【2009年7月12日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

プホルズのSTATSをさらに見ていく。つくづく思うのは、この現役最強打者が右打者だということだ。A-RODもそうだが、強打の右打者には左打者のような明確な「攻め口」がない。右も左も苦にしない。これは強い。

PUJ06 

右の強打者によくあることだが、プホルズは当初左投手をやや苦手にしていたのを克服している。そして、得点圏での強さ。もともと高い打率を上回る得点圏打率。さらに得点圏打点の多さ。好機に長打を確実に打っているのである。

 プホルズは高い次元でSTATSを維持しながら、質的にも確実に進化している。それを表わすSTATSが以下の二つである。

PUJ07 

PUJ08

BB/SOとは、四球と三振の比率。確実性のある打者の指標である。年々この数字が確実に向上している。今ではボールに手を出さず、滅多に三振しない打者になっている。そしてIBBの多さ。これは後述するが、投手にとって対戦を避けたい打者になっていることを表す。その上に、プホルズは走塁面でも進化している。企図数は多くはないが、走るべき時に確実に塁をとる打者になっている。敬遠で歩かせても気が抜けばい打者なのだ。そして守備面でも1塁に定着してからエラー数が着実に減っている。

すでに最強打者でありながら、完璧へ向けて、毎年進化する打者。これがプホルズの最大の特徴だと思う。

 前述したIBB(敬遠四球)は、強打者の勲章である。投手が1塁を与えてでも勝負を避けたい打者とは、長打力に加えて確実性のある屈指の打者だということだ。

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ゲームあたりの敬遠四球率は、プホルズが1番である。(シングルヒッターのイチローが10%を超えているのは、彼の異能の証明だ)プホルズ、ゲレーロ、イチローに共通するのは、チームの2番手以下の打者との力量差が大きいこと。

 今年29歳、実際には33歳だという情報もあるが、プホルズはすでに歴史に名を残すようなSTATSを積み重ねながら、なお進化中である。

歴代の三冠王と比べての充実度は圧倒的だ。伝説の強打者が生まれる歴史を同時代人として見ることができる幸せを感じる。

■後日談:薬物疑惑の洗礼後、本物の強打者は少ないだけに、プホルズの価値は高い。巷間いうとおり、三冠王が狙えるただ一人の人材だろう。