昔からあまり飲み会にはいかない人間だったが、最近は意識して行くようにしている。思わぬ人に会ったり、良い言葉に出会ったりすることがあるからだ。この年になってそれに気が付いたのだ。昨日は、お誘いいただいた「女子野球ファンお疲れ様会」に行った。
来季、女子野球はまたいろいろ体制が変わりそうだ。そのことについて聞きたかったし、特別ゲストとして出席する二人の選手=今季限りで引退する松本育代、川保麻弥の動静も知りたかった。

若手のグラブ製作者の“グラブドクター”さんが幹事。今年の夏に長谷川晶一さんにお誘いいただいて、女子野球ファンの飲み会に出ていたから、ファンのみなさんはほぼ顔見知りだった。「女子野球が好き」という一点で繋がった、気のいい人々だ。
前にも述べたが、女子野球ファンには一般のプロ野球ファンにしばしばみられるような「気負い」「おごり」がない。身銭を切って選手を応援するのは当たり前、勝った負けた以上に彼女たちを応援したい。「無私」の気持ちが貫かれているのだ。

いろいろな情報ももらったが、まだJWBLは何も発表をしていないので、それはここでは書かない。

幸運にも松本、川保の二人とも話をすることができた。二人ともリーグ創設以来の選手ではある。とはいってもキャリアはわずか4年。引退に際しても微妙ないきさつがあったようだが、二人ともに今は現実を受け止めている。

松本育代 キャリアSTATS

Matsumoto-JWBL


捕手、内野手として活躍。今年、はじめて規定打席に達した。はつらつとした動き。三振が少なくチーム野球に徹する選手だった。

川保麻弥 キャリアSTATS

Kawaho-JWBL


リーグ草創期から屈指の強打者だった。初代MVP、二年連続打点王。長身で見栄えのする捕手だった。リーダーシップもあったように思う。



感銘を受けたのは、二人の話だった。自分たちが置かれた境遇を理解し、前向きにとらえている。そして女子プロ野球の行く末も気にかけていた。

あまり多くはないが、私は男の野球選手に話を聞くことがある。それなりに丁寧に応じてくれる人が多いが、中には「この俺に、お前は何を聞くというねん」という気持ちが透けて見える人もいた。失礼な態度をとるわけではないが、少年時代から特別扱いされるのが当然だったために、横柄な態度をとるのが当たり前になっているのだ。

しかし彼女たちは、そうではなかった。酒席の騒然とした雰囲気の中で、ほんの少し話を聞いただけだが、きっちりと言葉を返してくれる。私の目を見て、20代の女性とは思えないくらい、しっかりと答えてくれた。

私から見れば彼女たちは娘の世代になる。「苦労したんだろうな」と思わずにはいられない。
男子と同じ野球のトップアスリートだが、4年間はプレーだけでなく、チームを盛り上げたり、ファンと交流したり、気遣いの連続だっただろう。男子選手にはない苦労もたくさんしたことだろう。

同時に「野球は人を育てるスポーツだ」とも思った。彼女たちは「野球」という一点でチームとつながり、ファンともつながりを持つなかで成長したのだ。

彼女たちの今後についても発表がないから具体的には書かないが、一人は女子野球界に残り、一人は去る。二人の今後の成功を祈らずにおられない。

女子プロ野球は日本でもアメリカでも成功事例がない。社会にしっかり根付くことはなかった。しかし、それはかつては、社会におけるスポーツの位置づけが低く、プロ野球そのものも「興行」としかみなされていなかったからだ。また女性の地位も低かった。
競技人口が増え、それを生きがいにする人が増える中で、女子プロ野球はそのトップステージとして社会的な存在意義があると思う。
「なでしこジャパン」を目標にして、地歩を固めてほしい。

ただ、この大きな課題は選手や選手上がりの指導者が担う仕事ではない。
「大人」たちが、自分たちの金儲けだけではなく「女子野球をどのようにして発展させるか」を考えるべきだと思う。

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