スポニチの記事より
 労組・日本プロ野球選手会が18日、日本野球機構(NPB)と事務折衝を行い、選手が自由参加できる意見交換会の定期開催を求めた。
 選手会の松原徹事務局長は「大きな問題が起こる前に話し合いましょうということ」と説明。選手会会長ら役員のみが出席する労使折衝とは別に、より多くの選手が意見を出せる場を設けることが狙い。昨年は統一球問題などが注目されたが、松原事務局長は「多くの選手はFAやトライアウトなどの問題に興味がある」と話した。

プロ野球選手会が日本中から注目を集めたのは2004年オフのことだった。
選手会は、NPBを2リーグ12球団から1リーグ10球団にしようと言うオーナー側の意向に真っ向から反対し、球団の存続を訴え、ストライキを張った。

選手会長の古田敦也は、試合をボイコットすることへの理解を求め、ファンに涙ながらに詫びた。

「みんな野球が好きなんだ」というファンと選手の集いも行われた。
監督、指導者の中にも落合博満のように「選手会として、徹底的に戦ってこい。優勝や日本シリーズがなくなってもかまわない。世の中にはそれ以上に大切なことがある」と激励した人もいた。

選手会のストライキを世論が支持したこと、そしてオリックスと合併した近鉄に代わって新規参入があったことで、NPBは54年続いた2リーグ制を保つことができた。

この勝利で、人々は、プロ野球選手会はNPB改革の旗手になるのではないか、多くのファンが求める改革を推進してくれるのではないか、と期待を抱いた。

ここ10年、「選手会」はオーナー側に対する「野党」的なポジションを確立し、その動きをけん制してきた。
「選手会」は、頑迷固陋な老人が支配し、いっかな改革が進まない日本プロ野球の「希望」にもなった。

選手会の公式HPには、プロ野球の改革案が掲載されている。
試合価値の向上、自由競争、地域密着経営を3つの柱とする改革案は、多くの識者が提唱したものとほぼ同じであり、真っ当なものだった。

また「野球は一つ」を合言葉にアマチュア野球との交流を推進した。

2011年3月の東日本大震災では、予定通りの開幕を強行しようとするセリーグ側に対し、選手会として反対意見を述べ、これが世論の支持を得て4月12日のセパ同時を実現させた。




しかしながら最近、我々はプロ野球選手会へのそうした期待は「買い被り」だったのかもしれないとも思い始めている。

2012年4月、統一球問題について当時の新井貴浩選手会長は、「野手だけでなく、投手からも(統一球は)どうなのかという意見を聞いている。少し検証してくださいという話をした」と述べた。

統一球は2013年に反発係数が両リーグのアグリーメントに定められた下限値よりも大きく下回っていたことがわかった。
しかし、このときの新井会長の申し入れは、ボールを検証してくれと言うのではなく、「今のボールでは試合が面白くないから、見直してくれ」と言うものだった。
これは世界基準の球を使用することで、海外との格差を是正しようと言う統一球の目的を理解しない発言だった。結果的には、統一球導入は様々な不手際をはらんだお粗末な施策ではあったが、選手会の要望は、身勝手なものだと思われた。

2012年7月、選手会はWBC2013 に出場しない決議を行った。

現況のWBCは、実質的な運営主体であるMLBの利権拡大のために大会であり、日本などの主要な参加国の当然の権利、利益を犠牲にして運営される大会となっている。このような状況のまま、我々の世代が、安易な妥協のもと、参加することは、将来の日本の野球に負の遺産を相続するという、禍根を残すことになりかねない

というのが理由だった。これ自体は、正当なものではあったとは思う。
しかし過去2回のWBCが、日本の優勝に終わったこともあって近年にないほど盛り上がり、野球人気の回復に大きく寄与したことを考えればボイコットという選択肢はあり得ないことだった。自分たちの権利を主張しているだけという印象を与えた。

さらに2013年11月、田中将大のポスティング移籍に際しては、選手会は

(1)ルール上日本の選手に圧倒的に不利であり、日米対等という視点を欠く不平等なものであること、
(2)過去、岩隈選手、中島選手が落札球団と破談し、日本の選手、球団に多大な影響を及ぼしたこと、
などから、これまでのポスティングシステム及び新協定を適正なものとは考えていないとして、反対の意思表示をした。
そして選手会とNPBが共同でMLBとの移籍交渉をすべきと主張した。

これは多くの人々に違和感を抱かせた。ポスティングシステムはMLB機構とNPB機構の交渉事である。ポスティングフィーは球団に入る。選手や選手会とは直接関係が無かった。
巨額のカネが動くポスティングに「我々も参加させよ」と言っているかのように聞こえた。

いずれの意見も最終的には撤回したこともあって、選手会は単に「立場を主張した」だけのような印象を与えた。

この3つの事例での選手会の見解そのものは、邪なものだとは思わない。労働組合として自己の権利を正当に主張した、とみなすこともできる。
しかし、その姿勢は「自分たちのことだけを考えている」という印象を抱かせた。また、その意見の発信も、誠に稚拙だった。

MLBの選手会は、全米自動車労組と並ぶ「全米最強の労組」と言われている。FA権やサラリーキャップの問題をめぐって数度のストライキを実施した。
しかし、経営者と労組の争いは「億万長者と百万長者の争い」と言われ、批判された。「自分たちの利益しか考えない」彼らの姿勢は、野球ファンの離反を招いた。

日本プロ野球選手会は、そうであってはならない。常にファンとともにあるべきである。
NPBのマネジメントが機能不全に近い状態になっている現在、最大のステークホルダーとも言うべきファンの意向を代弁できるのは、選手会しかない。
自己の権利を主張するときには、それがファンの望むものなのか、ファンにとって喜ばしいものかどうかを常に考慮してほしい。

意見交換会の席上で、幼稚な自己主張が飛び交わないかどうかを危惧する。それはオーナー側に付けこむすきを与えるだけでなく、世間の失望も買う。

「役者子ども」のような選手は減っている。意識は高まっているとは思うが、プロ野球選手は、単なる「労働者」でも「個人事業主」でもない。「プロ野球」という「社会的公共財」を担い、将来へと伝える責任ある立場だと言うことを認識し、真っ当で実効性のある意見を述べてほしい。

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