なぜ日本シリーズの真っただ中に沢村賞の発表をするのか、理解に苦しむが、そもそもNPB自体が理解に苦しむ組織なので、仕方ない。まだ臨戦態勢の田中将大が背広で記者会見をしていた。
翌日には、例年ならオリックスの金子千尋が取れたはずだと言う報道がなされていた。
沢村賞選考の7基準をすべてクリアしていたからだ。

7基準とは、
登板試合数 - 25試合以上 完投試合数 - 10試合以上 勝利数 - 15勝以上
勝率 - 6割以上 投球回数 - 200イニング以上 奪三振 - 150個以上 防御率 - 2.50以下

高いハードルのように見えるかもしれないが、タイトルを取るようなエース級の投手は少なくとも2つや3つくらいはクリアしているものだ。
7基準が決められた1982年以降の沢村賞投手と、6つ以上クリアした投手のリスト。
89年まではセリーグのみの賞だった。

sawamura2013


82年は北別府と江川が7つクリア。81年は明らかに成績が上だった江川(20勝6敗ERA2.29)よりも西本聖(18勝12敗ERA2.58)が獲得したことで話題になったが、この年は北別府が若干上ではなかったか。

翌83年は6つクリアした川口と遠藤。勝ち星、投球回、三振で遠藤が上。

87年には工藤が7つクリアしたが、受賞資格なし。セパ両リーグなら微妙。

88年は大野豊が獲得。パにも受賞資格があれば西崎が当確。

89年はセパに受賞対象が広がる。6つ以上クリアした投手が最多の6人。斎藤の沢村賞は価値が高い。

92年の石井丈裕は4つしかクリアしていない、野茂の方が適任だと思うが。

2003年は斉藤和巳と井川のW受賞。これができるのなら92年もそうすべきだっただろう。

2007年以降ダルビッシュは7つクリアを3回、6つクリアを1回。しかし沢村賞は1回だけ。2008年は6つの岩隈に沢村賞を奪われている。勝ち星優先だったのだろう。



さて、2013年。金子は7つクリアしているが田中は完投数が足らず6つ。投球回も奪三振も上。
とはいえ、この空前の内容を前に、金子に沢村賞を与える選択肢はないと思う。
選考基準はあくまで参考だ。選手の評価は相対評価だ。田中のような凄い投手が出れば、こういうこともあろう。

セリーグは2010年に前田健太が獲得しているが、2005年以降は彼一人。パの投手のレベルが高い状態が続いている。

野球と言う競技は毎年投打の力関係がかなり大きく動いている。7つの基準が現実に即しているとは言い切れない。
しかし基準があるのはよいことだ。こうしてみると疑問点もあるが、おおむね妥当な感じがする。

2010年パリーグは17勝8敗したものの169回、ERA3.14で、沢村賞の基準は4つしか満たさなかった和田毅をMVPに選出している。
それに比べれば、はるかにましだと言えるだろう。

一つ疑問。たまたまここまでは外国人で基準を6つクリアした投手はいない(チェコ、ガルべス、パウエル、グライシンガー2回、が5つクリア)。
外国人が7つクリアして抜群の数字を上げたら、沢村賞を進呈するのだろうか?

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