オーストラリアの打線は止まらなかった。すべては台湾、統一指揮官の投手交代がきっかけだった。
キャンベラは何と言ってもマイナーリーグだから、統一の方が一日の長があるだろうと思っていたのだが、予想は見事に裏切られた。

toitus-Canbella


立ち上がり、統一は右腕コールに三者凡退。
その裏、ベルティが先発右腕潘威倫からセンターへ抜ける安打。ダウイングは送りバントをしたが、これが投前安打となる。

toitus-Canbella01


フロウリーは右飛だったが、ここで三星戦で決勝の本塁打を打ったマーフィ。彼はそれまで全く振れていなかったが、あの一打で最も危険な打者に変身している。
果たして、潘威倫の外側の速球をいとも簡単に左前に運んだ。こういう芸当ができる打者だったのだ。

toitus-Canbella00


2回、今度は統一が郭岱琦の二ゴロ失策で出塁、1死後高国慶が歩いてこの二走者を鄧志偉、唐肇廷のタイムリーで返す。同点。
さらに3回、劉芙豪の安打を足がかりに2本のタイムリーで4点。この回途中でキャンベラの先発コールが降板。マシングハムが上がる。この投手は楽天戦でも良い投球をした。

toitus-Canbella02


統一の先発潘威倫は、かつては最多勝も記録した実績ある投手だが、今季は6勝9敗5.47 。楽天戦にフィゲロアをぶつけたために、使える先発投手が限られていたのだ。
しかし潘威倫は以外に好投。5回にスローンの併殺打の間に1点を失ったが、5回3失点、リードを保って降板した。

統一の二番手は主力セットアッパーの傅于剛、彼は6回、キャンベラ打線を2三振と2ゴロ。完全に抑えた。

7回、陳連宏監督は、傅于剛を1回で下ろし、同じく信用のおける高建三を上げた。これはペナントレースと同じパターンなのだろう。傅于剛はキレのある速球を持っているが、40歳の高建三はかわす投球。CPBLではその老練な投球が通用したのだろうが、この投手がキャンベラ打線に火をつけた。
9番オピックが簡単に安打、1番ベルティは三塁打。あっという間に同点になってしまった。
陳連宏監督は、この継投策を悔やんだことだろう。火消しにブーフ・ボンサーを上げた。私は台湾野球の指導者は「外国人投手信仰」があるのではないかと思う。大事なポイントで外国人投手をよく上げるのだ。
しかしボンサーやビスカイーノは球速こそあるが、制球は良くない。台湾打線に150km/hの速球は通用するかもしれないが、MLB仕込みのキャンベラ打線にしてみれば、ロートルの元MLB投手は待ってました、という感じだ。
ボンサーはデニングにタイムリーを打たれ勝ち越される。さらにフロウリーにもタイムリー、バーンズを歩かせ、マーフィには犠飛を打たれる。さらに40歳のウェルズもタイムリー。決定的な5点が入ってしまった。

toitus-Canbella03


8回、陳連宏監督は、統一が誇る救援投手陣、邱子愷、林岳平、王鏡銘を上げた。7回に上がった高建三、ボンサーも含めてこれらの投手はERAが2点台以下、CPBLでは一線級の投手なのだ。
しかし、キャンベラ打線は打撃練習のように打ちまくった。アウトがつかないまま2点が入り無死満塁で、マーフィに打順が回った。
わたしはこの打席で、マーフィは必ず本塁打を打つだろうと思った。それくらい彼は乗っていた。果たして、内角高めの速球をフルスイング。打球は右翼席に飛び込んだ。
恐ろしい打線である。

toitus-Canbella05


タラレバの話は禁物だが、7回、傅于剛をもう1イニング投げさせていたら、こんなすさまじい試合にはならなかったのではないか。
全く振れていない張泰山を重要なところで3度も使い、ことごとく失敗するなど陳連宏監督は、セオリーにこだわりすぎたように思える。彼は日本でいえば長嶋と王を足したような存在で、先住民族出身で国民的英雄ではあるが、今季は9本塁打。衰えは隠せない。

toitus-Canbella04


現実の相手に即して作戦を変える柔軟性がないように思えた。

私はキャンベラの野球偏差値が低いと書いた。確かにそれはそうだったのだが、野球の基本的な動きである、打つ、投げる、走るという部分で、キャンベラはアジアのどのチームよりも勝っていた。
日本、韓国、台湾の野球が妙にひねこびた、小さなものに見えてしまった。

数年前に比べ、オーストラリアのレベルは飛躍的に上がっている。WBCでもNPBの難敵になるのではないか。
ABLのサイトもこれからチェックしよう。http://web.theabl.com.au/index.jsp

9試合をすべて見て、野球の進化の道筋は一通りではないことを実感した。非常に面白いと思った次第。

toitus-Canbella06


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!


『「記憶」より「記録」に残る男 長嶋茂雄 』上梓しました。





「読む野球-9回勝負- NO.2」私も書いております。




広尾晃 野球記録の本、アマゾンでも販売しています。




クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。1955年のセリーグ、先発救援投手陣

Classic Stats