楽天の立花陽三球団社長は田中将大投手と本拠地のKスタ宮城で会談を行い、新ポスティングシステムによるメジャー移籍を容認する方針を示した。
また次期コミッショナーも年内決定の目途がついた。
会談終了後会見した立花社長は 「入団以来7年間の田中投手の貢献を評価し、三木谷浩史オーナーはメジャー挑戦の希望を容認し、ポスティングシステムの申請をすることを決定した」と語った。

楽天株式会社は12月3日に東証一部に市場変更をした上場会社だ。連結子会社である株式会社楽天野球団が、前例よりも大幅に低いポスティングフィーで、経営資源である田中将大をアメリカに譲渡するのは、グループの資産価値を損なうと株主から訴訟を起こされる可能性がある。銀行筋や関係企業にも説明をしなければならない。
楽天は先日、そのために時間がかかっていると言う説明をした。
本当のところを言えば、三木谷氏が「とらぬ狸」に諦めを付けるためにこれだけ時間がかかったと言うことだろう。
何にせよ、田中が新しいステージに進むことができるのは喜ばしい。

ポスティングは「金」の面だけを見ればNPBにも十分にメリットがある。
右肩上がりに成績を上げつづけた選手は、それにともなって年俸を上げていく必要があるが、それが企業としての球団の経営を圧迫する。
3億の選手の年俸を4億に上げても、観客動員はその分増えるわけではない。収益も利益もその分上がるわけではない。経営に余裕があれば、持ちこたえることができるだろうが、そうでない球団は経費を削減したり、他の高額年俸の選手を放出したりして、高年俸に耐えることになる。
FAで主力選手が抜けるのは、経営者としても辛いだろうが、経営面だけを見れば「一息つける」という思いもするのではないか。
ポスティングは、FAよりも早く主力選手を手放さないといけないが、ポスティングフィーが入ると言う点では、NPB球団にとって大きな利得がある。
田中将大クラスだと上限が設けられたとはいえ、20億円超、球団年俸総額の1年分に近い金が入るのだ。

しかしながらポスティングは、トップ選手をNPB球団がMLB市場に「売る」と言う印象が強い。ファンの感情も複雑だろうし、NPBがMLBの「下請け」に甘んじているような印象も強い。
私はポスティングと言う制度は今回の更新で終わりにすべきだと思う。

NPBからMLBへ人材が流出するのは、金の面だけで見れば「経済格差」があるからだ。NPB各球団は売上、利益ともに横ばいが続いている。市場が広がっていない中、選手の年俸が上がることは、経営を圧迫することにつながる。だから、選手を「売る」ことになるのだ。

NPB球団、そしてNPB全体が市場の拡大、営業収益の拡大、収益性の向上に努力をすることで日米の「経済格差」を少しでも埋める努力をすべきだ。
そして3年後の改定期には「ポスティングシステムは、もうやめよう」という提案ができるようになるべきだ。



そういう意味でも、NPBはビジネス体質に転換する努力をすべきなのだが、またもや、それにふさわしくないトップを選ぼうとしている。
セリーグ側が推す元東京地検特捜部長で弁護士の熊崎勝彦コミッショナー顧問のコミッショナー就任が年内にも発表されようとしているのだ。

この人は、これまでの多くのNPBコミッショナーと同様「司法官僚」上がりだ。司法官は社会の曲直理非を糺す能力は高いだろうが「市場拡大」「収益性向上」の能力は皆無だろう。
スポーツ界は野球だけでなく「官尊民卑」の傾向が強いが、そういう「お役人様」を崇め奉って、その下で自分たちの好きなようにする体質は今後も続くのだろう。

パリーグはビジネスができる人材を、と違う候補を推していたが、パリーグ内でも候補が一本化ができない体たらくで、セリーグ側の切り崩し策に負けてしまった。

ただ、今回からNPB機構に専務理事が設置されることになった。非常勤のコミッショナーが一人でNPBを統べるのは難しいことは今回の「統一球問題」で明らかになった。コミッショナーの下に常勤のトップを置くことになったのだ。

専務理事には銀行出身者を置くことが考えられているようだ。銀行マンはビジネスマンではあるが、いろいろな得意分野がある。できれば国際マーケティングに精通した若い人材がそのポストについてほしい。

熊崎次期コミッショナーは加藤良三前コミッショナーの轍を踏むことを恐れ、恐らくは「お飾り」に徹することだろう。セリーグは相変わらずありもしない「既得権益」に固執すると思われる。

パリーグはPLMのビジネスをさらに拡大して、NPBの将来性をはっきりと示し、実績でNPBを変えていってほしい。

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