誠に贅沢なことに、昨日、慶應義塾の池井優先生と2人で1時間以上もお話をさせていただく機会があった。その楽しい内容は後日改めて書きたいが、先生とのお話で大坪正則氏の話が出た。
先日、池井先生が指導しておられる台湾の大学院生が日本野球について論文を書きたいと言ってきたので、池井先生は野球経営について教えてもらうために大坪氏に連絡を取ったそうだ。しかし大坪氏は不在、「入院している」と家人が言われたとのこと。その数日後に大坪氏は逝去された。

いろいろな意味で野球界に地殻変動が起こりそうな気配がある。大坪氏の見識はこれから重要になってくるはずなのに、逝去されたのは本当に残念だと思う。昨年お目にかかった折に、もう少ししっかりお話をしたかったと切に思う。

今、改めて大坪氏の著作を読み直している。基本的な考え方は一本芯が通っていて、MLBなどアメリカンスポーツのマネジメントを、NPBなりに活かしていくと言うスタンスは不変だ。
しかし、時代とともに論点の重心や方法論は少しずつ変化している。NBAを日本に紹介した実際家の大坪氏ならではの柔軟さがあった。

特に重要だと思ったのは「プロスポーツ経営の実務」という本だ。2011年に出た。



これは大坪氏が編著者になって、法務、チケット販売、スタジアムビジネス、テレビ放送権、マーチャンダイジング、スポンサーシップというスポーツビジネスを展開するうえで必要な実務について、各分野の専門家が筆を執り具体的に解説したものだ。

一般書ではなく専門書だが、読みやすく理解しやすい。率直に言って「もうここまで答えは出ているのだな」と思った。

中に一つ、非常に興味深いデータが載っていたので紹介したい。
スタジアムビジネスについて千葉ロッテマリーンズ事業企画部部長代理(当時)の原田卓也氏が説明した中で、12球団のファン人口を算出したデータが載っていた。
ちょっと衝撃的である。

Fanjinko-01


2009年にでた「スポーツマーケティング基礎調査」による。
2011年の東日本大震災前だから、楽天の数字は少し変動しているかもしれないが、今も大きな変化はないはずだ。

1位巨人の1003万人に対して、最下位のオリックスは30分の1の35万人。よくぞこんなマーケットでビジネスをしているものだ。

この表を見ると、NPBの球団は3つのグループに分かれることが分かる。
全国区のファンを有する巨人、阪神、地域の顧客を獲得する楽天、ソフトバンク、中日、日ハム、広島。そして巨人、阪神と市場を食い合って負け組になっているヤクルト、西武、横浜、ロッテ、オリックス。

第3のグループは、フランチャイズビジネスとして考えれば撤退するしかないという感じだ。

この表に、2009年の観客動員数をあてはめてみよう。

Fanjinko-02


第3の「負け組」グループは、1人当たりの来場回数が1回を超えている。数少ないファン層に向けて、涙ぐましいマーケティングを行っていることが分かる。

長谷川晶一さんは12球団のファンクラブに入っていることで知られるが、昨年、livedoorのインタビューでファンサービスが充実している球団としてロッテ、西武、巨人を挙げておられた。またオリックスが昨年良くなったとも書いておられた。
巨人以外は全部第3のグループの球団だ。
彼らはそうしなければ、他球団に肩を並べるような観客動員はできないのだ。



しかし、客観的に見れば第3のグループの球団はフランチャイズを変更すべきだろう。恐らくファンサービスを充実させることでコストは跳ね上がっているだろうし、経営も苦しくなっているはずだ。

オリックスなど観客数を200万人にするには、ファンを6回も球場に連れてこなければならない。今でさえもチケットは安売りされ、近鉄沿線の我が家には毎週割引チケットのチラシが舞い込む。招待券も多い。この努力は報われないのではないかと思う。

ファン人口の総計は3771万人。日本の人口の30%強に過ぎない。

先日、独立リーグの経営者の方々にもお話を伺う機会があったが「独立リーグは1600万人をカバーしている」と言っておられた。

過疎化が進み、都市への人口集中が進んではいるが、他の地方にマーケットは存在するのだ。

率直に言って、NPBの球団の中には「嫌々球団を経営している」のではないかと思えるチームもなくはない。
野球の発展のためにもフランチャイズの見直しの議論はあってしかるべきだと思う。

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!


そうですね、は流行語だった?

好評発売中。アマゾンでも!





クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。 長池徳士本塁打大全

Classic Stats



『「記憶」より「記録」に残る男 長嶋茂雄 』上梓しました。






広尾晃 野球記録の本、アマゾンでも販売しています。