球場の右中間に赤い月が昇ったが、これを客席で観ていたのはわずか100人ほどだっただろう。試合開始直前まで、関係者の方が多いようなスタジアムだった。
今大会で、勝利に一番固執していたのは間違いなく三星ライオンズだった。昨日の統一ライオンズ戦、打者一人ずつ3人の投手をつぎ込んだ継投にそれが表れていた。

三星の柳仲逸監督の意識は、今日のキャンベラ戦よりも、決勝で当たると想定される楽天の方に傾いていたと思う。

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先発に14勝を挙げているがERAが4.71とよくない斐英洙を起用したのも、日本戦に向けて尹 盛桓、張ウォン三らを温存したかったからだろう。
それでもキャンベラには勝てると踏んだのだ。

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しかしキャンベラは楽天の永井を打ちこんだことでもわかるように、安打を打つということにかけては、NPBやKBOのレベルと大差はない。
作戦能力や、野球頭は低いようだが、打つ、投げる、走る、守るという基本的な能力は高いのだ。ABL(オーストラリア野球リーグ)が、MLBの実質的なマイナーリーグであることを考えれば、それはうなずける。

キャンベラは立ち上がりから斐英洙を難なく打ち崩した。ストライクを取りに来た速球を簡単に打ち返す。とにかくよく安打が出るのだ。
三星も1回裏に同点に追いつくが、キャンベラは3回まで毎回1点ずつ取った。
そして4回、三塁の朴錫珉が立て続けにスローイングのエラー。一塁は蔡泰仁が守っているが、試合前の練習を見ても、守備は李承燁の方が上だ。
これでさらに2点が入る。

5-2、3点差。苦しい点差だと思えたが、5回、三星は野球の格が違うところを見せつけた。四球を足がかりに足でかき回して3得点。遊ゴロの併殺崩れの間に走者が2人生還する離れ業を見せた。このあたり、さすがだと思ったが。

試合はここからこう着状態に入る。三星は先発のグレニングからは5点を取ったが、
以後のワイズ、ライマンからは安打は奪うものの得点できず。6回まで毎回先頭打者を出していた打線が、おとなしくなってしまった。

キャンベラも2番手左腕車雨燦から、4回に2点を奪ったものの以後は打ち崩せず。
9回は両者ともに三者凡退で、延長戦に入った。

10回は、昨日のサヨナラ劇で勝ち投手となった安志晩がマウンドに。
1死後、バーンズに左前打を打たれる。
続くマーフィは、長髪ひげ面の巨漢捕手。まだ25歳でトロントのA+に在籍しているが、このシリーズはからっきしダメだった。
スイッチヒッターだが、併殺打を左右に打ち分けただけ。3試合で1安打、3併殺打。
しかし、彼がフルカウントまで粘って打った一打は右翼スタンドへ飛び込んだ。
李承燁に続くシリーズ第2号。これは強烈だった。

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三星ははっきり気落ちしたのが見て取れた。続くクラウスにも安打を打たれたところで安は交代、代打パーキンスの当たりは有ゴロ併殺と思えたが、ショート鄭ヒョンがエラー。ここでスローンの二塁打が出て決定的な2点が入った。
韓国のチームは勝負に異常なまでに執着するが、その分落胆も大きい。こういうシーンを何度も見たが、2点差であればワンチャンスで挽回できるものを、4点差にしてしまったことで万事休す。

ベンチは沈黙した。

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裏はキャンベラのクローザーのトラーの前に簡単に三者凡退。

今年、NPBはKBOのチームと一度も真剣勝負をしていない。WBC予選で韓国が敗退したからだ。

それだけに、今年最後の大一番「楽天対三星」を期待したのだが、それもかなわなかった。
WBCで韓国が敗退したのも同じ台中インターコンチだった。そしてその時も油断がささやかれたが、全く同じ結果になった。
人気はうなぎのぼりだが、韓国野球は頭打ちの印象が強い。

試合後両チームが握手をしなかったのは、後味が悪かった。三星ナインが応じなかったように見えた。この幼児性も反省すべきだろう。

明日の「楽天対統一」。統一はチームとしてはキャンベラよりも強いと思われる。決して油断はできないだろう。


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