昨日、ミズノは、NPB機構の臨時理事会の冒頭、30分に渡って謝罪した。
水野明人社長が直々出向いたことを見ても、ミズノはことの重要さを認識していたといえよう。水野氏は創業者水野利八の孫、兄の明人氏は会長である。

ミズノは、今季使われているボールの仕様は昨年と全く同じ。
原因となった可能性として、中国・上海工場で保管していた素材の一つであるウールの含水率が社内基準を下回っていたことを挙げている。
ウールが乾燥すると反発係数は高くなる。しかし、出荷前に行う自社検査で基準値内だったボールが、納品後にNPBが日本車両検査協会で行った検査で基準値を超えており、明確な原因は究明中。


ウールは硬球の材料の中で最も量が多い素材だ。

NPB-Mizuno


この素材が変質していたとすれば、反発係数が大きく変化した可能性はあろう。
しかし、出荷前の自社検査で計測したときは基準値内で、NPBが計測したときは基準値を超えていたというのは、説明がつかない。

製品になってから、中身のウールが乾燥することがあるのだろうか。
ボール自体が、乾燥機のようなものに入っていたのだろうか。

また開幕前に検査したボールは数値はかなり高かったとはいえ、基準値内に収まっていた。
これも説明がつかない。

今回の件は謎が多すぎる。
そもそも、今回の統一球の「変質」によって「本塁打はそんなに増えていない」のだ。
主要な球場別の本塁打数 顕著な増は赤、減少は青
球場の名称は変更している場合がある。

NPB-Mizuno2


昨年の統一球の改変は、数字で見てもわかるように殆どの球場で本塁打数を激増させたが、今回は横浜、甲子園、QVCマリン、ナゴヤ、サッポロで増えているものの、コボスタ宮城、東京ドーム、京セラドームでは減少しているのだ。

平均打率、防御率の推移を見ても謎は深まる。

NPB-Mizuno3


セリーグは明らかにアップしているが、パはむしろ下がっている。

整理をしておこう。

1)「今年のボールは飛びすぎる」という声が上がった。
  → 実際は、数字的にはそうとは言い切れなかった

2)そこで、反発係数を調べたところ、反発係数の規定を外れる数値が出た。
  → その数値は「誤差の範囲」とは言い切れない(ように思える)大きなブレだった

3)ミズノはその原因をウールの乾燥(の可能性)だとした。
  → 製品化してからの変質の説明にはならない。


一部球場での本塁打数の増加は、春先の好調球団、選手による「一時的な現象」で、シーズンが深まるとともに平準化していく可能性もある。

タイムリーなことに、クラシックSTATS鑑賞ではこういうデータを出している。

開幕から13試合目のチーム本塁打数 2007~2014|番外編

あわてて検査結果を公表しなければ、こうした騒動は起こらなかったかもしれない。

原因としては、不作為、たとえば「統一球の精度不良の問題」から、「特定の存在による作為」まで、いろいろな可能性が考えられる。

今、言えることは「我々は野球のボールの性質やスペックについて、ほとんど知らない」ということだ。

ミズノは1万数千ダースの在庫をダース単位で検査し、適合したものを提供すると言う。1万数千回の反発係数検査をするというのだ。

本日午後には、ミズノは記者会見を行う。これで何かが解明されるのか、さらに謎が深まるのか。


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