NPBは、10/25までに次期コミッショナーが決定しない場合、オーナー会議議長であるオリックス宮内義彦氏がコミッショナー代行に就任するとしてきたが、これを前倒しし、10/21に宮内代行の就任を発表した。ただし任期は暫定的に12/31まで。セパの考えが対立したからだ。
コミッショナーが兼務している日本野球機構の会長職は12球団の関係者が兼務できないため、元オリックス副会長で、あおぞら銀行取締役の竹田駿輔氏(72歳)が代行を務める。形式的なポストだから大きな影響がない。

オーナー会議はコミッショナーの選出に向けて真剣に協議をしたようだが、セパの意見の対立は相当根深かったようだ。

セは「球界の刷新を図れる人物」として元東京地検特捜部長の熊崎勝彦コミッショナー顧問(71歳)を推薦。
パは「実益を優先し、遂行する能力を持った人物」として5人の候補者名を出し、収益を目的とした事業会社の設立も求めた。

熊崎勝彦氏はテレビのワイドショーなどでも見かける顔である。いわゆる「やめ検」だ。しかもかなり高級。
四角い顔で、法曹畑出身らしく正義感で満ち溢れたような人物だ。威厳もあり、押し出しも立派だ。
しかし、この人は、これまでの歴代コミッショナーの系譜に連なる人だ。
歴代で法曹関係者は6人いる。※は殿堂入り。

Comissyona


このうち下田武三氏は外交官出身だから、純粋の法曹関係者ではない。
いずれも70歳前後、一般企業の定年の年齢を過ぎてから就任している。
二人が殿堂入り。しかし、NPBの機構改革に大ナタを振るったと言う印象はあまりない。

法曹関係者は、秩序の維持、不正の抑止や追及には手腕を発揮するだろうが、「体制護持」が基本スタンスだと思われる。「改革」にはおよそ不向きだ。
MLBの初代コミッショナーのケネソー・マウンテン・ランディスも検事上がりだったが、当時のMLBは、ブラックソックス・スキャンダルで大揺れになっていた。こういうときには「法の番人」は、 力を発揮する。

しかし、今は「いつまでたってもまともな企業にならない」プロ野球をいかに変革するかが求められている。熊崎氏は71歳。少なくとも経歴から見る限り、不適任だと言わざるを得ない。

熊崎氏を推すセリーグは、要するに「今まで通り」でやりたいのだと思う。

これに対し、パリーグは、球団、NPBとしての「採算性」を上げるために、大幅な改革を求めている。

すでにパリーグはパシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)を設立し、

パ・リーグ リーグスポンサーシップの企画・販売・実施管理
プロパティライセンスの企画・販売業務
スポンサーセールスの営業代理業務
その他、各種協賛・スポンサーシップの企画・販売・実施管理等


を展開している。放映権やライセンスビジネスは中小企業である球団が個別で交渉するよりも、リーグなり機構なりが一括して交渉、営業する方が有利になるし、より大きなビジネスが期待できる。
MLBに倣って、こういう取り組みを開始しているのだ。

しかし観客動員でも人気でも一歩先行するセリーグを巻き込まないことには、ビジネスは大きくならない。
パリーグ側はコミッショナー交替を転機として、セリーグ側にもこのビジネスに参加するよう求めたのだ。

しかし巨人、中日にとって球団は大昔から新聞拡販の道具であり、パリーグのビジネスに乗ることはできない。またセの他球団は、巨人主体のビジネスに便乗しているから文句が言えない。

そういう対立が解消できていないのだ。

アメリカでは、プロスポーツ球団に出資する企業は、その球団からの配当収益を期待している。中には球団を買収し、市場価値を高めて、より高値で転売することを考える企業もある。
球団への出資、買収は「儲けるため」に行うのだ。

これに対し、NPBでは球団買収は、名目上「宣伝効果を高める」ために行ってきた。知名度を上げたり、イメージアップを狙っていたのだ。
しかし、最近はその効果を数量的に測定するのは難しくなった。選手の年俸高騰とともに親会社の出費は嵩み、グループ内でお荷物となっている場合も少なくない。
日本ではプロ野球は「企業の道楽」の側面がいまだ以て消えていない。

MLBのスポーツマーケティング、ビジネスには不正が横行したり、拝金主義が行きすぎたり、問題はたくさんある。
しかし「スポーツで飯を食う」というプロスポーツの本来の在り方を考えるなら、NPBのビジネスモデルよりもはるかに健全だと言えよう。

パリーグは明確に、その方向へ向けて一歩踏み出そうとしている。まだ利益がしっかり出ているわけではなく、親会社の支援も受けているが、考え方は明確になっている。
しかしセリーグは、一部球団にその兆しはあるにせよ、相変わらずのアンシャンレジームが続いている。



前に述べたように、宮内オーナー代行は、セリーグ側にとっては、一番扱いやすい人物だ。また新年までにコミッショナーが決まらなければ、セリーグ球団のオーナーがオーナー会議議長となり、コミッショナー代行に就任すると思われる。

事態はこう着状態だ。セリーグ各球団の意識が変わらなければ、NPBは「煮えガエル」状態で徐々に衰退していくのではないかと思われる。


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