お断りしておくが、この議論をするうえでの前提は「NPB全体を発展させるにはどうしたらいいか」ということだ。
「贔屓の球団さえよければいい」「他球団のことなど知るか」という思いを一旦捨て、コミッショナーとしてリーグのかじ取りをするという意識になっていただきたい。
NPBをはじめとする各リーグの優勝球団の内訳を見て行こう。
NPB
1リーグ時代は最大8球団がペナントレースを争ったが、3球団しか優勝していない。戦前の11シーズンに限れば巨人と阪神だけである。
圧倒的な寡占状態にあったことが分かる。
1950年から始まったセリーグでは巨人が過半数を超える35回の優勝。
パリーグは、2度の黄金時代があったライオンズが最多だが、南海、阪急も黄金時代があった。優勝回数はばらけている。
MLB
優勝していない球団は割愛した。1901年の2リーグ分立以降。
アメリカン・リーグはヤンキースが圧倒的な優勝回数を誇るが、占有率は西鉄・西武より少し上回る程度。
続いてアスレチックス、レッドソックス、タイガースの順。
ナショナル・リーグはさらに優勝チームがばらけている。ジャイアンツ、カーディナルス、ドジャースが3強。しかしカブス、レッズ、パイレーツ、ブレーブスなどもかなりの回数優勝している。
こうして見て行くと多くのリーグには、複数の球団の「良い時代」があったということわかる。
しかし、1リーグとセリーグでは、巨人の寡占状態が続いた。セリーグはV9が終了するまでの24年間で巨人が20回優勝している。
確かにこの時期にNPBは国民の支持を得て「ナショナル・パスタイム」になっている。
このムックでも書いたが、長嶋茂雄という戦後最大のスーパースターを得て、巨人の人気は頂点に達した。1959年の天覧試合でのサヨナラホームランは、大げさに言えば日本人のライフスタイルを一変させた。
1960年~70年代に掛けてのプロ野球中継は文字通り「巨人一色」だった。プロ野球中継は巨人戦しかなく、スポーツニュースも巨人が中心。
私は関西人だが、子どもの頃、YGマーク以外の野球帽を見たことはなかった。
この圧倒的な成功体験が巨人と巨人ファンに、「巨人が強ければプロ野球は繁栄する」という「信仰」を生んだのだと思う。
しかし、こと観客動員とテレビの視聴率に関して言えば、巨人が圧倒的に強かった73年までと、それ以降を比較すればお話にならないくらい、「巨人ダイナスティ」終焉後の方が上なのだ。
巨人は74年以降の40年間で15回の優勝をし、比較的優位を保ってはいるが、その間に他球団が25回の優勝を飾った。不完全とはいえ65年のドラフト制導入以降、戦力の均衡が進んだ。
日テレ巨人戦中継、絶滅の危機|野球報道でも紹介したとおり、73年には16.6%だった巨人戦の視聴率は83年には27.1%を記録している(その後はメディアの多チャンネル化、他コンテンツとの競合により、大幅下落をしているが)。
また観客動員は、73年にはNPB全体で1270万人(セ765万、パ406万)だったが、2013年には2200万人(セ1200万、パ1000万)に増加している。
もちろんそれだけが要因ではないだろうが、数字だけで見れば「戦力均衡」の時代になってプロ野球の市場は大幅に拡大したのだ。
特にパリーグの伸長率が高いのは、パの戦力均衡がセよりも進んだことが大きいと思う。
当たり前のことだが、選択肢が広がる方が市場は拡大する。「優勝する可能性」がある球団が増えれば、ファンは増える。
球団が自チームを強化し、強くなることで観客増を目指すのは当然のことだ。各球団がそういう競争を行うことで、リーグは盛り上がる。
しかし、リーグとしての繁栄を考えるならば、特定の球団がずっと強くて、力関係が変わらないのは、成長の阻害要因になる。
戦力均衡を推進し、「どこが優勝するかわからない」状況を作ることこそが、リーグ運営者の使命なのだ。
管理された「自由競争」環境を作ることが必要なのだ。
MLBでは、戦力均衡は明確なコンセプトとして理解されている。完全ウェーバー制のドラフトと、短期間でのFAによる流動化を併用することで、毎年「勢力地図」が変わるように配剤されている。
もちろん、チームのエゴは当然存在するが、MLB機構がリーグや球団よりも高い権限を有することで、そうしたエゴを押さえつけている。
歴史的に見れば特定球団のダイナスティが続くよりも、「戦力均衡」の方がリーグ、機構は繁栄する。これは自明のことだと言えよう。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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NPB
