良く知られているように、MLBがビッグビジネスになったのは、ピーター・ユべロスがコミッショナーになり、機構を改革し、ビジネスモデルを確立したのが契機だった。
1980年ユべロスは85年ロス五輪の大会組織委員長に就任。
冷戦時代、モスクワ五輪を西側諸国がボイコットするなど不安定な状況が続いた上に、莫大な赤字が出るのが常だったために、五輪はこの当時、「疫病神」のように見なされていて、立候補する都市も多くはなかった。
ユべロスは、五輪放映権の一括入札を行い、ABCと巨額と独占法経験契約を結んだ。またスポンサー契約も1業種1社に統合。さらにキャラクターグッズの展開、販売なども大会組織委員会で一括、コストダウンも行い、2億ドルもの黒字を生み出した。

この手腕が買われて五輪が終わった年にユべロスはMLBのコミッショナーに就任。
彼がここで行ったことで最も重要だったのは「コミッショナー権限を強大にした」ことだろう。
好き勝手な言動をするオーナーを御することができなければ、ビジネスは成功しない。
ユべロスは「野球界全体に及ぶほぼ無制限の絶対的な権限」というコミッショナーが本来持つ権限をオーナーに再度承認させた。そしてCEO(最高経営責任者)になった。

それ以外は目新しいことはしていない。五輪とほぼ同じ施策を実行しただけだ。
一括放映権料を増額させ、ライセンス収入も飛躍的に増大させた。それもこれも「コミッショナーの権限拡大」があったからこそ実現できたのだ。

NPBの改革は一にかかって「コミッショナー権限の強化」にある。ここでは、それが実現したと想定して、NPBが主導する「ビジネス」について考えたい。



■放映権ビジネス

今、球団が個別にテレビ局と結んでいる「放映権契約」を、NPB傘下の株式会社NPBマーケティングが、メディア側と一括契約をする。
個別の試合ではなく、オープン戦からレギュラーシーズン、オールスター、日本シリーズまで。またドラフト会議や殿堂入り表彰など様々なイベントも含めてパッケージで契約する。侍ジャパンの試合も含まれる(WBCは除く)。

日本シリーズなどのビッグゲームを中継するためには、レギュラーシーズンの試合中継もしなければならない契約とする。

契約相手は放送局1社でもよいが、民放のコンソーシアムや、NHK、民放のコンソーシアムでもよい。
キー局で制作し、地方局へ配信、販売するコンテンツは、すべてこの契約に含まれる。

またBS、CSの契約も個別ではなく、NPBが一括で行う。BS、CS側がコンソーシアムを組むのも可。あるいはFOXなど外資系の参入も認める。

いずれも「入札」であり、最高額で応札した企業、企業グループと契約する。

ただし、ローカル放送は各球団が個別に契約することを認める。各球団が地方新聞社を核とするローカルなメディアグループとスポンサー契約をすることは重要である。
ただし、地方局が制作したコンテンツを他局に販売することには制限を設ける。

次のステップとしてNPBは、番組制作会社を自前で持ちたいところだ。独自に制作した映像コンテンツを放送局に提供することで、局側のコストを下げることができる。(アナウンサー、解説者は局側がつけてもよい)。
こうすることで、映像コンテンツの二次使用についてもNPBで一括販売ができる。
また、プロ野球中継に特化した放送技術者、アナウンサーなどの育成も可能になる。
「プロ野球ニュース」的な番組をNPBが制作して、販売することも考えられる。

映像コンテンツは台湾、韓国など海外へも独占的に販売する。

総額で300億円程度は確保したいところだ。



■ライセンス契約

NPBマーケティングは、各球団のマークやキャラクターなどの版権を一括管理する。
そして、これを各企業に一括で販売する。
例えば、スポーツウェアはミズノ、カジュアルウェアはユニクロ、スポーツ用品はアシックス、ステーショナリーはコクヨ、携帯電話はau、クルマはトヨタ、という風に1業種1社で契約をする。

各球団のキャラクターグッズも、サンリオやバンダイなどの企業と一括契約をする。

今、ライセンスビジネスで収益を上げているのは巨人と阪神くらいだろう。グッズの販売をめぐっては、暴力団関係の企業が関わっているなど、おかしな噂もある。こうしたせこい利権を一掃すべきだろう。

ビジネスのボリュームにもよるが、1業種10億~100億円程度の契約を結ぶ。ここでも総額で300億円程度は欲しいところだ。



■公式スポンサー

NPBはレギュラーシーズンからポストシーズンまですべてを包括した公式スポンサーも1業種1社で契約すべきだ。
今は、オールスターはマツダ、交流戦は日本生命、日本シリーズはコナミがスポンサーとなっているが、これも1業種1社で複数社と契約する。

日本生命、コカコーラ、マクドナルド、NTT、Googleなどの大企業と契約すべきだ。

1業種1社で400億円。

捕らぬ狸の皮算用の連続だが、合計1000億円。このうち400億円程度をNPBで留保し、600億円を各球団に分配する。
均等に分配をするのか、グッズの売り上げや視聴率、観客動員などに応じて分配するのか、やり方はいろいろあるだろうが、18球団になっても1球団20~30億円程度にはなろうか。
経営上、大きな実入りである。

こうした大きなスポンサーとライセンス契約やスポンサー契約するのは、個別の球団では難しい。
NPBという大きな企業体が、しっかりしたプレゼンテーションをすべきだ。そういうちゃんとした人材をNPBに揃えることだ。

ただし、こうした一括契約をする上では、各球団の親会社との関係が微妙になるだろう。
メディア系、IT系の企業がこうしたビジネス承認するか、連結関係を解消することが大前提になるだろう。

日本の企業もアメリカ式の会計システムが導入されている。優遇措置はあるにしても、赤字の連結企業をぶら下げるのは難しくなってきている。
いわゆる「企業スポーツ」は、時代遅れとなっているのだ。

これを機に各球団は独立採算を目指すべきだろう。

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