書くか書くまいか迷っていたが、思い切って書いてしまう。西岡剛のことである。
年末年始のスポーツバラエティの老舗に、「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」というのがある。その人気コーナー「リアル野球BAN対決」では、石橋貴明率いる帝京高校OBチームと、大阪桐蔭OBチームが対決した。
ご存知の方も多いだろうが、このゲームは球場を巨大な野球版に見立てて、両チームの選手たちがピッチングマシンの球を打ち、得点を争うのだ。

大阪桐蔭OBチームは、西武の中村剛也、浅村、日本ハムの中田翔、そして阪神の西岡だった。
チームリーダーになったのは西岡。ピッチングマシンの球種を指示していた。
石橋チームの打席に森本稀哲が立つと、

「目立ちたがり屋やから、この球振るで!」

と言ったのだ。その言い方が非常にいやな感じだった。

森本は西岡よりも学年で4つ上である。西岡が中学生のときに、すでに一軍でプレーをしていた。歴とした先輩だ。その森本に対して、失礼な物言いをしたのだ。

森本は少し前まで西岡に劣らぬ人気選手だったが、最近は故障もあって出場機会が減り、このオフにDeNAを戦力外になった。テストを経て西武への入団が決まったばかりである。
阪神のスター選手になった西岡とはステイタスの差が大きく開いた。

森本は内心忸怩たる思いで、石橋、ゴルゴ松本、元近鉄巨人の吉岡雄二とともに、唯一の現役選手として加わっていたはずだ。

その彼に対して西岡は本当に心無い発言をしたと思った。

バラエティであり、お遊びであるとはいえ、テレビマイクの前でこういう言葉を口にする神経がわからなかった。

大阪桐蔭OBチームで一番先輩は中村剛也だったが、彼はほとんど発言せず、終始西岡がしゃべっていた。帝京チームを挑発するコメントを連発していたが、それも不快なものが多かった。

こうした番組は、対戦チームの丁々発止のやり取りが売りである。相手を挑発するのは当然だが、その言葉に剣があった。
世慣れた人であれば、強い言葉を発しても、顔が笑っていたり、すぐにフォローをしたりするものだが、西岡は笑っていなかった。そして相手を見下しているように見えた。

その挙句に、森本に対して前述のような言葉を発したのだ。



昨年、西岡はMLBから阪神に移籍して中心選手として活躍した。
そして、ベンチの前で両手を突き上げる「グラティ」というパフォーマンスを考案した。これはチームを力づけるものだと言われているが、相手チームへの挑発だと受け止める人も多く、OBたちの評判は良くない。
また、オールスターゲームで大阪桐蔭OB同士の中田翔と藤浪晋太郎が「乱闘ごっこ」を演じたのも西岡の差し金だったと言われている。
正月の番組でもそうだったが、中田翔はパシリのように、嬉々として西岡の指示に従っているように見えた。

私はどうも西岡剛に、関西でいう「やから」の匂いを感じてしまう。

「やから」は、恐らく「不逞の輩」の省略形だ。悪意がこもった言い方だが、乱暴者の若者のことを言う。やや好意的には「やんちゃ」「やんちゃくれ」という。
「やから」は、「我」を通すことに非常にこだわる。たとえば禁煙の場所でわざわざ煙草を喫ってみたり。駐禁の場所に車を止めて見たり。わがままを通すことが「勝つことだ」と思う習性がある。先日亡くなったやしきたかじんも、少しその匂いがするが。
「やから」は、いろいろないたずらをして笑いあうのが好きだが、その笑いは身内には通用するが、傍からみれば不愉快なことも多い。
一言でいえば「独りよがり」が鼻につくのだ。「夜郎自大」と言っても良いように思う。
西岡はそういう「やから」の流儀を、野球選手になってからも押し通しているのではないかと思うのだ。
こうした匂いは清原和博にも感じたが、清原は少なくとも先輩に対して失礼な言動はなかったように思うのだが。

2009年のWBCの代表選手に落選した時には、西岡は不満をあらわにしていた。あてつけがましく年俸を1千万円返上したりした。原監督への敬意はあまり感じられなかった。この時も我の強さを感じたものだ。

この年、206安打を記録する活躍をした西岡は、MLBに渡った。
しかし彼は成功しなかった。怪我にたたられたのだが、2年目にはほとんどチャンスさえ与えられなかった。
MLBでは、NPB以上に選手たちはチームの和を重んじ、紳士的にふるまうことが求められる。社会性が重要視されるのだ。
NPBから移って期待を裏切った選手の多くは、実力だけでなく、そうした面でも評価を得られなかったように思う。
伊良部秀樹、中村紀洋、そして西岡剛。この3人には性格的な共通点が多いのではないか。

野球は人を育てる競技だと思う。野球によって人格が陶冶され、人物としても一流になった人は多いと思う。
それだけにトップクラスの野球選手がこうした振る舞いをすることが残念だ。

私の偏見かもしれないとも思うが、この際書いてしまう。読者諸氏はどう思われるだろうか。


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