散見するところ、昨日勃発した新統一球問題について、何が問題かをしっかり伝えた報道はなかった。改めて問題点を指摘しておきたい。
「見える化」するとわかりやすい。楕円内の数字は測定年月

toitsukyu


NPBは、熊崎コミッショナーが就任した2014年1月、両リーグのアグリーメントを改訂し、公式使用球の反発係数を0.4034から0.4234までの間に改めた。

これは前年の第三者委員会の報告書で、再三2011年、12年に使用された統一球の反発係数が「アグリーメント違反」であると指摘されたためだ。

当時私は「野球協約違反」と書いたが、間違っていた。反発係数の規定は両リーグの「アグリーメント」に記載されている。これは非公表の「申し合わせ事項」であり、引き分けの規定など毎年のように改訂されている。
「協約」を「憲法」だとすれば「アグリーメント」は「法律」「条令」のようなものだろう。
しかし、だからと言って「アグリーメント」は軽視されてよいわけではない。試合やペナントレースは「アグリーメント」に則って行われる。
これを守らないのは「コンプライアンス違反」だと言って良い。

加藤良三コミッショナーの体制では「アグリーメント違反」はほとんど顧みられなかったが、熊崎新コミッショナーは法律家だけあって敏感に反応し、即座に反発係数の許容範囲を改訂したのだ。

しかし今回の測定結果によれば、それが裏目に出た。
平均値0.4236という結果は、旧の反発係数なら許容範囲だったが、新しい基準ではアグリーメント違反になるのだ。

NHKでは「許容範囲をわずかに出ていた」と報じていたが、これは視聴者を誤解させかねない言い方だ。
0.4236は、今回のテストの計測結果の「平均値」だ。
これが許容範囲を逸脱していたということは、普通に考えれば半数以上のボールが「違反球」だったことを意味する。

■今回の問題の一番重要なポイントは、

「NPBで今使用されているボールの大半が、『違反球』だった事が露呈した」ということだ。

本来ならば、NPBはペナントレースを中断して使用球を調査し、早急に対処すべきだ。

それができないまでも、何らかの応急措置を取るべきだ。

しかし機構側はこのボールで行われた試合を公認し、今後もこのボールで公式戦を行うとした。

NPBは、加藤コミッショナー時代となんら変わらない「いい加減な」組織であることを露呈したのだ。

■第二のポイントは

「本当に、製造工程のミスで反発係数が上がったのか?」ということだ。

この表を見ていただいてもわかるが、野球のボールの反発係数は、一定ではない。常に数値は上下している。

硬球が完全な工業製品ではなく、手作業の部分を含んでいるために生じる誤差だと思われるが、今回の数値の跳ね上がりは「製造誤差」なのか。

何らかの規格変更があって、仕様の異なるボールが使われていたのではないかとの疑念がぬぐえない。
その数値が、統一球導入以前の公式球の反発係数の数値と似ていることも、疑念を濃くさせる。

第三者委員会の報告書でも、NPBの組織の複雑さが指摘されていたが、NPBは「機構」と「組織」という二つの団体が輻輳している。レポートラインや指示系統もコミッショナーに一元化しているとはとてもいえない。

そうしたややこしい組織の中で、誰かが勝手にミズノ側に仕様変更の指示を出していた可能性はないのか。誰かの指示で変えたのではないか?

下田前事務局長が「統一球の改変を独断で指示していた」という前例もある。

ミズノは、自社の信用失墜を防ぐためにも、そのあたりの経緯をはっきりと申し開きすべきだと思う。

■第三のポイントは、「統一球のメーカーをなぜ引き続きミズノに一任したのか」ということだ。

ミズノは現在の統一球を中国で生産している。中国の製品だから悪いと断じることはできないが、日本企業が海外で製品を製造するときには常にリスクを伴う。ハンドリングが十分に利かないためだ。

ミズノは、最初の統一球のときに、指定された反発係数を大幅に下回る製品を大量に生産した。このためにNPBは、秘密裏に仕様改定に走らざるをえなくなったのだ。

その「前科」を考えれば、今回の「違反球」が単純に「ミズノの能力不足」に起因している可能性も大いにある。

そもそも、ミズノには精密な仕事をする能力がないのかもしれない。旧統一球の数値のばらつきがそれを証明している。だとすれば、なぜ、ミズノに引き続き生産をゆだねたのかという「発注者責任」も生じてくる。

ただし、NPBの「発注の精度」の問題も看過できない。どんな製品であれ、発注者側のレベルが低くて、しっかりした発注ができていなければ、望みどおりの製品はできない。NPBとミズノが癒着して、いい加減な製品を作っていた可能性もなくはない。

■そもそも、野球のボールにここまでの精度を求めるのはどうか、という議論もあるにはある。
野球はピッチャーズプレートとマウンドの距離や塁間は厳格に決められているが、球場の大きさはまちまちである。
また芝生、人工芝、土とグランドの状態も様々。屋外、屋内と試合環境も異なっている。
ボールだけに厳密さを求めるのはいびつな感じもする。


ともあれ、この問題は「興行としての野球」と「競技としての野球」の在り方がどうあるべきか、を示唆している。
NPBのガバナンスのなさが相変わらずであることも露呈した。機構改革は急務である。

今回は、ミズノと言う一企業にスポットが当たりそうだが、日本を代表するスポーツメーカーの名に恥じないよう、しっかりとした対応をしてほしい。

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