2009318日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

J-SPORTSで弟子の節丸アナとともにWBCの実況(スタジオだが)をしている島村さんは、昭和16年生まれだから68歳。いつも落ち着いた静かなトーンで淡々と試合を伝えてくれる。ポイントでは、声を張り上げ、動きをきちっと伝えてくれるから、耳から聞くだけでも試合の状況が伝わってくる。

今の地上波のアナウンサーは、まるで黙っていると自分の存在意義がなくなるかのように、ずーっと高いテンションでしゃべりまくる。昨日のキューバ、メキシコ戦などは、日本人にとってかかわりのある選手が少なかったから、元オリックスにいたカリム・ガルシアに打席が回るとやれ嬉しやと経歴を連呼し、清原にも「応援している」といわせる始末だ。高いテンションは見せ場だけにしないと、耳で聞いてもほとんど試合経過が分からない。局でそういう教育をしているのだろうが、みんな古館みたいになって、鬱陶しくて仕方がない。しかも野球が好きというわけでもないようで、知識も浅いからどんどんぼろが出てくる。

島村さんはNHKを離れてから、寸鉄のようなコメントもする。ホームインのシーンを映さないアメリカのカメラワークを批判したり、だらけた試合運びを皮肉ったり。それもほんの少しユーモアを交えて。芸になっているのだ。

当たり前の話だが、視聴者が見たい、聞きたいのは試合の状況である。アナウンサーがそれを何に例え、どう盛り上げるかなんて、ついでのことである。そのことを弁えた放送が、地上波ではほとんどなくなったのは悲しいことだ。

良い魚は切れる包丁で引いて、少し下地をつけてワサビを添えて食べるのがうまいのだ。どんな高級魚でもケチャップをかけまくっては台無しだ。

■後日談:野球報道について記事を上げると、予想外の反響をいただいた。この部分に不満を持つ人が非常に多いのだ。引き続き1項を設けて適宜追いかけていきたい。