以前に紹介したが、NPBの観客動員数は年間2200万人前後、MLBとマイナーリーグを合計した観客動員数は1.1億人。アメリカ人がプロ野球の試合を見る頻度はほぼ倍だ。
NPBの発展のためには、リアルな観戦者数を増やす努力が必須だ。
日本人はアメリカ人よりスポーツ観戦をしない。
その原因は、第一に、サラリーマンが大部分と言う日本特有の勤務形態にあろう。
日本のサラリーマンは、ほとんどが朝に出勤し、夜までしっかりと会社で働く。
またアフター6も会社の仲間と過ごすことが多く、平日は終日プライベートの時間がない。
試合観戦をするとすれば休日と言うことになる。



日本人は無料の地上波テレビを通じて多くの情報を得ている。かつては新聞とテレビが二大情報源だったが、今ではネットが台頭している。しかし、テレビは相対的な影響力が衰えたものの依然、非常に強い力を持っている。
人々の価値観の変化やブームは、依然として地上波テレビから起こっている。



先日、マツコと有吉弘行が「ネットでは好きなことができるはずなのに、動画チャンネルにアップされるのはテレビでやってるコンテンツの亜流ばっかり」と話していた。
一面的な見方ではあろうが、これはネット系のメディアが、既存メディアに対して対抗軸を打ち立てるのではなく、その亜流を目指している事を意味する。
「みんな本当にテレビが好きね」とマツコは言ったが、その通りだ。テレビが好きだ。

地上波テレビに出ている人物、そこで行われているイベントは、人々に「メジャーだ」という印象を与える。
「地上波テレビに出る」こと自体がステイタスとなっているのだ。

非常にまずいことに、NPBは、地上波テレビから姿を消しつつある。これは、好事家はともかく、一般の人々からは「プロ野球はマイナーになった」という印象を与えかねないことを意味している。

特に、都市部での観客動員が、地上波テレビでの露出がいまだに多い巨人、阪神を除いて伸び悩んでいるのは、「マイナーなイベント」というイメージを払しょくできていないからだろう。

価値観が多様化し、嗜好も多様化していると言われるが、同時に今の日本人は、物事を選択するときに「メジャーか、マイナーか」を無意識に考慮しているように思われる。

独立リーグや女子野球、二軍戦などの観客が極端に少ないのは「マイナーだ」という認識があるからだ。
端的に言えば「見に行っても自慢できない」イベントには、日本人はわざわざ行きたがらないのだ。

この壁を打ち破らない限り、プロ野球の発展はないと思われる。

そうは言っても日本のライフスタイルは変化しつつある。
「社畜」と酷評されたような主体性のないサラリーマン的なライフスタイルは、終身雇用制、年功序列の崩壊とともに変化しつつある。
ネット社会の進展によって、ソーホー的な仕事のスタイルも増えている。
また、超高齢者社会の進展ととともに、元気な高齢者が余暇の有効利用をし始めている。

「平日の昼間」というこれまで不毛とされた時間帯に人を誘引する可能性は、徐々にではあるが高まっている。

しかしながら、この時間帯、この客層には、すでに多くの業界が目をつけている。
すでに旅行業界では「平日、日帰り」の旅行プランがメインの商品となりつつある。
地上波テレビも、かつては再放送の時間帯だった平日午後に強力な情報番組を打ちだすようになっている。

この市場はプロ野球にとって、すでにブルー・オーシャンではない。真剣に考えるべき時が来ている。

私はNPBには「ブランディング」が必要だと思っている。プロ野球は日本では圧倒的に高い知名度を有しているが、その割に「メジャー」なイメージに乏しい。
これは、NPB全体のステイタスを上げる取り組みができていないからだと思われる。

その点、MLBは実に巧みだ。ライバルのNFL、NBA、NHLが若い観客を獲得する中、MLBは自らを「クラシック」と位置付け、中高年層とその子供をターゲットに、「野球はアメリカそのもの」というキャンペーンを続けている。
野球殿堂入りや永久欠番、引退などのセレモニーも荘重で歴史を感じさせるトーンでまとめている。
ブランディングの演出がなされていると思う。



Jリーグはその発足時のイメージ戦略を、日本を代表するアートディレクターの大貫卓也に依頼した。そしてサッカー全体のステイタスを高めるために、トータルな演出を展開した。

地上波のアナウンサーが「伝説」「マイスター」「大御所」と何度連呼しても、NPB全体のステイタスが上がるわけではない。
また巨人や阪神など一部の球団のステイタスが上がっても、対戦相手がマイナーなイメージではNPB全体の引き上げにはつながらない。

地上波テレビでのイメージアップが難しくなる中で、NPBも「ブランディング」を真剣に考える時が来ている。
良く考えられた演出、そして長期的な努力が必要だ。


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