2009315日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

WBCがはじまってからスターダムにのし上がりつつある投手がいる。キューバのアロルディス・チャプマンである。MLBの公式ロースターには生年月日もない。実際は21歳で、キューバリーグのオルギンの先発左腕である。キューバがもっと苦戦をしたオーストラリア戦で、160km/hの速球を連発して騒がれている。

しかし、STATSを見る限り二線級だ。昨期は16試合に先発して6勝7敗、防御率3.89、74回で被安打55、三振79、四球は34、被本塁打3。コントロールもそこそこで、球威もあるのだろうが、それほどすごい投手とは思えない。

オーストラリア戦の内容を見てみよう。

CUBA-1-3

オーストラリアは1回はフリーで打たせたが、2回以降はじっくりボールを見る作戦に出ている。もちろん球威に押されての凡打や三振もあるが、ボールを見ていくうちに徐々にチャプマンをとらえていく様子がよく分かる。1、2回は6-0だが、3、4回は9-3、特にオエルティン以下の上位打線はじっくりと見てじわじわと打ちこんでいる。チャプマン自身も、途中から各打者にはボールから入るなど、考えてはいるが、ボークも記録するなど、精神的な動揺も見て取れる。4回で投球数が67球に達したので降板したが、もう一度上位打線にまわるまで投げていたら、完全にとらえられたのではないか。

おそるるに足らず、というのが印象である。早打ちのイチローよりは、2番以降の打者がじっくり攻めることで活路が開けるのではないか。基本は待球。待っているうちに良い球が必ず来るだろう。このタイプは乗せると怖いので、早い回に攻め込むことが必要だ。キューバで怖いのは、ベテランの投手陣の方だ。この投手からどれだけ得点できるかだといってよいだろう。

■後日談:チャプマンを見て思ったのは、いい投手と速い球を投げる投手はイコールではないということだ。2010年、MLBでチャプマンは通用するだろうか。