これもNPB改革のスピンアウト的な提案である。
Jリーグクラブライセンス制度には、Jリーグ傘下の審査基準のひとつとして「女子チームをもつこと」というものが挙げられている。C基準つまり必須ではないが推奨される基準である。

野球とサッカーのマーケットの大きな違いは、男女差である。サッカーが女性でも一定の愛好者がいるのに対して、野球は男女差が激しい。
特に3歳から12歳の子供世代でいえば、サッカーが好きな女の子が17.7%いるのに対して、野球が好きな女の子は0%。
これは、近年の「なでしこ」の大活躍に伴って、女子サッカーがメジャーなスポーツとして認知され、競技者、愛好者が増えてきたことを意味している。

「なでしこ」は、突然強くなったわけではない。Jリーグは女子サッカーの振興にも力を入れ、男子のクラブチームに女子を併設するなど早くから育成に力を注いできた。
またナショナルチームには、男子サッカーのトップクラスの指導者を派遣し、本格的な指導を行ってきた。
ちょうど女子サッカーが世界でも注目されつつあったこともあり、先行して手を打っていた日本は、ワールドカップで優勝するなど成功を収めた。
100年以上の歴史がある男子サッカーは後発国として苦労をしているが、女子は取り組みが早かったので「先行者利益」を得ることができたのだ。

Jリーグは常に半歩先、一歩先の未来を予測して手を打っている。10年前に「女子サッカーが人気スポーツになる」といえば、冗談としか思えなかっただろうが、Jリーグは本気で振興に取り組み、これを実現させたのだ。有為の人材が集まったこと、「女子サッカー興隆」の機運が高まったことなど、幸運にも恵まれたが、打つ手べき手を打っていたことが大きい。



NPBは最近、ようやく女子プロ野球と連携を始めた。しかし、資本参加や本格的な支援は行っていない。

女子プロ野球(JWBL)は2009年に発足した。発足当初は2球団だったが、2012年に3球団、2013年に変則的な4球団によるリーグ戦を展開してきた。
しかし観客動員は伸び悩み、スポンサーも実質的には「わかさ生活」1社であるために、苦境に陥っている。
2014年は、多くのベテラン選手を解雇して1球団13人の4球団となった。また、選手はすべて「わかさ生活」の正社員となった。
まさに苦肉の策だが、率直に言って「末期状態」を迎えているといえよう。

NPBが聡明な組織であるなら、JWBLとの連携を考えるべきだろう。
確かに女子野球は組織も弱体で、運営体制も毎年のように変わっている。集客力も弱い。しかしJWBLは、女子野球のトップリーグなのだ。そして実力的には世界の女子野球界でトップクラスにある。
人口の半分が女子であることを考えれば、NPBは先行投資として女子野球を全面的に支援し、試合環境、練習環境の整備に手を貸すべきである。

NPBの公式戦の前座試合として女子野球を行ったり、NPBや選手会主催の野球教室の女子部門にJWBLの選手を派遣することもできるのだ。

阪神タイガースなどはピンク色のレディースのユニフォームが女性ファンに好評を博している。そのユニフォームを着たレディースタイガース(タイグレス?)が女子プロ野球のペナンとレースで活躍したら、盛り上がると思うのだが。

「今ないから」「今マイナーだから」相手にしないというのは、暗愚な人がする判断である。NPBに先見の明があるなら、女子マーケットを取り込む努力をすべきだと思う。

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