。火事場の馬鹿力が出ないのは、NPBというより日本人の特性なのかもしれない。
そういう国民性の問題もあるが、それ以上に、MLBではペナントレースを盛り上げるために非常な努力をしている。
各球団の試合数が大きく違わないようにするため、日程を詰め、雨などで流れた試合をあいた日にとにかく押し込んでいる。
日程消化を過密にして、常にチームの勝敗、ゲーム差が分かるようにしている。
日本にはある「引分け」がないために、MLBは「相星」になりやすい。これもペナントを盛り上げる要素になっている。
ワイルド・カードと言う「奇手」は、ペナントレースを面白いものにした。2位以下のチームで地区をまたいだもう一つのペナントレースをする仕組みにしたのだ。
さらに、昨年、バド・セリグコミッショナーの指示でワイルド・カードが2枚になったが、これが予想外の効果となった。2枚のワイルド・カードをめぐる争いは激化し、ワンデー・プレーオフまで行うこととなった。
やらされる選手にはたまったものではないが、過密すぎるスケジュールに文句を言う球団、選手はいない。それでペナントレースが盛り上がり、MLBの注目度が上がれば実入りにつながるからだろう。
NPBのクライマックス・シリーズはMLBのそれとは似て非なるものだ。
NPBでは勝率が何割であっても3位以上なら自動的にポストシーズン進出が決まる。それさえクリアしたらあとは楽なものだ。すぐにクルージングモードになってしまう。CSは悪いシステムだと思う。
さらに言えば、日本は何かと言えば日程を開けすぎる。このために、勢いに乗って連勝をする球団がなかなか出てこない。
またペナントレース中に公式戦がない日が週2日もある日程が、ファンの興趣を殺いでいると思う。
過密なスケジュールは選手を消耗させると言うが、間延びしたスケジュールも盛り上がりを作らないし、選手のコンディション維持を難しいものにする。
ペナントレースの編成には「ノウハウ」「技術」があると思う。細かいことでいえば、ポストシーズンの日程をアナ両リーグで互い違いに組んだり、同じ日でも時間をずらしたりするのもそれだ。ファンが多くの試合をオンタイムで見ることができるようにし、話題を途切れさせないようにしている。MLBではそういう技術を磨きこんでいると思うが、NPBは漫然と日程を組んでいるだけだ。
MLBはお客さんを集めるために日程を組んでいるが、NPBは選手や球団の顔色を見て組んでいる。そんな印象だ。
NPBの改革とは、こういう部分の改革も含むと思う。マーケティング的なことも含めて、お客のためにペナントレースを運営する。そういう発想を持つべきだと思う。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。ホークス、10勝以上の投手一覧
優勝争いをしているはずの球団が、勝ったり負けたりしている。とても勢いを増しているとは思えない。
唯一、西武がソフトバンクを急追していて、これがパリーグのシーズン終幕を面白くしてはいるが、セは静かなものだ。
なぜ盛り上がらないか、それは明白だ。セリーグの場合、ずいぶん早くに大勢が決まってしまって、あとは数字上の「優勝までのカウントダウン=マジック」が減っていくだけだったのだ。
広島と中日の3位争いが少し熱くなったが、あっさり決まってしまった。今は広島と阪神の2位争いが少しあるだけ。これもCSのホームチームを決めるだけだからそんなに盛り上がらない。
パリーグの場合は、楽天とロッテに多少競り合いがあったがそれも終わって、あとはロッテ、ソフトバンク、西武のCS進出争い。しかし、西武はともかく、ロッテとソフトバンクは競り合いの中でも勝ち星は上がらない。
MLBの同様の表を見てみよう。
MLBでは各地区1位と、それ以外のチームの勝率上位2球団がワイルドカードでポストシーズンに進出できる。
今季も、優勝争いとワイルドカード争いが展開されたのだが、小さなゲーム差で競っている球団は最後の10試合はみんな勝率がいい。今日敗退したがクリーブランドは10連勝、テキサスやタンパベイも8勝。
よく、NPBにきた外国人選手がシーズン終盤に頑張るのを日本人は「帳尻合わせをしている」と揶揄するが、帳尻を合わせるべき時に本気で力が出ないと、結果は出せないはずだ。
MLBは個人だけでなく、チームも帳尻を合わせるためにしゃかりきになる。だから終盤が異常なほど盛り上がる。
