星野監督は宮川将の先発を早くから公表していた。宮川は、育成枠で入って1年目に2勝を挙げたが、日本シリーズ第4戦で4人の打者に2安打2四死球で1アウトも取れないまま降板。彼に自信を取り戻させようとしたのだろう。しかし、その親心が裏目に出た。
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先頭の林志祥の一塁ゴロを中川大志がジャッグル。いきなり走者を背負った。
捕手は伊志嶺。彼との相性の問題はあっただろうが、中途半端な変化のスライダーと棒球を、劉芙豪、潘武雄に立て続けに長打されてあっという間に2点を与えた。そして一死後、陳鏞基にも中前に運ばれた。

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続く2回も鄧志偉に右前打を打たれて、片山に交代。星野監督の顔は引きつっていたことだろう。

そこからは、統一打線には出来事らしい出来事はほとんど起こらなかったのだ。左腕片山は、剛速球を持っているわけではない。日本ではごく標準仕様のスライダーと、140km/h程度の速球に、統一打線はほとんど手が出なかった。6回にやや球が高めに浮いて失点したが、一線級とは言えない片山でもこの程度の投球はできたのだ。
続く金刃、福山も完全に抑えた。

星野監督の「投」のミステイクは、宮川の先発起用だけだった。

しかし「打」は、大いに問題があった。

統一の先発はネルソン・フィゲロア。WBCプエルトリコ代表。このときは、日本とは当たっていないが、日本の打者はこういうタイプの投手、苦手である。
速球は140km/h出るか出ないかだが、すべて2シーム、微妙に揺れ動いている。しかもチェンジアップもある。素直な球は1球もないといって良い。そして制球も良い。

それにしても、楽天の打線は芸がなさ過ぎた。
ただ振り回すだけ。私はNPBの野球偏差値はトップクラスだと思っていたのだが、認識を改めなければならない。

主役がいる打線では、脇役の打者はそれなりに機能するが、主役がいなくなると、代役が務まる役者はいないのだ。走者が出てこそ塁を進める打撃はできるが、自分が出塁する方法論は持っていないのだ。要するに「俺が決めてやる」という気概のある打者はいないのだ。「誰かさん任せ」の無責任打線と言っても良いかもしれない。

特に失点につながる失策をした中川はひどかった。

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藤田、マギー、ジョーンズの穴を埋めるはずの若手、阿部、中川、小斉が何も考えていないかのような打撃を繰り返していたのに、星野監督は代打を送らなかった。
「それはそれでええ」という言葉が聞こえてきそうだった。無気力と言われても仕方がないだろう。

フィゲロアはわずか97球で完投した。

楽天側で盛り上がったのは9回、ブルペンに田中将大が現れたシーンだけ。あとは、統一の賑やかな応援が響いていただけだ。



星野監督は早くから「うちから出せる選手はこれだけ」という断りをしていた。春先のWBCからの選手の疲労度を考えれば、それもやむなし、とは思えた。
「フルメンバーで戦ってほしいなら、今のシステムを改めろよ」という声も聞こえてきそうだ。しかしそれは身内の理屈。世間様、世界様で通用するものではない。

楽天イーグルスは統一ライオンズより弱かったのだ。NPBは、CPBLよりも弱かったのだ。
そのことだけは厳然たる事実として残る。
星野監督が言い訳めいたことを言わず、台湾野球の発展を願うコメントをしたのは評価できる。

明日の決勝は、台湾の統一とオーストラリアのキャンベラ。ともに下馬評では低かったチーム同士。アジア、オセアニアの野球のレベルが上がった証拠である。

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ホテルに帰ってフロントの人に、おめでとうと言った。明日、球場は満員になるかもしれない。

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