【2009年3月22日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本の野球は、MLBへのあこがれを原動力として成長してきたと言ってよい。ほぼ100年前、日本にやってきた「世界周遊野球チーム」を皮切りとして、MLB選手は来日の度に格の違いをみせつけたものだ。日本人は自らの体格、野球技術が大きく劣ることを痛感させられ、努力を重ねてきたのだ。

戦後になって、MLBの一線級の選手が定期的に試合に来るようになったが、それはあくまでオープン戦であって、真剣勝負は一度もなかった。それでも日本側が勝ち越すことは、ほとんどなかった。

2006年、第一回のWBC、第二ラウンドの日米戦は,初めて実現した両国代表の真剣勝負だった。NPBの憲法ともいうべき日本プロフェッショナル野球協約には、NPBの目的の一つを「(2)わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う。」と定めている。その意味では、野球の本家であり、最高峰でもあるUSA代表との真剣勝負は、日本野球が求めてきた究極の舞台だった。この試合はタッチアップをめぐる誤審で後味の悪いものになったが、イチローの先頭打者ホームランあり、A-RODのサヨナラ安打ありで白熱した試合だった。

明日の試合は、2年前のリベンジでもあると共に、100年の歳月を経て日本がアメリカに挑む2試合目であり、NPBにとって最も重要な試合であるといってもよい。

お叱りを受けるかもしれないが、そのあとの決勝戦は、仮に日本が勝ったとしても今大会5試合目であり、日韓二か国の意地のぶつかりあいである。それはそれで有意義かもしれないが、野球史上では明日の試合こそが重たいと思う。願わくば、USAが今日のベネズエラのように、試合開始30分ほどで戦意を失ったりしないように。極端に言えば、アメリカが格の違いを見せつけて快勝してもそれはそれで納得がいく。お互いが持てる力を出し切った、良い試合を見せてほしい。

思えばWBCは、特にPool-B、C、Dであまりにもレベルの低い試合が多すぎた。録画を見るのが苦痛だった。

せめてその集大成である残り2試合が、心に残る名勝負であってほしい。100年前に大学生相手に放ったトリス・スピーカーの本塁打や、70年前の澤村榮治の快投のように、永く語り草となるような試合が見たい。

■後日談:我々は「歴史の証人」になるために試合を見ているのだ。それにつきる。