がんばって勝ち星を挙げるべき時に頑張れない。火事場の馬鹿力が出ないのは、NPBというより日本人の特性なのかもしれない。
そういう国民性の問題もあるが、それ以上に、MLBではペナントレースを盛り上げるために非常な努力をしている。
各球団の試合数が大きく違わないようにするため、日程を詰め、雨などで流れた試合をあいた日にとにかく押し込んでいる。
日程消化を過密にして、常にチームの勝敗、ゲーム差が分かるようにしている。
日本にはある「引分け」がないために、MLBは「相星」になりやすい。これもペナントを盛り上げる要素になっている。
ワイルド・カードと言う「奇手」は、ペナントレースを面白いものにした。2位以下のチームで地区をまたいだもう一つのペナントレースをする仕組みにしたのだ。
さらに、昨年、バド・セリグコミッショナーの指示でワイルド・カードが2枚になったが、これが予想外の効果となった。2枚のワイルド・カードをめぐる争いは激化し、ワンデー・プレーオフまで行うこととなった。
やらされる選手にはたまったものではないが、過密すぎるスケジュールに文句を言う球団、選手はいない。それでペナントレースが盛り上がり、MLBの注目度が上がれば実入りにつながるからだろう。
NPBのクライマックス・シリーズはMLBのそれとは似て非なるものだ。
NPBでは勝率が何割であっても3位以上なら自動的にポストシーズン進出が決まる。それさえクリアしたらあとは楽なものだ。すぐにクルージングモードになってしまう。CSは悪いシステムだと思う。
さらに言えば、日本は何かと言えば日程を開けすぎる。このために、勢いに乗って連勝をする球団がなかなか出てこない。
またペナントレース中に公式戦がない日が週2日もある日程が、ファンの興趣を殺いでいると思う。
過密なスケジュールは選手を消耗させると言うが、間延びしたスケジュールも盛り上がりを作らないし、選手のコンディション維持を難しいものにする。
ペナントレースの編成には「ノウハウ」「技術」があると思う。細かいことでいえば、ポストシーズンの日程をアナ両リーグで互い違いに組んだり、同じ日でも時間をずらしたりするのもそれだ。ファンが多くの試合をオンタイムで見ることができるようにし、話題を途切れさせないようにしている。MLBではそういう技術を磨きこんでいると思うが、NPBは漫然と日程を組んでいるだけだ。
MLBはお客さんを集めるために日程を組んでいるが、NPBは選手や球団の顔色を見て組んでいる。そんな印象だ。
NPBの改革とは、こういう部分の改革も含むと思う。マーケティング的なことも含めて、お客のためにペナントレースを運営する。そういう発想を持つべきだと思う。
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MLBは他の北米メジャースポーツ(NBA・NFL・NHL・MLS等)という明確なライバルがおり、実際かつては北米No.1だった座をいつの間にかNFLやNBAに抜かれてしまい、はっきりとした危機感を各球団が共有しています。
そのため他のメジャースポーツと違い球団間の格差は大きいままですが、それでもリーグとしてある程度は団結して他のメジャースポーツリーグと向き合っている面があります。
コミッショナーの権限についてもNPBとは違いかなりの実権を持っていますが、これは身内で足を引っ張っていては他競技に負けてしまうという状況から已むを得ず生まれたものでもあります。
しかしNPBの場合、日本代表こそサッカーに大きく水を開けられてはいますが、レギュラーシーズンのリーグ戦においては視聴率も観客動員数も大きく他の競技を引き離しています。
その為か未だに大きな危機感をリーグとして共有しておらず、漫然と観客動員を増やそうという動きは当然の経営努力として存在しているものの、リーグ全体として野球という競技をより魅力的に見せようという努力は殆ど行われていません。
特にセ・パの両リーグでの危機感の差は激しく、これを見るに若年層の現状を直視していない一部の経営者たちは、野球の裾野の狭まりをほとんど実感していないのではないでしょうか。
私は以前のクライマックスシリーズの是非を問うエントリでもコメントしましたが、NPBはかつてのような誰もが野球を知っている時代は終わりかけていることを実感し、今後の球界の未来をしっかりとした危機感を持って熟考してほしいと思います。