まさか、としか言いようがなかった。9回、3点差で前日160球を投げた田中将大が登板。本人の強い意志によるという。
私は田中がベンチ入りしたと聞いて、1アウトくらい投げさせることがあるのか、まさか、と思っていた。結局、田中は15球を投げて2安打を打たれ、2三振を奪った。

楽天のポストシーズンは、一部の「使える投手」に荷重をかけることで勝利をつかみ取ったといって良い。

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クライマックスシリーズから日本シリーズへ、登板で結果を出せなかった投手は抜け落ちて、「投げられる」投手が絞られていった感がある。
星野監督は「使えない」と断じた投手にはチャンスは与えなかったのだ。

ペナントレースと全く違う用兵。それは当然だという話もあるが、長いシーズンで築き上げてきた投手陣の秩序を自ら壊すような投手起用だった。
楽天、ポストシーズンの通算投手成績。

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楽天はちょうど100イニングを消化したが、このうち74.2回を田中、則本、美馬が占めている。しかも田中と則本は先発と救援を掛け持ちした。

昭和40年代前半までは、こうした「大車輪」の活躍は普通に見られたが、近年では稀なことだった。

中継ぎ、救援陣の投手たちも優勝は嬉しかっただろうが、「もう少し使ってほしかった」と思ったのではないだろうか。



収穫の第一は、美馬学だろう。今季、公式戦では18試合6勝5敗に終わったが、ポストシーズンでは3先発20.2回を投げて無失点。田中が抜けるであろう来季の主戦投手になる目途がついた。

則本は、まるで田中が乗り移ったような活躍だったが、来季はどうだろうか。楽天では昨年7勝した釜田佳直が今季は1勝に終わっている。ポストシーズンの疲労が来季、どんな形で出てくるのか、気がかりだ。

そして田中はどうなるのか。三木本オーナーは「田中に8億出す」とぶち上げたが、これはサービストークだ。ポスティングシステムの協議はまだまとまっていないが、田中がアメリカへ行くのは間違いないだろう。ポストシーズンで438球を投げたことは、やはり大きなマイナス要因だ。来季へ向けて影響がないとは言い切れないだろう。

それとともに彼が指揮官の言うことを聞かずに「強行登板」したことも問題だ。
MLBでは、中4日の過酷なローテーションを維持するために、厳しい自己管理が求められる。またMLB流の調整法を理解し、受け入れる聡明さも求められる。
昨日、一昨日の田中は、日本のエースによくある「自分で物語を作ってしまう」体質を露呈した。指導者のことを聞かない「松坂大輔的」なものがあることを、内外に知らせてしまった。これは不安材料だろう。

日本のマスコミはこぞって田中の奮闘を讃えている。「甲子園」が大好きな国民性である。仕方がないとは思うが、当サイトではこのように評価したいと思う。

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