MLBのクオリファイング・オファー(QO)は昨年から始まった制度だが、目的がいまいちわからない。黒田はヤンキースのQOを蹴った。
FAになった有望選手を引き留めるには、巨額の年俸提示が必要になる。QOは年俸の高騰を抑制するために導入された(とされる)制度で、球団がMLBに所属する上位125人の平均年俸と同額の1年契約を提示し、選手がそれをのめばそれでよし。OKしなければ、通常の年俸交渉に入るというものだ。

選手がFAになって他球団と契約を結んだ場合、出て行かれた球団は、その球団からドラフト指名権を譲渡される。

NBAでは30年も続いている制度だそうだが、MLBは昨年から導入した。
昨年も黒田はQOを受けた。他にボストンのデビッド・オルティーズやエンゼルスのトリ・ハンターなど9人がQOされたが、誰も契約しなかった。
オルティーズはボストンと2年2900万ドルで契約しなおした。ハンターは、エンゼルスを出てデトロイトと2年2600万ドルで契約した。
エンゼルスにはデトロイトからドラフトの指名権が譲渡されたはずだ。

QOの提示金額は、今年が1410万ドル、昨年が1333万ドルと決して安くはない。MLBでも一流選手の年俸だ。
しかし1年契約であり、QOを提示される選手の大半は年俸アップにつながらないから、この提示をのむ選手はいない。

今季も黒田だけでなく、ロビンソン・カノ、カーティス・グランダーソン、秋信守など13人全員がQOを蹴った。
カノやグランダーソンは、ヤンキースと複数年契約を結ぶことになろう。
グランダーソンのヤンキース残留が決まれば、イチローの出番は減ると予想される。

韓国メディアは秋信守が複数年総額1億ドルの契約を結ぶのではないかと予測している。
同じアジア人の外野手ながら、秋はイチローとは全く異なり、セイバー的には非常に優秀。ジョーイ・ボットの外野手バージョンという感じだから、確かに年俸は上がるだろう。



QOは、球団側も蹴られることをある程度承知でオファーしているのだろう。では何のためにやっているのかと言えば、主力選手がFAで戦力ダウンする球団にドラフト指名権という補償が付くのが大きいのだろう。
また、QOを提示することで年俸交渉のとっかかりができる。黒田は昨年QOの金額よりも130万ドルほど高い金額で契約したが、たとえQOを受けなくとも、他球団と競り合うことで青天井に年俸がつり上がるのを防げているのかもしれない。

選手から見れば、メリットはほとんどない。FAになる時期が遅れるし、QOが「標準価格」「相場」のようになってしまうのも迷惑な話だろう。
カイル・ローシーやマイケル・ボーンのようにQOを蹴ってFAになってから交渉がまとまらず、シーズン開幕寸前までチームが決まらなかった選手もいる。相手球団がドラフト指名権譲渡を嫌ってQOを受けた選手との契約を忌避したのだ。

しかし、見方を変えれば、球団がたとえ1年契約にしても「引き留めたい」と言ってもらえるのは名誉なことだ。多くのベテランは、長期契約が満了すると年俸が一気に下がるのだから。
黒田は2年連続でクオリファイング・オファーを受けた。来季は39歳になるが、未だに一線級の投手として高い評価を受けているのだ。

恐らくは昨年同様、ヤンキースともう少し高い条件での1年契約を結ぶのではないか。

また例によって「広島カムバック説」が出てきているが、MLBで通用する限り、黒田が自ら帰国を選択することは無いと思う。広島が提示できる年俸はせいぜい3億というところだろうし、その金額さえ球団は出し渋ると思う。

文字通り「刀折れ矢つきて」はじめて帰郷を思うのではないかと思う。


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