これまで述べた部分と重複する部分はあるが、ドラフトとFA制度について、あらためておさらいしておく。
ドラフト制度は北米発祥のプロスポーツにしか存在しない。アメリカンスポーツとヨーロピアンスポーツの考え方の差を如実に表している制度だ。

サッカーなどヨーロッパのスポーツでは、選手獲得は全くの自由競争である。金満球団は金にあかせて有望新人を獲得し、他球団の選手を引き抜き、スター軍団を作っていく。
こうして世界的な人気を博する超人気球団が誕生する。

一方で、資金力のない球団は良い選手を獲得できず、低迷していく。リーグは入れ替え制になっているので、低迷した球団は下部リーグへと降格していく。

そして新たに資金を獲得した球団が上昇し、超人気球団と覇を争うことになる。

こういう新陳代謝が起こるのは、現在のヨーロッパのスポーツが、ヨーロッパ全体、そして世界をオープンの市場としていることと深い関連がある。

資金、スポンサーの獲得はワールドワイドであり、障壁はない。世界を市場とするから、新興国の資金を獲得することが可能になる。また、選手の獲得もワールドワイド。

サッカーの世界では、球団だけでなく、スペイン、ドイツ、イタリア、イギリスなどのトップリーグ同士が選手や、マネーの獲得で覇を競っている。

これに対し、野球をはじめとするアメリカンスポーツは、リーグの顔ぶれが固定されたクローズドのリーグで発展してきた。その中でもチームの消長はあったが、チームの消滅はそれほど多くはなかった。

アメリカンスポーツは、北米と中南米の一部だけが市場だった。スポンサーや資金面でも限界がある。アメリカンスポーツは限られた市場、限られた経済環境を前提に発達してきたということができよう。

アメリカとヨーロッパではスポーツ文化には大きな違いがある。
私は一時期モータースポーツの熱心なファンだったが、F1とインディカーという両大陸のトップカテゴリーは、同じようなフォーミュラカーを使いながら、まったく別趣のスポーツだった。
マシンのレギュレーションから、レースの運営、チームの体制まで。すべてが異なっていた。
FIA(国際自動車連盟)はUSAC(全米自動車倶楽部)と何度も協議をして、F1とインディカーを融合させようとした。事実F1シリーズにインディ500が組み込まれたこともあったが、うまくいかなかった。
いろいろな原因があるだろうが、行き着くところは「両大陸のファンが望むものが異なっている」ということになるのではないか。

恐らくはアメリカのこの閉鎖的な市場特性はモンロー・ドクトリンと関連があると思う。

閉鎖的なアメリカンスポーツは、自由競争を保証する「反トラスト法(日本でいえば独禁法)」に違反するのではないかという訴訟が1916年に起されたが、1922年に「MLBは『反トラスト法』違反ではない」という判決が出た。これがMLBの経営姿勢を決定的なものとした。

ドラフト制度自体は、NFLが1936年に導入したのが最初。
MLBの導入は1964年になったが、これはMLBの市場が西海岸へと広がる中で、新人獲得の競争の激化を抑制しようとしたものだろう。

MLBのドラフト制度は、獲得契約金の抑制と、戦力均衡を目的としていた。
この二つの目的は、実際には同じことである。経済力のあるチームが金にあかせて選手を獲得するのを抑制することが、戦力均衡につながるわけだ。

ドラフト制度はその年度、プロ入りを表明した選手たちをそのシーズンの下位チームから指名していく制度である。これを完全ウェーバー制と呼ぶ。
弱いチームから優先的に選手獲得をすることで、戦力の均衡が進むというわけだ。
選手には球団の選択権は無くなる。また、競争が起こらないので契約金の高騰も起こらない。

ただ有望選手を取るために、下位チームによるレギュラーシーズンで敗退行為を誘引する可能性がある。これを防ぐために、Bクラスとなったチームのドラフト指名順位をくじ引きで決める制度を導入しているリーグもある。



NPBのドラフト制度は特殊なものだった。ウェーバー制度を採用せず、全球団によるくじ引きとしたのだ。戦力均衡を目的とするより、契約金の抑制を第一にしたからだろう。

しかしながら、ドラフト制度の導入によってNPBは劇的に変わった。
2リーグ分立後、1965年までと、以後の優勝チーム。

Draft66


戦力均衡とともに、観客動員も増え、市場が拡大したのは前に紹介したとおりである。

以下次稿に続く。明日は「ある記念日」なので特集。
明後日の掲載になります。


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