1リーグ時代は最大8球団がペナントレースを争ったが、3球団しか優勝していない。戦前の11シーズンに限れば巨人と阪神だけである。
圧倒的な寡占状態にあったことが分かる。
1950年から始まったセリーグでは巨人が過半数を超える35回の優勝。
パリーグは、2度の黄金時代があったライオンズが最多だが、南海、阪急も黄金時代があった。優勝回数はばらけている。
MLB
優勝していない球団は割愛した。1901年の2リーグ分立以降。
アメリカン・リーグはヤンキースが圧倒的な優勝回数を誇るが、占有率は西鉄・西武より少し上回る程度。
続いてアスレチックス、レッドソックス、タイガースの順。
ナショナル・リーグはさらに優勝チームがばらけている。ジャイアンツ、カーディナルス、ドジャースが3強。しかしカブス、レッズ、パイレーツ、ブレーブスなどもかなりの回数優勝している。
こうして見て行くと多くのリーグには、複数の球団の「良い時代」があったということわかる。
しかし、1リーグとセリーグでは、巨人の寡占状態が続いた。セリーグはV9が終了するまでの24年間で巨人が20回優勝している。
確かにこの時期にNPBは国民の支持を得て「ナショナル・パスタイム」になっている。
このムックでも書いたが、長嶋茂雄という戦後最大のスーパースターを得て、巨人の人気は頂点に達した。1959年の天覧試合でのサヨナラホームランは、大げさに言えば日本人のライフスタイルを一変させた。
1960年~70年代に掛けてのプロ野球中継は文字通り「巨人一色」だった。プロ野球中継は巨人戦しかなく、スポーツニュースも巨人が中心。
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この圧倒的な成功体験が巨人と巨人ファンに、「巨人が強ければプロ野球は繁栄する」という「信仰」を生んだのだと思う。
しかし、こと観客動員とテレビの視聴率に関して言えば、巨人が圧倒的に強かった73年までと、それ以降を比較すればお話にならないくらい、「巨人ダイナスティ」終焉後の方が上なのだ。
巨人は74年以降の40年間で15回の優勝をし、比較的優位を保ってはいるが、その間に他球団が25回の優勝を飾った。不完全とはいえ65年のドラフト制導入以降、戦力の均衡が進んだ。
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また観客動員は、73年にはNPB全体で1270万人(セ765万、パ406万)だったが、2013年には2200万人(セ1200万、パ1000万)に増加している。
もちろんそれだけが要因ではないだろうが、数字だけで見れば「戦力均衡」の時代になってプロ野球の市場は大幅に拡大したのだ。
特にパリーグの伸長率が高いのは、パの戦力均衡がセよりも進んだことが大きいと思う。
当たり前のことだが、選択肢が広がる方が市場は拡大する。「優勝する可能性」がある球団が増えれば、ファンは増える。
球団が自チームを強化し、強くなることで観客増を目指すのは当然のことだ。各球団がそういう競争を行うことで、リーグは盛り上がる。
しかし、リーグとしての繁栄を考えるならば、特定の球団がずっと強くて、力関係が変わらないのは、成長の阻害要因になる。
戦力均衡を推進し、「どこが優勝するかわからない」状況を作ることこそが、リーグ運営者の使命なのだ。
管理された「自由競争」環境を作ることが必要なのだ。
MLBでは、戦力均衡は明確なコンセプトとして理解されている。完全ウェーバー制のドラフトと、短期間でのFAによる流動化を併用することで、毎年「勢力地図」が変わるように配剤されている。
もちろん、チームのエゴは当然存在するが、MLB機構がリーグや球団よりも高い権限を有することで、そうしたエゴを押さえつけている。
歴史的に見れば特定球団のダイナスティが続くよりも、「戦力均衡」の方がリーグ、機構は繁栄する。これは自明のことだと言えよう。
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「江川・北の湖・マッケンロー」世代とでもいうべきか。
広島、西武にチャレンジする巨人。輪島にチャレンジする北の湖。ボルグに挑むマッケンロー。これが普通でした。
常勝巨人に戻りつつあるのは原監督になってからのこと。しかし巨人の一人勝ちは望みません。たまには前年最下位からの優勝チームが出るぐらいでなければ面白くない。