【2009年5月16日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

今日のSEA対BOS戦は、イチローの2本塁打が出た試合だ。民主党の党首選中継で、放送が尻切れトンボになったために日本のファンには消化不良だったが、この試合はDオルティーズが欠場したことでも注目される。欠場は今月に入って2度目、5月は.163 3打点だからやむを得ないとも言えるが、その急激な凋落ぶりがそろそろ話題に上りだしている。

今期は34試合で本塁打なし、.208の15打点。もともと好不調の波があって2007年には4/22から7/13までフェンウエィパークでホームランが出なかった時期もあるが、それでもトータルすれば好成績を挙げていた。昨年もシーズンを通して不調だったが、今年の凋落はひどい。

以下は、フェンウェイパークでのオルティーズのSTATSである。単一球場でのSTATSを調べることで、オルティーズの打球の内容が見えてくると思う。良く知られているようにフェンウェイパークの左翼は95mしかなく、ここからセンターへ向けてグリーンモンスターという大きな壁が立っている。他球場であれば本塁打となる当たりの多くは二塁打となる。その部分をより正確に知るために、外野へ飛んだ大飛球(本塁打、二塁打、フェンス際まで飛んだ大飛球)を左中間、右中間に分けて見た。

Ortiez

オルティーズと言えば、とにかくクラッチヒッターで、いいところで本塁打を打つ打者と言う印象が強いが、実は二塁打の多い中距離ヒッターである。また、引っ張る印象もあるが、左中間にも大きい当たりが打てる広角打者でもある。(オルティーズシフトはジアンビシフトほど成功していない)そして、四球を数多く選ぶことでも貢献度が高い。

2007年までのSTATSは、こうした「穴の少ない」好打者の実力を如実に物語っている。しかし2008年不振に転じた。目立つのは右中間への飛球が明確に減ったことだ。その傾向は2009年に入って如実なものになった。今年はアウトになった大飛球も含めて、左中間に7本が飛んでいるのに対し、右中間はわずかに1である。

つまり、オルティーズは引っ張れなくなっているのではないか。パワー不足かもしれない。速球に打ち負けているとも取ることができる。引っ張れなくなったことが、本塁打を生まなくなった原因なのは間違いないと思う。

今年はフライボールがゴロよりも格段に多いが、これはオルティーズの焦りを物語っているのだろう。四球が激減しているのは、彼が打席で余裕がないからだろうし、見方を変えれば投手がオルティーズを恐れなくなっているということでもあろう。負のスパイラルが回り出している。

 好打者が突然打てなくなるという現象は、投手が不振に陥るよりは少ないが、MLBでもNPBでも見られる。その多くは怪我や故障が原因だった。オルティーズも膝に古傷があるが、それが原因なのだろうか?だとすればDL入りすると思うのだが。(似たような状況に陥っている打者に阪神の今岡がいる。)

まだ33歳、イチローよりも2歳も若い彼に何が起きたのか?ファンの方には申し訳ないが、私は薬物使用をやめたとたん、突如大不振に陥ったジアンビの顔が浮かんでしまった。

そんな疑惑を払しょくするためにも、好漢の奮起を期待したいところだ。

■後日談:少しだけオルティーズは挽回したが、結局、この2年で最強打者の看板は下ろすことになってしまった。