【2009年7月8日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

最近イチローの記事ばかり書いている感がある。他の選手の話題が芳しくないのでやむを得ない。ここ7試合、32打数8安打と足踏みしているが、連続1安打試合の次に0安打が来るか、マルチか、この差が大きいと思う。マウアーが打率で上回っているが、勝負はこれからだろう。マウアーはシーズン通算.350を打った経験はない。

さて、1番打者としてのイチローについて、物足りないという声をしばしばいただく。もっと長打を打つべきだというご意見である。

まずは、アリーグの先頭打者のSTATSを比較したい。(前日まで)

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 SEAの1番は8試合務めたチャベスとイチロー。SEAは安打数、打率、出塁率、長打率、OPSでNYYと双璧のトップクラスの数字を残している。本塁打、RBIで劣っているのは事実だが、これは先頭打者に長打力を求めるか、出塁を求めるかという用兵の問題だと思う。出塁を期待する1番打者として、イチローは極めて優秀だと思う。BALの数字が優秀なのは、ブライアン・ロバーツのパフォーマンスが大きい。

得点、打点に関して言えば、本人の能力以上に前後を打つ打者の能力が大きく影響する。次の数字を見ていただきたい。先頭打者の打率、出塁率、長打率、OPSが、チーム平均とどれだけ差があるかという数字である。

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SEAは、つまりイチローはすべての数値でダントツのトップなのだ。SEAは、一番良い打者を1番に据えているのである。もったいないという見方もできようが、イチローを最大限に生かすのはこの打順ではないだろうか。むしろイチローに続く主軸打者こそ奮起すべきではないだろうか。

ちなみに、3番打者としてのイチローのSTATSは以下の通り。

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これだけでは何とも言えないが、長打は2塁打が3本だけである。

よくイチローは、本当は大きい当たりを打つ能力があるといわれる。確かにNPBでは、25本打った実績がある。これは本塁打王にあと3本と迫る数字だ。しかし、それはあくまでNPBの数字だ。NPBの打者の多くが、MLBではそれほど打てないのと同様に、イチローが仮に長距離打者を目指したとしてもMLBではうまくいかなかったのではないだろうか。

得点圏打率の低さ(58打数16安打.276)を指摘する声もある。一時期に比べれば落ちてきてはいるが、クラッチヒッターとしての数字も求めるのはやや酷ではないだろうか。

イチローなら長打も打てるはずだ。打点だってもっと望めるはずだ。というのは、ある種の幻想ではないかと思う。確かに様々な可能性はあっただろうが、その内の1つにもてる才能と努力を傾注したからこそ、このすさまじいSTATSを残したのだと思う。

 

■後日談:今年、イチローは少しだけOPSがアップした。シルバースラッガーにも選ばれた。かといって、マウアーのようにパワーアップしていくとは思えないが。